フィリピン:陰から支え、見守る地域担当の役割

今回は日本赤十字社がフィリピン赤十字社と協力して実施しているフィリピン・セブ北部での地域保健衛生事業を、昨年9月より約1年間担当した田村由美看護師(神戸赤十字病院)の報告をご紹介します。

離島で活動するスタッフ

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出典:セブ州ホームページ

セブ州の中心部セブ市から車で3時間半北上し、フェリーに乗り継いで1時間半、そこからさらにトライシクル(バイクの横に2~4人乗れる座席を取り付けた乗り物)で20分走ったところに、サンタ・フェ郡ポブラシオン村があります。フィリピン赤十字社のロナさんは、村役場の一角にデスクを置き、セブ北部地域保健衛生(以下、保健事業)の同郡地域担当をしています。同郡は、バンタヤン島の一部と、ヒランタガアン島、キナタルカン島からなる郡で、美しい海で有名です。保健事業では、サンタ・フェ郡、ダアンバンタヤン郡、メデリン郡にある15村を対象としています。事業の拠点はセブ島北部にあるフィリピン赤十字社ボゴ準支部ですが、行政による保健衛生サービスが及ばない離島が担当地域であるロナさんは、対象の村に密着して活動するため、ポブラシオン村を拠点に活動しています。



ボランティア活動の道しるべ

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ポブラシオン村役場のデスクにて筆者と話をするロナさん(右)

サンタ・フェ郡では、昨年9月に研修を受けた5つの村の住民68人が地域保健ボランティア(以下、ボランティア)としてロナさんとともに活動しています。ボランティアは各村で地域アセスメントを実施し、その村の健康問題を明らかにして、それらを予防したり早期発見・対処したりするための知識や実践を地域住民に普及する健康教育を行います。そうした活動の方向性を示しながら、しっかりと彼らの活動を見守るのが、地域担当であるロナさんの役割です。

子どもの世話や仕事と両立させながら無報酬のボランティア活動を続けるのは大変です。その上、活動は炎天下。酷暑の中、各世帯を回って調査をすることもあれば、急な雨で活動が思うように進まないこともあります。それでも、サンタ・フェ郡ではこれまで1人もボランティア活動をやめた人はいません。「事業が始まった当初は、確かにあまり活動に積極的ではないボランティアもいたわ。だって、家庭や仕事に加えてのボランティア活動だもの。でも、私は彼らの活動がこの事業、ひいては地域の健康に貢献するということを彼らに会うたび何度も何度も繰り返し伝えているの。活動を指示するだけじゃなくて、事業がどういう流れで進んでいて、ボランティアの活動の結果これまでに何が達成されていて、今やっている活動がこれからどういう成果につながっていくのか、これまでの歩みと現在地とこの先の進路を示すのが私の大切な役割。そうすることで、ボランティアは彼らの活動の重要性を感じられるから。今では彼らは赤十字のボランティア活動が大好きだし、活動を通して学びを得ることを楽しみにしているわ」と、ロナさんは言います。地域保健は目に見える成果が出てくるまでに時間を要します。その第一歩としてボランティアの意識や行動が確実に変化しています。この変化は、保健事業を成功に導くだけではなく、終わった後も住民自身による地域保健活動の継続を可能にするでしょう。

やりがいは地域の人々からのありがとう

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ボートは小さく、波があると大きく揺れる。

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ヒランタガアン島に向かう小さなボートの中より。一番左がロナさん。

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ヒランタガアン村でのボランティア集会の様子。一番奥がロナさん。手前右が筆者。


「ボランティアや地域の人々の協力が得られて何かを達成できるととてもうれしいです。地域の人々から感謝されることにやりがいを感じるの。離島に行くにはボートに乗って時間もかかるし、海が荒れると行けないこともあって大変。でも、ボランティアや地域の人々が待っていると思うと弱音を吐いていられないわ。事業チームから離れてポブラシオン村で、一人で仕事をするのは正直情報共有が難しいこともあるし、悩みを聞いてくれる人が近くにいないのはさみしい。でも、私はサンタ・フェ郡のボランティアを近くで見守っていたいの」。力強く言うロナさんからは赤十字活動に対する誇りと責任が感じられ、それはきっとボランティアにも伝わっているでしょう。1年前には赤十字の活動について何も知らなかったボランティアたちも、ロナさんのサポートにより今では保健事業やフィリピン赤十字社の活動を支える貴重な力となっています。強い熱意を持った地域担当に見守られながら、ボランティアの活動は今日も続いています。

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