ネパール:水とくらし

■ネパール:水とくらし

1日219リットル。
これは東京に暮らす日本人1人が1日に平均して使う水の量です(平成27年度東京都水道局調べ)。
えっ、そんなに使っているの?と思われるかもしれません。飲み水としてだけでなく、手洗い、料理、洗濯、お風呂、トイレ、どれも毎日の生活で欠かすことのない行為ですが、水がなければどれひとつとして成り立ちません。

日本では、水道の蛇口をひねれば、安全できれいな水を使うことができますが、世界ではどのように水を工面しているのでしょうか。今回は日本赤十字社(以下、日赤)が、ネパール赤十字社とともに取り組む2015年4月25日に発生したネパール地震の復興支援事業の現場から、水に関する支援についてご報告します。

■家に蛇口がなかったら

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水場に差し込まれているのは、各家庭からのホース

日赤が支援するのは、首都カトマンズから北東約29キロに位置するシンドパルチョーク郡の山間地域の村々です。この辺りは、各家庭につながる公共の水道設備が必ずしもあるわけではありません。住民は何とか水を得るために、村の中心地にある貯水槽に直接ホースをつないでみたり、時には、山から湧きでる水を汲みに行ったりすることもあります。

各家庭の近くまで安全な水が安定的に届くようになることによって、女性たちは家から遠く離れた場所で洗濯や食器洗いをする必要はなくなり、子どもたちも家の近くで手洗いをすることができるようになるのです。

■水を使うのは、住民である私たち

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水を引くパイプの施工作業に励む女性住民

 

1人1日平均45リットル。ネパール政府の基準による、日赤支援地域での住民1人当たりが1日に必要とする水の量です。日赤は、この基準に基づき、地震で損壊した水の供給設備の補修や新設支援を行っています。

水の供給設備の工事といっても、手掛けるのは行政ではなく、被災地に暮らす住民自身です。日赤は、ネパール赤十字社と協力し、水の安全性の調査、施設の設計、補修資材の提供のほか、工事に参加する住民たちに定期的な技術指導を行っています。住民たちは、そういった赤十字社の支援をもとに、自分たちの生活に必要な水道設備を自らの手で少しずつ造りあげます。水源から流れる水を貯めるためのタンク、共同で使う水道の蛇口、タンクとこの水道施設をつなぐパイプの施工・・・。それぞれの家庭の近くまで水を届けるためには、住民たちの協力が不可欠です。

被災者の多くは農民であるため、農閑期に作業を進めます。自分たちの生活に直結する設備だからこそ、住民たちは忙しい日常生活から時間を捻出し、一日も早い設備の完成に協力を惜しみません。また、自分たちで造ったものなので、壊れても修理をして使い続けることができます。住民の「水を使うのは、私たち」という思いや意識から、設備への愛着が生まれます。それが、設備完成へのスピードを速め、完成後も継続した設備の利用と管理につながっています。

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水源の水を貯めるタンク

(10,000リットル、72世帯分)

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建設中の共同の水道の蛇口。

子ども用に低い蛇口も取り付けられている。

■問題が起きても、皆で解決する

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住民たちの話し合いの場でアドバイスを行う

ネパール赤十字社職員

日赤の水の供給設備支援は住民の要望を受けて始まりました。それでも時には、彼らの間で問題が起こります。例えば、共同の水道の蛇口は地域の住民がみんなで使うものですが、誰でも自分の家の近くに設置してほしいと思うものです。また工事は住民同士が協力して行いますが、家事や農作業の合間に時間をやりくりして参加するため、どうしても計画通りに進まないこともあります。
 そのような時には、住民は集まり、話し合って解決方法を探し出します。現場で働くネパール赤十字社の職員は、この話し合いの場にも積極的に参加します。住民間で何が問題になっていて、赤十字としてどんな支援ができるのか。住民の意見を汲み取り、また住民が一致団結して協力できるよう、時に助言も行います。住民に寄り添い、彼らが自分たちの事業として参加意識を高めてもらえるよう手助けすることも赤十字の重要な仕事のひとつです。

■水のない暮らしは考えられない

私たちの生活になくてはならない水。安心・安全な水を手に入れることができるか否かは、人々の衛生環境や健康問題にも深く関係してくるものです。きれいな水が近くにあるからこそ、手洗いが可能になり、トイレも清潔に保つことができます。また水に起因する病気の発生率も低くなります。一方で安心・安全に水を手に入れることは、実は当たり前のことではありません。日赤は、ネパールでの復興支援事業を通して、被災した住民が安全な水を安定的に手に入れることができる環境を整えることにより、これからも彼らの生活の再建と向上を後押ししていきます。

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