フィリピン・地域保健ボランティア始動、村へ

セブ島北部は、4年前の2013年11月台風30号(ハイヤン)の被災地域です。日本赤十字社(以下、日赤)は発災直後から、当地で緊急医療支援活動および、復興支援活動をしてきました。現在は、行政の手の届きにくい地域が点在する現地のニーズに応えるため、地域保健衛生事業を継続して支援しています。
もともと生活インフラが脆弱な地域に災害が起こったことで、地域の生活基盤や教育環境、保健衛生状態が弱まってしまいました。そこで日赤は、復興支援活動として地域保健衛生事業を展開。基盤を復旧し、「住民たちの手で、住民の健康を守る」力を高める活動に取り組んでいます。

ボランティアには常に地域担当者が寄り添って

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サンレミヒオでの地域保健ボランティアのCBHFA研修の様子

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研修ではチームの信頼関係を強めるためのさまざまな工夫も。先導役を信じて皆でゴールにたどり着けるか?!

私たち赤十字が村々に入っていく際に用いるのは「地域住民参加型保健事業」(CBHFA:Community Based Health and First Aid)というアプローチです。まずはCBHFAに関する知識を持ってもらうために、地元のボランティアを対象にした研修を実施。研修では、自分の村をより深く、正確に知るための「観察・調査」の方法を学びます。

研修を終えた今、事業はいよいよ本格的にボランティア主体の村での活動に移ります。今後の地域活動は、ボランティアそれぞれが、まずは自分たちの村に目を向け、関心を持ち、自分たちの村の「健康問題」を認識し、話し合い、住民に共有することから始めます。今後実施する、地域保健ボランティアの手による「健康教育」の項目は、罹患率や死亡率の上位を選ぶわけではありません。その村の住民が話合い、村で問題だと思われる健康問題の上位3つを選びます。こうやって、自分たちで考えて選択することで、徐々に事業はスタッフの手を離れ、ボランティアや地域自身のものになり、主体性を持った活動が進められていくのです。

事業スタッフの役割は、そんなボランティアたちの「道しるべ」になることです。進むべき道がわからないとき、道を逸れそうときのガイド役であり、また、正しい保健知識の裏付けも担います。スタッフは、活動の初期段階からボランティアの主体性・自主性を伸ばすよう意識しています。

事業をボランティアの手で村落に届ける

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ギビットニル島での初期調査の結果をボランティアとまとめるファイサ(写真右)

地域のことを誰よりも知っているのは、他でもないそこに住むボランティア自身です。事業スタッフではありません。ボランティア自身が、自分の住む村に目を向けて、「村人の健康を自分たちで守る」活動の大切さと意義に自分自身で気づき「内から」意欲を高めることが、活動を継続するためには欠かせんません。その気づきを助けるために、事業スタッフは活動の意義、面白さ、事業の目指すものを根気よく伝えつづけ、ボランティアの意欲を「外から」刺激します。

生まれたばかりの200人の地域保健ボランティアは11月から村での活動を開始しました。本事業では、15の村で6000世帯を対象に活動をしていきます。ボランティア一人あたりの担当は30世帯です。少ない数ではありません。「知識」は行動を変えるきっかけであり、村びとが得る「報酬」です。人々が衛生習慣や行動を変えるまでに「健康教育」を行き渡らせるには長い時間がかかります。

土地の言葉である「ビサヤ語」で、住民もボランティア自身も楽しんで健康教育ができるようになる日まで、日赤は2018年末までの中期的な視野で同地の地域保健活動を支援していきます。

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