フィリピン・保健ボランティアを訪ねて ~真のボランティアがここにいた!~

セブ北部地域保健衛生事業では現在、地域保健ボランティアの育成に取り組んでいます。地域住民自身がボランティアとして、自分の住む地域の健康問題を取り上げ、病気の予防や早期発見、衛生状態を整えるための知識や技術を伝える活動です。ボランティアが自ら担当する家々を回り、住民に健康教育や衛生教育を行います。
 これからセブの村々で活動を始める地域保健ボランティアが意欲を持って活発な活動を続けていくことが、本事業の鍵であるといえます。その成功の糸口を探るべく、すでに別の州で先行して開始し、今年3年目を迎える保健事業が行われているルソン島北部のヌエヴァ・ヴィスカヤを訪れました。

山の中で働くボランティア

ヌエヴァ・ヴィスカヤ州カヤパ郡ナンシャカン村は、細い山道を3時間ほど走ったところにあります。横を見れば崖、前を見ても曲がりくねった道の向こうは見えません。こんな山奥で本当にボランティアが活動しているのだろうか…と、とても不安になるような所です。しかしながら、そんな心配は無用で、村の集会場には続々とボランティアが集まってきてくれていました。その多くは女性です。笑顔で元気なあいさつを交わしながら、中にはよちよち歩きの子どもを連れている方もいます。この日は、全16人のメンバーのうち14人が出席し定例集会が始まりました。
 ナンシャカン村では、ボランティアは2~3時間の道のりを1軒1軒歩いて回り普及活動を行わなければなりません。天気の変化も激しく、雨も多い地域です。その中で、手作りの資料を活用し、疾病の予防のための説明や啓発活動を行います。日に焼け、大きな厚い手をした彼女らは、普段は畑を耕して芋やトマト、キャベツなどの野菜を育て自給自足に近い生活をしています。そのような生活環境と忙しい日常の仕事、さらに子育てを行いながらボランティアとして活動を続けていることが、いかに大変なことであるか、容易に想像できるでしょう。

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ナンシャカン村地域保健ボランティアによる健康教育

「人を助けたいから」「人の役に立ちたいから」「赤十字の研修でたくさんのことを学ぶことができる。それがとてもうれしい」「自分が身に付けた知識や技術を家族や村の人と分かち合いたい」「活動をした日は何だかハッピーな気分になるわ」
なぜ赤十字のボランティアを始めたのか、そしてなぜボランティアを続けているのかを尋ねると、ボランティア達はキラキラとした眼差しでこう答えてくれました。
 怪我をした村人が自分を頼り、訪ねてきたことは1度や2度ではないそうです。村の人々の手助けをし、実際に自分が学んだことが人々の役に立っているということを実感できることが、ボランティアを継続する意欲につながっているのでしょう。そして、その根底には、自分の家族のため、村のために力になりたい、という純粋な気持ちがあり、彼らの活動を続ける原動力となっているのです。

地域保健ボランティアと赤十字スタッフとの絆

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日本赤十字社駐在職員によるボランティアインタビュー

 そんな彼女らもボランティアを始めたころは、恥ずかしくて人前で話すことも怖かったといいます。それでも、少しずつ活動を重ね、自信を持って活動を続けてこられているのは、ボランティアを支える赤十字スタッフの存在がありました。
ぬかるんだ道を数時間かけて定期的に村を訪れ、彼女らのニーズに真摯に耳を傾けながら、必要な知識や技術を伝えてきた赤十字スタッフによるプロジェクトチームです。不安なボランティアの気持ちに寄り添い、励まし、時には一緒に楽しい時間を過ごしながら、長い年月をかけて信頼関係を築いてきました。
 ボランティア達は救急法の追加講習に加え、胃潰瘍、HIV、髄膜炎や日本脳炎などの疾病についても教えてほしい、と生き生きとした表情で赤十字スタッフに話していました。これからも、さらに村のために活発に活躍する彼らの姿が目に浮かびます。そんな地域保健ボランティアと赤十字スタッフとの強い絆が、活動を続ける上での基盤なのだと実感しました。

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セブ北部離島地域の保健ボランティア研修

開発協力における結果や効果は長い年月をかけて少しずつ少しずつ表れてくるものなのかもしれません。今回の訪問で、地道な活動を続けていくことの先には、自分たちの村を自分たちの手でより良くしようとする素敵なボランティアが待っているのだと、うれしさと共にこの保健事業活動の意義を改めて感じました。

 今年開始したセブ北部地域保健衛生事業においても、たくさんのボランティアがナンシャカン村のボランティアのような熱い気持ちを持って活動を続けていけるよう、これからも日本赤十字社の職員がお手伝いしていきます。

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本記事に関連する国際ニュース:
「フィリピン:地域の力を生かした保健支援」(2016年12月2日付)
「フィリピン:離島の人びとの心を動かしたひとこと」(2017年6月21日付)
「フィリピン:地域活動のかなめは赤十字ボランティア」(2017年8月18日付)