アフガニスタン:明日を担う赤新月社青少年クラブ

アフガニスタン赤新月社青少年ボランティアメンバー©IFRC

アフガニスタン赤新月社青少年ボランティアメンバー©IFRC

「2016年の夏、アフガニスタン赤新月社が学校で行ったキャンペーンに参加したとき、私はHIV・エイズやB型・C型肝炎という疾病の存在を初めて知り、それらがいかに私たちの生活を脅かしているかということを学びました。そして、こうした疾病から身を守るには、まず一人ひとりが正しい知識を得て、意識を変える必要があるのだと気付きました。私はこの大切なメッセージを、家族に、友だちに、身の周りの人たちに伝えていきたいと思っています。」-マルジャン(赤新月社ボランティア)-

アフガニスタンでは、現在、紛争によって医療施設が破壊されたり、治安上の問題から多くの病院が閉鎖に追い込まれています。さらに、地理的に孤立した地域の存在や、医師・看護師、とりわけ女性の医療従事者の不足が深刻な課題となっています。世界保健機関(WHO)によると、人口の85%が、医療施設にたどり着くまで3~4時間もかかる場所に暮らしているといいます。1000人の患者に対し22人の医療職がいなければならないところ、平均で2.2人しかいないのが、アフガニスタンの実情です。

支援が行き届かないところにこそ、赤十字がいる

問診するアフガニスタン赤新月社クリニック助産師©IFRC

問診するアフガニスタン赤新月社クリニック助産師©IFRC

アフガニスタンのような国において、赤十字(赤新月)の果たす役割は非常に重要です。なぜなら、各国の赤十字社は、その国の政府の人道的活動(災害救護、医療、保健衛生、福祉など)を補完する役割を担っているからです。国の各種課題に対応する第一義的責務を担うのは政府ですが、各国赤十字社は政府の補助機関として、それを補うことを求められています。「どんなに強力な政府でも、政府の力だけで全てをこなすことはできません。一人でも多くの人、とりわけ社会から取り残された、支援の手が届きにくい人々を支えるために、赤十字はいるのです」と、国際赤十字・赤新月社連盟の近衞会長(日本赤十字社社長)は語ります。その一方で、赤十字は基本原則の一つに「独立」を掲げています。そこには、『政府の補助機関としてその国の法律に従うが、つねに赤十字の諸原則に則って行動できるよう、自主性を保たなければならない』ことが明確に述べられています。あらゆる権力から独立し、いかなる勢力にも加担せず、国際社会の様々な利害関係から距離を置かなければ、人々から信頼を得ることはできず、真に支援を必要とする人々にアクセスできなくなってしまうからです。近衞会長は、「人道の空白地帯が生まれることを、我々は決して許してはいけない」と繰り返し述べています。

国民が健康的な暮らしを営めるように。その担い手は、ボランティア

「献血の安全性」を伝えることも重要な活動の一つ©IFRC

「献血の安全性」を伝えることも重要な活動の一つ©IFRC

アフガニスタン赤新月社のスローガンは、「ほかの誰も支援を届けられない人々のためにこそ活動する」。まさに赤十字の使命を体現すべく、日々活動に励んでいます。前述のとおり、アフガニスタンは医療事情が厳しく、国民が基本的な保健サービスにアクセスすることも難しい状況です。そのため、国民一人ひとりが「自分の健康は自分自身で守ろう」と意識することが何より重要となります。アフガニスタン赤新月社の活動の肝はここにあります。元来、人間に備わっている力を引き出すために、正しい知識を提供し、意識を変え、そして実際に行動に移すよう、様々な取り組みを進めています。そして、その求心力となっているのは、赤新月青少年クラブの保健ボランティアたちです。彼らは赤新月社のワークショップに参加し、疾病予防や健康的な生活を送るための知識を得て、それを自身の地域に持ち帰って人から人へと伝えていくのです。

女性ボランティアの育成にも力を入れている©IFRC

女性ボランティアの育成にも力を入れている©IFRC

日本赤十字社は、2016年にアフガニスタン赤新月社の保健分野への支援を開始しました。国民の皆さまからの温かいご寄付は、明日を担う保健ボランティアの育成に活用させていただいています。

kokusai news no25.pdf(PDF:739B)