ミャンマー:いのちをつなぐ救急法

世界各国の赤十字・赤新月社では、紛争や災害で命を落としたり負傷したりする人々を減らすため、年間1500万人以上に救急法(応急手当)の講習を行っています。日本赤十字社(以下、日赤)では、国内での実績を生かして、東ティモール、カンボジア、ミャンマーの赤十字社に対して、「財政」と「人材育成」の両面から応急手当の普及を支援しています。本ニュースでは、2008年から続けているミャンマーでの支援の成果と現地の声をお伝えします。

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地域住民に対する救急法講習の様子

2011年以降、軍事政権から民政への移行、市場経済の導入、武装勢力との停戦合意など、国として大きな転換期を迎えるミャンマー。一般の人々の生活に目を向けると、まだまだ医療体制は不十分で、地域では医療資機材や医療者が不足しています。簡単に医師の治療を受けられないミャンマーでは、地域で手当が行えるかどうかが生死を分けるため、ミャンマー赤十字社が普及する救急法は命をつなぐ重要な役割を果たしています。

救急法を普及する力を育てる

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2016年に救急法指導員となったティーハ・アウンさん

救急法を担う住民を一人でも多く増やすためには、ミャンマー赤十字社自身の救急法普及体制を確立することが肝心です。

日赤では2008年以降ミャンマー全土で救急法が普及できるよう人材育成等を支援してきましたが、2015年から2017年の3カ年は、特に救急法指導員が不足していたミャンマー北西部のザガイン管区(※)に注力。現在まで、ザガイン管区の33郡区で3人ずつ、合計99名の指導員が養成され、地域での救急法普及体制が整っています。

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ザガイン管区の赤十字支部の代表を務める赤十字ボランティアのティン・ワイさん(左)家族全員が赤十字ボランティアとして活躍する赤十字一家です!

2016年にボランティア指導員となったティーハ・アウンさんは、これまでに地域で5回の講習を担当。「中学生のころから青少年赤十字メンバーとして赤十字活動に関わっていたので、救急法の指導員に自然に関心を持ちました。時間が許す限り指導を続けたいです」と意欲的です。

ミャンマー赤十字社の各管区の支部はボランティアによって運営されています。ザガイン管区の赤十字支部の代表を務め、救急法普及でもリーダーシップを発揮しているのは、ティン・ワイさんです。ティンさんの教育省への働きかけにより、管区内の多くの学校が休暇期間中に救急法の講習を開くようになるなど、活動は広がりを見せています。

無医村地域を支える

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救急法の講習を受けるアウン・カーさん

2016年11月にザガイン管区のブタール村で行われた救急法の講習会には、子どもから高齢の方まで幅広い年齢の住民が参加しました。講習は5日間で、さまざまなけがや病気に対する手当の方法や搬送方法などを包括的に学びます。日本では、救急医療システムが発達しているため、医療機関に引き継ぐまでの手当を基本としていますが、医療体制が確立されていないミャンマーでは、より踏み込んだ技法を、実践を意識した具体例と共に日数をかけて指導しているのが特徴です。

ブタール村も無医村の地域で、一番近い町の病院までは約4.8キロ。病院への搬送は時間がかかることから、「村で救急法が実施できることは必須」と地域住民は声を揃えます。

家族を代表して講習会に参加したアウン・カーさんは、「家族が農作業中にクワなどの農機具でけがをしてしまったり、蛇に咬まれたりすることもあるので適切な手当が必須です」と救急法の必要性を語ります。

伝統的な手当から一歩先へ

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救急法の講習にて傷病者の寝かせ方について学ぶタタノエさん(左)

「講習を受けて今までの手当の間違いに気付きました」と話すのは、タタノエさん。「以前は、指を切った際にニンニクを塗ったり、やけどには伝統的な薬を付けたりしていましたが、より適切な方法があることがわかりました」と、自信を持って答えてくれました。

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「赤十字ボランティアになって家族や村人の手当をしたい」と話すイン・イン・マーさん(中央)

19歳のイン・イン・マーさんは、救急法の知識を生かして赤十字ボランティアになることを決めました。「家族に何かあった時に助けたいし、家の外でも村のみんなを助けられる人になりたい」ことが理由です。こういった地域の救急法の担い手を育てることが、まさにミャンマー赤十字社の目標です。

ミャンマー赤十字社は、今後もより多くの地域で救急法の講習を実施できる体制をつくり、全ての村に救急法を実践できる住民を育てることを目指しています。日赤も、ミャンマーにより多くの「命をつなぐ救急員」が増えるよう、ミャンマー赤十字社の支援を続けていきます。

※ミャンマーの最大行政区分。ミャンマーには7つの州と7つの管区があり、管区はビルマ民族が居住し、 州にはビルマ族以外の少数民族が居住している。

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