レバノン:3人に1人が難民の国の医療現場

 隣国シリアでの紛争により150万人以上の難民が流入しているレバノンでは、3人に1人が難民と言われています。日本赤十字社は、赤十字国際委員会(以下、ICRC)が支援をしている現地の病院に2016年3月から約2カ月間、医師を派遣しました。

日赤の医師が見た救急医療の現場

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救急車で運び込まれた女の子の治療 ©ICRC

 レバノンの首都ベイルートにあるラフィック・ハリリ大学病院で岡田まゆみ医師(横浜市立みなと赤十字病院)は救急医として、外科医や看護師、ソーシャルワーカーと連携しながらシリア難民や、貧困に苦しむレバノン人などの診療に携わりました。

「患者の多くは衣食住ともぎりぎりの生活を送っている印象を受けました。衣服には穴が開き、ベルトはボロボロです。生活苦に加え、突然の怪我や病気で途方にくれ、ひどい目にあって家族を養わなければいけないことに精神的疲労がたまっている様子でした。しかし、そのような状況でも費用をなんとか工面しようとする家族や、仲間の支えを得ながら生きていこうとする人びとの強さに心を打たれました」と語ります。

 また、シリアから逃れてきた11歳の男の子が忘れられないと岡田医師は言います。「5年前に始まった紛争により学校にも通ったことがなく、家族を支えるために働いていたところ、雇い主から全身に暴行を受け救急搬送されました。その日は入院を勧め、すやすやと安心して眠っていた寝顔が忘れられません。その後、ソーシャルワーカーの支援を得て家族に連れられ退院しました」

苦しい生活を強いられる人びと

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生活環境が十分整備されていないテント暮らしは難民の

健康にも影響を与えている

 2014年10月にシリアとレバノンの国境が封鎖されて以来、レバノンへ逃れてくる難民の数は限られていますが、440万人程だった人口はこの5年間で590万人までに膨れ上がりました。難民が住む、空き地などの1900カ所以上に張られたテントの衛生環境は悪く、暑さや寒さを防ぐこともできません。また、着の身着のまま戦火から逃れてきた人たちは持ち合わせもなく、困窮した生活を送っています。実際、シリア難民の70%は一日400円以下の生活を強いられており、病気や怪我をしても医療費を支払うことができません。国民皆保険制度がないレバノンでは、人口の半分以上が保険に加入しておらず、医療費は家計にとって大きな負担となっています。支払えない場合は診療を拒否され、医療機関を転々とする患者も多くいます。一方、病院側は急激な人口増加に対応するための医療従事者や資機材が不足しています。シリア難民の医療費のうち約20億円が未払いとなっており、深刻な経営危機に陥っている病院も珍しくないのが現状です。

ラフィック・ハリリ大学病院での支援の開始

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現地スタッフの教育にも携わった岡田医師 ©ICRC

 このような状況を受け、ICRCは2016年2月にレバノン保健省と覚書を交わし、首都ベイルートにあるラフィック・ハリリ大学病院での支援を始めました。難民や社会的弱者が特に多く住む地域に位置していること、更には一刻を争う重篤な患者に対応する救急医療を担うレバノン南部での中核的な病院であることから、ICRCによる支援が決まりました。
 2005年に開院したこの病院は、入院患者のために430のベッドを有していますが、実際にはその半分以下しか患者を受け入れることができない状況でした。特に集中治療室に入院すべき患者が救命救急室に滞留してしまい、救急車で運ばれてくる重篤な患者を滞りなく受け入れることができませんでした。また、検査技師、放射線技師なども十分におらず、日本の病院では数十分でできる血液検査やレントゲン撮影が何時間もかかる状況でした。
 そこでICRCは、救命救急室の一画に医療チームを配置し、病院が受け入れられない患者の対応を始めました。患者の多くはシリア人ですが、赤十字の原則により国籍や宗教を問わずに患者を受け入れ、医療サービスは全て無料で提供されます。しかし、「限られた予算や人材により、限られた患者しか受け入れることができなかったのが大変心苦しかったです。長引く紛争による避難生活はシリア人難民のみならず、レバノン社会にも大きな負担となっており継続的な支援が必要です」と岡田医師は訴えかけます。

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