中東に日本赤十字社代表事務局を設置

日本赤十字社(以下、日赤)は昨年9月、中東・北アフリカ地域代表事務局(以下、日赤代表事務局)をレバノンの首都ベイルートに開設しました。代表事務局は、中東・シリアの人道問題への支援拡大をめざし、多くの難民を受け入れている周辺諸国と日本との『架け橋』になるために開設されました。

日赤代表事務局といっても、国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)中近東地域事務所の一角に机を設けているのみ。そこで『代表部』として五十嵐真希要員は一人、日々走り回っています。中東5カ国(シリア、イラク、レバノン、ヨルダン、パレスチナ)における日赤の支援事業の進ちょく管理や日本政府と赤十字の連絡調整、時には同じ事務所で活動するさまざまな国の連盟スタッフの指導者(メンター)として相談に乗っています。

五十嵐要員は、壮絶な状況の中、苦難を乗り越えて生きる人びとを現地で目の当たりにし、「苦しみの中にいる人は大変な努力をし、より良い場所を求めています。『かわいそう』という言葉では表現しきれない、すさまじい生命力を感じます」と語ります。

レバノンにおける水衛生支援の視察

ザーレ、コブ・エリアスの非公式避難住居区。シリアとの
国境にあたる山には雪が積もっている©レバノン赤十字社

五十嵐要員は先日、日赤が水衛生支援を実施しているレバノンのベッカー県中央のザーレ、コブ・エリアスの非公式避難居住区を訪問しました。

そこには、シリア北部のアレッポから避難してきた83家族、390人が住んでいます。そのうち半数以上の223人は子どもです。

レバノンは難民の地位に関する条約(難民条約)に非加盟であるため、公式的な難民キャンプを設立することができません。そのため、このような非公式の居住区と呼ばれる難民のテント村がいくつもできています。

この居住区では日赤の支援により、レバノン赤十字社と住民が協働し、どろどろだった道に砂利を敷いてテントを設置しました。さらに水と衛生環境の向上のため、トイレの建設や井戸掘削とタンクの設置、下水処理用の設備、衛生教育などを行っています。

居住区への訪問中、アレッポ県出身の姉妹、イブティッサム・ムスタファちゃん(12歳)とザハレ・ムスタファちゃん(13歳)が五十嵐要員をテントの中に案内してくれました。二人はアレッポから両親とほかの6人の兄弟とともに2年前、レバノンに避難してきました。

テントの中では薄着ではだし。「寒くないの?」と尋ねると、「慣れているから大丈夫!」と答えますが、「テントでの生活は寒いし、狭い部屋に家族10人で住むのは慣れない。お父さんもお母さんも忙しいし、私たちの面倒をみてくれる近所の人も少ないの」とイブティッサムちゃん。また、「お金にも困っていて、食事は1日一食か二食しか食べられない」とザハレちゃん。

「勉強したい!」子どもたちの願い

ザハレちゃん(写真左)とイブティッサムちゃん(同中央)の話を聞く五十嵐要員 ©レバノン赤十字社

居住区には、赤十字が黒板などを提供している小学校低学年以下の子どもたちの仮設学校はありますが、小学校高学年以上のための学校がなく、難民の子どもはレバノンの学校にも通えない状況です。

この姉妹は避難してきてから2年間、まったく勉強ができていません。

学校の話になると二人とも身を乗り出し、「ここには学校がないの。学校に行きたい。勉強がしたい。どうやったら勉強できるの?先生を呼ぶことはできる?」と質問は止まりません。

「子どもたちにとって、勉強ができないことは、何よりもつらいようです」と五十嵐要員。イブティッサムちゃんとザハレちゃんは二人とも、「将来はお医者さんになりたい」と言います。理由を聞くと「お母さんの心臓が悪いから、治療ができるお医者さんになりたい」と教えてくれました。

五十嵐要員は訪問後、こう語りました。「出会った子どもたちは、いま置かれた立場を理解しつつ、自分の夢や希望よりも、『どうやったら人の役に立てるか』を考えており、胸が締め付けられる思いでした。凍えるように寒いテント生活で、コンクリートの床の上をはだしで歩き、風邪気味の幼いきょうだいたちの世話をしながら勉強ができるようになる日を夢みている子どもたち。彼らのために、赤十字だからこそできる支援を、寄り添いながら続けていく必要性と責任を痛感しました」

平均寿命が20歳下がった、シリア紛争の影響

シリア国内では、家屋、学校や医療施設、文化的建造物は破壊され、推定25万人の方が亡くなり、100万人以上が負傷しました。660万人が国内で避難生活を送り、国外に避難している難民数は460万人に上ります(2016年2月現在、国連調べ)。水、食料、電気、医療、教育を得ることは制限され、200万人もの子どもたちは学校で勉強ができません。さらに80%の人が職を失い、貧困に追いやられているといわれています。その結果、シリアの平均寿命はこの5年で、75歳から55歳まで、20歳も下がりました(国連調べ)。

日赤は各国の赤十字社・赤新月社や連盟と協力し、紛争により国内・国外へ避難している人びとの支援、そして、難民受け入れ国への保健医療やこころのケア、水衛生、生計支援などを実施しています。しかし、現地の状況は厳しく、今後も継続的な支援が必要です。皆さまの温かいご支援をお待ちしています。

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