ベトナム災害対策事業 第4次5カ年計画が終了

日本赤十字社(以下、日赤)が2011(平成23)年1月から実施している、ベトナム災害対策事業の第4次5カ年計画が最終年度を迎え、事業評価が行われました。また、事業の成果を確認するため、日赤副社長やベトナム政府関係者などが出席したワークショップが12月にベトナム、ハノイで開催されました。5年間の事業内容と成果をお伝えします。

事業が始まったきっかけと変遷

本事業は、ベトナム赤十字社(以下、ベトナム赤)の一つの支部の熱い思いから始まりました。もともと、ベトナム沿岸地域に広く自生していたマングローブが、1960年代以降の経済活動による伐採などにより激減する状況に危機感を感じたベトナム赤タイビン省支部が、マングローブ植林の事業の立ち上げを提言。それを支援したのがデンマーク赤十字社、そして、1995年から他の省も含めて事業を拡大していったのが日赤でした。

当初は、マングローブ植林を通じた高潮予防などの防災活動を中心としていた事業も、成果が挙がっていくにつれて、植林だけでない総合的な防災事業へとその形態を変えてきました。特に、2001~2005(平成13~17)年の第3次計画では、地域住民に対する防災研修や防災活動が取り入れられ、このたび終了を迎えた第4次計画では、新たに小学校での防災教育も活動に加わりました。

『ベトナム赤のベスト5事業』へと成長

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マングローブ林を手入れするベトナム赤
職員 ©IFRC

第4次計画では、沿岸部8省と山間部2省の193コミュニティーに直接支援を届け、啓発活動などの間接的な支援を受けた地域は356に上ります。

マングローブに関しては、新たな植林ではなく、これまで植林した森林を守る活動が中心。

これまでの報告でも明らかなように、マングローブ植林を通じて豊かになった生態系から得る海産物を通じた住民への生計支援や、気候変動への貢献についても高く評価されました。

19年間に植林されたマングローブは2025年までに、1630万トンの二酸化炭素を吸収します。これは2億1800万ドル相当の価値を持つとの評価結果が出ています。

この成果は、今月初旬にフランス・パリで行われていた国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で、成功事例として紹介されました。

地域での防災活動は被害軽減に確実につながっています。5年間で146回行われた研修の参加者のほとんどが、知識を生かして防災活動を行ったと報告されたほか、研修を受けた地域行政職員と住民の適切な災害対応により、2013年に台風の直撃を受けたハイフォン省の事業実施コミュニティーでは、一人の命も失われなかったことが報告されました。

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防災教育の授業で、地域のリスクマップを描く小学生ら ©IFRC

小学校での防災教育は5年間で、76校897人の教師と9842人の生徒に対して実施され、教職員や授業を受けた生徒の多くから高い評価を受けました。

ベトナム赤や他団体の啓発活動の成果もあり、ベトナム政府は2018年から公式な学校教育に防災教育を組み込むことを決定したため、今後もベトナム赤が地域行政をサポートしながら防災教育を広げていくことが期待されます。

これらの総合的な防災への取り組みを通して、本事業はベトナム政府が掲げる防災の目標である『2020年までに、災害にぜい弱な約6000のコミュニティーの災害対応能力を高める』ことにも貢献しています。

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マングローブ植林地を視察する大塚副社長(写真右)

日赤の大塚義治副社長が参加した今回のワークショップには、ベトナム政府高官ら8人も参加。今後ベトナム赤が政府と連携を深めるための一歩となりました。

ベトナム赤のドン・バン・タイ副社長は、「本事業はベトナム赤史上、最も長い期間続き、最も多くの人が関わり、最も多くの人に利益をもたらすことができました。ベトナム赤の全事業の中でもベスト5」と振り返りました。

本事業はベトナム赤の根幹として成長しています。

19年の成果を永遠に、一年間の支援継続を決定

一方、今後事業成果をどう守るかが評価の焦点となりました。特に、マングローブは植物であり継続的な保護・補植が必要なため、地域行政と連携して保護の仕組みを作る重要性が指摘されました。また、ベトナムでは新しい堤防を作る際にその外側にマングローブを植林することが義務付けられているため、マングローブ植林の経験を持つベトナム赤タイピン省支部が、自主的・積極的に貢献していくことも事業の継続性の一つの形として期待されます。

これらの提言を踏まえ、持続発展性をより高めるためには、明確な役割分担に基づく地域行政との連携強化や、マングローブ保護・補植技術の改良などの活動が少なくともあと一年必要であることがわかりました。そこで日赤は、これまで積み上げた事業成果を確実に将来へつなげるため、一年間の支援継続を決定しました。来年度の事業展開にも、ぜひご注目ください。

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