赤十字の支援で変わる、HIV/AIDSへの理解

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日本からスワジランド、レソトへ行くには東京から香港、
南アフリカを経由して、飛行機で約20時間かかります

国連エイズ計画(以下、UNAIDS)の報告書 によると、世界には約3500万人のHIV感染者がいるといわれており、そのうちサハラ砂漠以南のアフリカの居住者が推定2470万人、約71%を占めています(※)

南アフリカに囲まれた小国であるスワジランドとレソトでは、国内のHIV感染率がそれぞれ27.4%、22.9%で、世界第1位、第2位の高さです。

日本赤十字社(以下、日赤)は国際赤十字・赤新月社連盟とともに、HIV/AIDSに関連する感染症の影響を受けるアフリカ各国を支援しています。

事業の定期的な進捗を確認するため、日赤和歌山医療センターの大津聡子医師と榊本亜澄香薬剤師、本社国際部の上田めぐみ職員が今月、レソトとスワジランドを訪問しました。現地の様子をお伝えします

※UNAIDS GAP REPORT 2014

レソト~地域が連帯してエイズ孤児を救う

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ケア・ファシリテーターとともに菜園を視察する榊本薬剤師(写真左)と大津医師(同左から2番目)

レソト赤十字社はエイズ孤児やHIV陽性者など、ぜい弱な状況にある子どもたち(OVC:Orphans and Vulnerable Children)を、地域住民が継続的に支援する仕組みづくりに取り組んでいます。

その中心となるのが、地域からの推薦を受けて行政に任命される『ケア・ファシリテーター(ケアを推進する人、の意味)』です。社会心理支援や家庭看護などの研修の受講が必須です。

赤十字ボランティアでもある彼女たちは住民と協力して菜園を作り、収穫した野菜をOVCに届けて食料支援を行っています。同時にOVCの生活環境に変化がないか、HIVの治療薬を継続的に服用できているか、などを定期的に確認する役割も担っています。

まさか学校に戻れるなんて

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長期入院も経験し「誰も私が復学できると思っていません
でした」と話すモコイジョさん

日赤の支援を受けたOVC代表としてモコイジョさん(18歳)に会いました。

彼女は2004年にエイズで母を亡くし、2008年には自分も感染していることが判明。しかし治療を受けて、今では元気に過ごしています。

高校ではトップの成績で、レソトのOVC代表としてアフリカ連合の会議にも出席したそうです。「海外の大学に行って、医師になるのが夢」と目を輝かせて語りました。事業の大きな成果です。

スワジランド~『奇跡の人』に対面

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5月に出産した男児を抱くベケテレさん(写真左)。信頼するメシア看護師(同右)

日赤の支援を受けて、スワジランド赤十字社はシレレクリニックを運営しています。HIV/AIDSや関連する感染症の治療、一般診療のみならず、緊急対応、訪問診療や食料支援まで行っています。

運営の中心はメシア看護師長。海外での勤務経験もある優秀な看護師で、地域から厚い信頼を得ています。

彼の診療を受けるため、地元住民だけでなく、別のクリニックがカバーすべき地域の住民や、さらには南アフリカから国境を越えて来院する患者もいるほど。彼のおかげで病状が奇跡的に回復した女性がいます。

ベケテレさん(25歳)は妊娠中の今年1月、胸痛のために、ほかの地域から越境してシレレクリニックを受診したところ、HIV陽性であることが判明しました。

HIVの治療をすぐに開始し、5月に無事出産。しかし、その後容態が悪化し、結核も併発していることがわかりました。心臓や肺の異常も見つかり、シレレクリニックよりも高度な医療施設を紹介されましたが、メシア看護師の治療を希望し、引き続き通院しました。重篤な時期を乗り越え、現在は子どもやパートナーと元気に暮らしています。

宗教リーダーとの協力

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「HIV/AIDSは医学的、宗教的、どちらの治療も必要」と話す
アブラハム牧師(写真右)

シレレクリニックの受診者数は年々増加傾向にあるとはいえ、現地では今でも『病気は祈れば治る』と信じている住民が多くいます。

メシア看護師長は伝統医療と西洋医療を共存させる活動を進めており、地域で強い影響力を持つ宗教リーダー14人を対象に今年、HIV/AIDSや結核についての研修を実施しました。

参加したアブラハム牧師は「感染しているかもしれないという相談を信者から受けることがよくあります。研修で新しい知識を得たので、自信を持って、クリニックへの受診を勧めています」と研修の成果を語りました。

彼は毎週の礼拝や葬儀の説教の中にHIV/AIDSの話題を盛り込み「HIV陽性でも私たちは仲間」と呼びかけているそうです。

変わるHIV/AIDSへの認識

『死の病』と恐れられ、差別の対象でもあったHIV/AIDSに対する地域の認識は、この数年で大きく変化しています。治療薬の発展や診療の無料化、赤十字をはじめとしたさまざまな機関の支援活動を通じて「薬を継続的に服用すれば普通の生活を送ることができる」という理解が広まりました。自ら積極的にHIV陽性であることを公表して、支援を受けようとする患者も増えています。

地域に根づく各国赤十字の活動を、日赤は今後も支援します。

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