国際人道法から見るアフガニスタンでの病院空爆

アフガニスタンの北部クンドゥズ(Kunduz)州の州都クンドゥズで10月3日未明、国境なき医師団(以下、MSF)が運営する病院が米軍によるとみられる爆撃を受け、少なくともスタッフ12人、子ども3人を含む患者7人が死亡しました。駐留米軍司令官のキャンベル氏はアフガニスタン大統領に謝罪しつつ、『巻き添えによる損害』が出た可能性があると今回の事態を説明しました。

MSFは数カ月前から米軍やアフガン軍当局に病院の正確な位置を伝えており、「今回の爆撃は『国際人道法の重大な侵害』」だとし、また国連の人権高等弁務官も「戦争犯罪(国際人道法の違反行為)にあたるおそれがある」と説明しています。

国際人道法とは?

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紛争時であっても病院への攻撃は国際人道法により
禁止されています ©Abdul Kader Fayad/SARC

国際人道法とは紛争下における市民や医療活動など、戦闘とは無関係な人びとや民用物を保護し、戦闘方法や手段を規制して紛争の影響を最低限にとどめる国際的なルールの総称。

紛争地で人道支援活動を展開する赤十字やMSFなどの支援団体にとっても、非常に重要なルールです。

国際人道法上の『巻き添えによる損害』

今回の出来事は、国際人道法で保護される病院を爆撃としたことが問題視されています。では米国が主張する『巻き添えによる損害』は国際人道法ではどのように取り扱われているのでしょうか? 

国際人道法を構成する主要な条約の一つである1977年の第一追加議定書(※)第51条4項は、戦闘員と一般市民を区別しない『無差別な攻撃』を禁止しており、その例として『予期される具体的かつ直接的な軍事的利益との比較において、巻き添えによる文民の死亡、文民の傷害、民用物の損傷又はこれらの複合した事態を過度に引き起こすことが予測される攻撃』を禁止しています。

これを『均衡性の原則』と呼びます。したがって米国が主張する『巻き添えによる損害』は、『予期される具体的かつ直接的な軍事的利益』が明確に示され、それとの比較で『過度ではない』損害であることが証明される必要があります。

またこれと並ぶ国際人道法の基本原則である『区別の原則』により、攻撃は常に軍事目標と非軍事目標を区別し、無関係な医療施設などの民用物は攻撃対象とはしないことが戦闘員には義務付けられています。

※米国は第一追加議定書の締約国ではありませんが、均衡性の原則をはじめとする国際人道法の基本原則は、すべての国家を拘束する「国際慣習法」と考えられています。

国連の潘基文(パンギムン)事務総長は、「医療施設と医療従事者が国際人道法で保護される対象であることは明らかであり、軍はいついかなる場合でも文民、医療従事者とその施設を保護する義務を負う」との声明を発しています。1949年のジュネーブ諸条約などに定められる病院などの医療の保護は、戦闘手段の規制とはまた別の、国際人道法の最も基本的な原則の一つです。

違反にどう向き合うか

国際社会には残念ながら国際人道法の違反行為を強制力をもって裁き、刑罰を課すような制度は存在しません。国際刑事裁判所といった国際機関も存在しますが、同裁判所が事件を取り扱うためには国家が国際刑事裁判所規程(通称『ローマ規程』)に加盟している必要があります。米国はローマ規程の当事国ではありません。

今回の事態に対して国連やMSFなどは『国際的な第三者機関による完全で透明性のある調査』の実施を求めていますが、今のところその実現のめどは立っていません。国際社会には今後、柔軟な対応で違反行為の有無を明らかにしていく努力が求められています。

国際人道法についてもっと詳しく知りたい方におススメの日本赤十字社発行『赤十字と国際人道法』。

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