インドネシア・コミュニティー防災事業が終了~新たな一歩を踏み出す時

日本赤十字社(以下、日赤)が2012年8月からインドネシアのジャワ島で実施してきたコミュニティー防災事業が2015年9月に終了し、このたび最終評価を行いました。そこから見えてきたのは、3年間地道に積み上げた活動の成果や今後のための教訓、新しい一歩への期待。現地からのレポートをお届けします。

パワーアップしたインドネシア赤十字社

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評価でファシリテーションを行うバンテン州支部職員
(写真中央)

赤十字の開発協力事業では、事業実施主体である現地赤十字社の組織強化を主軸とすることを心がけています。

今回の評価も今後を見据え、インドネシア赤十字社(以下、インドネシア赤)の職員に評価手法を伝えるところから始め、彼らを中心に進めました。

インドネシア赤は広大な国土をカバーし、全国に33の州支部、459の県・市支部を抱える大きな組織です。そのため、本社がすべての支部に対して目を配ることが難しく、それぞれの支部が自立して活動を行うことが求められます。

日赤が支援していたバンテン州とパンデグラン県、チレゴン市の各支部は、これまで一つの事業を長期的に行った経験がなく、支援が始まった当初は、災害対応能力が十分備わっていないこと、報告書作成スキル等の事務管理能力が低いこと、ボランティアの数が少ないことなどのさまざまな課題を抱えていました。3年間の経験を経た現在は、質の高い報告書が期限通りに提出され、訓練を受けたボランティアが組織されるなど、より高いサービスを地域住民に対して提供できる体制が整いつつあります。

また、この事業を通じて災害対応に必要な資材も整備されました。チレゴン市支部では、実際に災害時により多くの被災者に対して支援を届けられたと報告されています。チレゴン市支部長は、「これまで日赤からは、多くの経済的・技術的支援を受けました。これからはその知識と経験を生かして自立して活動していきたい」と話します。

高まるコミュニティーの災害への備え

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パンデグラン県に設置された水タンクと赤十字ボランティア

住民に最も大きな変化をもたらした活動は、防災知識の普及と、住民自身によるリスク調査に基づいた防災活動です。インタビューでは、ほとんどの住民が地域のリスクや災害発生時に取るべき行動を理解していることがわかりました。

防災活動では、洪水時の避難用ボートや衛生的な飲料水を確保するための水タンク、洪水発生を抑制する水路の整備、洪水の原因となるごみを適切に管理する活動などが行われ、自然災害に対する住民の備えが高まっています。

また、災害時に情報をいち早く伝えるための早期警戒システムも整備、運用されています。

「私は母親として、洪水時に安全な水が手に入らないことが一番不安でした。水タンクができて心から安心しました」

「洪水を防ぐための水路建設に取り組みました。最初は長い水路を引くことは無理なのではと思っていましたが、みんなで力を合わせて完成できました」

住民からは、安心感や自信に満ちた声が口々に聞かれました。

防災活動がもたらした直接的な効果に加えて、災害時に助け合える仕組みや住民間のつながりができたこと、地域の課題に対する解決方法を住民自身が学んだことも、今後災害に強いコミュニティーを作る上での重要な成果といえます。

今後も活動を継続させるためのカギ

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チレゴン市の地域ボランティア

事業終了にあたって重要な視点は、 持続発展性です。つまり、インドネシア赤が今後も自力で事業を継続できるか、コミュニティーに活動を続ける仕組みや計画があるか、地域行政から支援を受けられる関係ができているか、といった視点です。

評価を通して、改善すべき点は残るものの、高い持続発展性を確認することができました。インドネシア赤は今後、コミュニティー防災事業を支部の根幹事業として進めていこうと考えており、地域行政との対話を積極的に進めています。

コミュニティーでも、水タンクやボートを管理するために住民がお金を出し合う仕組みができているほか、ボランティアも活動を継続する強い意志と使命感を持っています。日赤の支援はここで終了しますが、これからはインドネシア赤と地域住民が自らの力で地域の防災力をより高めていくための一歩を踏み出します。

より良い事業への教訓

今後の事業で改善すべき課題も、もちろん明らかになりました。特に、事業地の主な災害は、洪水や干ばつ、地震・津波、工場に起因する大気汚染など多岐にわたりますが、日常的に起こる災害である洪水と、数十年に一度起こる地震・津波のリスクを一つの事業の中でどう優先順位を付けるのかが、課題として挙げられました。また、地域住民のニーズ調査は、最前線で活動を行う支部職員が中心となって行う重要性も指摘されました。これらの課題や教訓は、次の事業に生かすための重要な学びです。

インドネシアでは国を挙げて防災への取り組みが行われており、インドネシア赤はその中で重要な役割を担っています。10月13日は、『国際防災の日』です。インドネシアでも、日本でも、世界でも。赤十字は、災害の被害を少なくするための防災事業により一層取り組んでいきます。

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