災害リスクを理解する~防災週間に寄せて

災害による経済損失は増大傾向に

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ネパール地震の被害を受け、がれきの上に座る親子 ©IFRC

「私たちが生きるこの世界は、災害リスクに対するぜい弱性が高まる一方です。気候変動や急速な都市化、人口増加、環境破壊がこの傾向に拍車をかけていることは、疑う余地もありません。こうした状況を打破するために、ここで重大な決定を下すことが求められています」

今年3月に仙台で開催された第3回国連防災世界会議で、国際赤十字・赤新月社連盟(連盟)の近衞忠煇会長(日本赤十字社社長)は、各国政府に訴えかけました。

国連世界防災白書(2015年版)によると、災害による経済損失は毎年平均2500億米ドルから3000億米ドル、過去10年間で1.3兆ドルに達しています。1980年代の年間平均損失額500億米ドルと比較すると、その差は歴然としています。

さらに重要なのは、低・中所得国における経済損失が上昇傾向にあること、そして、災害による損失は平等に担われていないということです。高所得国の年間平均損失が社会支出の1.45%を占めるにすぎない一方で、低所得国ではこの割合は22%に跳ね上がるからです。

「低・中所得国における過去30年間の経済損失は、同じ期間の開発援助総額の3分の1に相当し、莫大な開発努力を相殺している」という世界銀行の報告もあり、災害が途上国の持続可能な開発を妨げ、貧困を拡大させる要因にもなっているといえます。

「災害リスクを理解する」ということ

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2度のサイクロンに見舞われたバングラデシュ
©IFRC

国連防災世界会議では、「災害に強い社会を構築するためには防災への事前投資が不可欠である」という認識が改めて共有されました。

赤十字も従来から、「減災・防災活動に1米ドルを投じれば、災害発生時の救援・復興活動に対する支出を約15.65米ドル削減することにつながる」という分析から、防災の費用対効果における有効性を強調しています。

防災というと、これまで多くの国が外的な脅威を想定し、個々の具体的な災害に対する備えに注力する傾向にありました。

確かに災害は数ある脅威の一つですが、多くの人にとって生活とは、経済・社会・環境面でのさまざまなリスク要因にいかに対応していくか、ということにほかなりません。

今回の会議で採択された『仙台防災枠組み』では、『災害リスクへの理解向上』を優先課題の一つに掲げています。

「災害というものを表面的に理解するだけでは、将来的にリスクを減らすことにはつながりません。個別のリスクではなく、本当に社会を壊してしまうような、複合して機能する複数のリスクを理解することが重要です」と、ワルストロム国連事務総長特別代表は訴えています。

だからこそ、赤十字が果たすべき役割

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地域特有のリスクを洗い出すハザードマップの作成(ネパール)

地域特有のリスクを知りつくしているのは、住民自身です。彼らは自らのニーズを最も理解し、地域の資源やその土地に根付いた伝統的な知恵を活用しながらリスクに対応する術を心得ています。

赤十字は、住民を主体とした防災活動を長年にわたって続けており、そうした活動は地域出身者であるボランティアによって支えられてきました。

日本赤十字社も、インドネシアやネパール、ベトナムでそれぞれの国の赤十字社が実施する防災事業への支援を続けています。

ネパールでは先般の大地震を受け、復興支援事業も始まりました。日ごろから地域に根差した活動を続けてきた赤十字だからこそ、住民に最も近い存在として、地域社会の回復力(レジリエンス)を内側から強化することを目指していきます。

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