地中海:移民・難民問題
リビア沖で今年4月12日、約400人を乗せた船がで転覆。同19日にはイタリアのランペドゥーサ島の180キロメートル沖で800人を乗せた船が転覆しました。
多くの命が失われ、国際社会で話題となった地中海を渡る移民問題。中東や北アフリカ諸国の政情不安が改善せず、今もなお深刻な状況が続いています。
イタリア内務省の発表によると、2015年6月末までに15万人以上がイタリアとギリシャに漂着しています。一方で、地中海で命を失った人の数は1914人に上り、2014年の同時期に比べると2倍以上の数です(2015年7月10日現在、国連)。
医療支援の必要な人を優先的に介助するイタリア赤ボランティア cMerlijin Stoffels/Netherlands Red Cross
エリトリアからイタリアに漂着する移民が最も多く、次いでナイジェリア、ソマリア、シリア、ガンビア、スーダンと続きます。
紛争が続くシリアからの移民や難民の多くは、東地中海を渡ってギリシャに漂着します。
深刻化する本移民問題に対し、国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)は5月8日、イタリア赤十字社(以下、イタリア赤)の移民救援を支援するため、約3億5300万円の緊急救援要請を発表しました。
港で子どもに靴下をはかせるイタリア赤ボランティア cMerlijin Stoffels/Netherlands Red Cross
イタリア赤は、イタリア南部のプッリャ州、カラブリア州、シチリア島で移民への支援しています。
支援対象は、緊急に診療の必要な人びとや子どもたち、育児中の母親、妊婦を優先し、水や食料、食料以外の救援物資、歯ブラシ、石けんなどの衛生用品の配布、基礎的な医療支援やこころのケアを行っています。
また、離散家族の支援も実施しています。
移民を「不法入国者」と呼ぶのはやめよう
イタリア・カターニャの難民キャンプの診療所で難民の赤ちゃんを抱くボランティア cMerlijin Stoffels /Netherlands Red Cross
サンマリノ共和国で5月26日、赤十字・赤新月社の地中海沿岸国会議が開催されました。
会議ではヨーロッパへ向かうアフリカ・中東からの移民・難民流入が課題になり、移民がその道中に直面する危機的状況に対し、人道的な対応能力を強化し、連携していくことが話し合われました。
ブルンジの混乱から船で隣国に逃れる人びと cFinnish Red Cross
国境にたどり着く人びとは、それぞれが異なる理由で祖国を離れているため、さまざまなぜい弱性を持っており、危険にさらされる可能性が高くなります。
会議に参加した各赤十字・赤新月社は、彼らをどんな状況においても、その法的地位に関係なく人道的に扱うべきであることを再確認しました。
また、地中海沿岸諸国のユース(青少年)メンバーは、移民・難民を生み得る暴力の根本的な原因を追究し、地域ごとに平和な文化を築いていくことで結束しました。
イラクのアンバールから今年6月初めに避難する人びと cIraqi Red Crescent Society
連盟の副会長フランセスコ・ロッカは「移民が将来への希望や機会を求めるのは正当な要求です。彼らは、もしかしたら経験や知識、能力でたどり着いた国に貢献してくれる人材かもしれません」と述べました。
また、地中海沿岸国会議長のレイモンド・ファットーリは「人間の尊厳はどんな状況においても尊重され、保護されるべきです。赤十字は移動する人びとを『不法入国者』などと呼ばないように要求します」と強調しました。
移民を受け入れる地域の赤十字・赤新月社は、彼らを保護し、支援するため24時間休まず活動しています。日本赤十字社は上記の連盟による緊急支援要請に対して、1000万円の資金支援を実施しました。