イエメン:一時停戦後も続く人道危機 

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がれきの上に立ちすくむ少年 ©T. Glass/ICRC

3月下旬からサウジアラビアの空爆を受けているイエメン。5月12日から5日間にわたり停戦が合意され、国内外の人道支援団体がこれまでアクセスできなかった地域の人びとに食料や水、薬、こころのケアなどを届けることができました。

3月19日から5月15日の間、イエメンの紛争による死者は1849人、負傷者は7394人。また、54万5000人が国内で避難生活を余儀なくされ、2万8712人が国外で難民となっています(5月22日、国連調べ)。

イエメン赤新月社(以下、イエメン赤)は国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と協力して、イエメンの16の地域で人道ニーズを調査し、負傷者の応急処置や、戦火で恐怖に怯える子どもや親を失ってしまった子どもへのこころのケアが急務であることがわかりました。

また、緊急対応ボランティアを育成しました。停戦の間、400の応急処置セットを各地域の支部に配置し、損害の大きかった町アデンで2500世帯に温かい食事を提供しました。ほかにも衛生用品や毛布などの物資を数カ所で配布しました。しかし、停戦が終了した17日には、再びイエメン国内で激しい戦火が広がり、首都サナアでは最も激しい対立が起こりました。

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空爆後、停戦時に町の様子を見て回る人びと ©IFRC

イエメンは、食料や医薬品を輸入に頼っている国です。空爆で、港や空港、橋、道路などの生活インフラが損壊してしまうと、食料が手に入らない、医薬品が届かないなど、一般市民の生活は厳しい状況に追い込まれます。

また、病院や学校などが数多く破壊されており、国際人道法が尊重されているかが問題視されています。

イエメン赤事務総長へのインタビュー

空爆が激化した4月、国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)は、イエメン赤の事務総長であるファド・マクシ―にインタビューを行いました。

― イエメン赤による救援活動について聞かせてください

空爆以前から救援活動を継続していましたが、空爆が始まってからは、南部で軍事行動が始まるなど、今までとは状況が変わりました。イエメン赤は、負傷者の保護や人びとの避難の支援、応急処置、遺体の回収など空爆中も活動範囲を広げて救援にあたっています。

何カ月も前からイエメン赤は、市民の抗議行動の場面などを想定して、負傷者に応急処置を行ったり、救助を行う危機管理計画を立てていました。しかし、軍が出動し、空爆が行われている現在は、対立する紛争当事者に赤新月ボランティアが一般の人たちの救援にあたる際に攻撃の対象としないことを約束してもらい、安全に負傷者を病院に搬送し、人びとが避難できる場所を見つけ、食料や物資の配布を認めてもらうことが主な活動になりました。

― イエメン赤スタッフが救援活動中に大事にしていることは何ですか?

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イエメン赤新月社による物資支援 ©IFRC

応急処置による、負傷者のいのちの救済を最優先事項にしています。また、避難生活を送る人びとへのテント資材や食料の配布、戦闘に巻き込まれて亡くなった方の遺体回収なども重要な活動です。

ほかには、献血を募ったり、病院で不足する人員を補うボランティアを募集するなど、国の医療システムを支える役割も重要です。

イエメンでは現在、国内17支部で1000人以上の赤新月ボランティアが活動をしています。中には、自らが避難生活を送りながら、避難先で救援活動を行っている者もいます。

イエメン赤は186台の救急車を持ち、各地域の通信やネットワークを強化して、いち早くこころのケアを含めた応急処置が行えるように努めています。現在の重大な人道危機に際して、食料支援や応急処置、子どもたちの栄養維持、医薬品や医療機器の提供、給水など基本的な救援が私たちの最大の役目となります。

― 直面している課題についてお聞かせください

活動を実施する際、赤新月の標章を掲げているにもかかわらず、救急車や輸送トラックが安全に目的地へたどり着くことができないという問題が起こっています。また、頻繁な停電や燃料不足により、車両が動かせなくなったり、イエメン赤本社と支部の連絡が取れなくなるなどの問題が起きています。

イエメンの混乱した状況は2014年から続いています。政情不安の長期化によって、緊急対応用の備品が減ることや、予算が足りなくなるなどの問題は活動の存続維持にかかわる重要課題です。一方、活動の継続により各地域のネットワークがいっそう強化されたり、紛争当事者の赤新月社の活動への理解が深まるなどの成果もありました。

― 救援活動の中でイエメン赤が失ったものをお聞かせください

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負傷者を搬送するイエメン赤ボランティア ©イエメン赤

救援活動中に3人のボランティアが亡くなりました。また、2人が負傷しました。さらに、2台の救急車が損害を受けました。

緊急時の対応は、「赤新月社の標章が保護され、人道支援に関わる人びとは攻撃の対象にならない」という国際人道法が守られることで可能になります。それが守られなくなると、紛争下で緊急人道支援を行うことが極めて困難になるのです。

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