三池崇史監督に聞く「映画に描いた赤十字の『リアル』」~映画『風に立つライオン』

シンガーソングライター、さだまさしさんの名曲を題材にした映画『風に立つライオン』(三池崇史監督、東宝)が3月14日から公開されます。

舞台の一つとなったのは、赤十字国際委員会(以下、ICRC)が1987年、スーダンの南部(現在の南スーダン)での武力紛争の犠牲者を救援するため、隣国ケニア北部のロキチョキオに開設したロピディン赤十字戦傷外科病院(以下、ロピディン病院)。

日本赤十字社(以下、日赤)は長年にわたって医師・看護師を派遣し、救援活動を支えてきました。映画製作に当たって、日赤はICRCとともに全面的に協力しました。

幅広いジャンルの話題作を次々に発表してきた三池崇史(みいけたかし)監督に、今回の作品や赤十字について聞きました。

「どう生きるのか」を問いかける作品

さださんの同名の歌はもちろん知っています。さださんによる映画の原作となった小説はすごくさわやかで、勇気付けられる内容。しかも押し付けがましくない。

今回を逃したら、こうした本格的なヒューマンドラマを撮る機会は二度とないかもしれないと考えて、監督を引き受けました。

さまざまな人やその人生を(映画作りを通して)体験することが、自分にとって映画を作るということ。その意味で、すごくやりがいのある作品でした。

人にとって穏やかな日々を送ることが理想ですが、現実はそうはいきません。そのような状況に置かれた『風に立つライオン』の登場人物たちの生き様や闘う姿を通して、「どう生きるのか、何ができるのか」そんなことを問いかける作品になったと思います。 「いのちをつなぐ」ということもテーマの一つ。

「今を生きる一人ひとりの思いを受けて、次の時代は来るんだ」という原作の思い。それにすごく共感できたし、そこから外れてはいけないと考えながら撮りました。

絶妙なバランス感覚で助言してくれた中出医師

ケニアの撮影現場でモニターを確認する三池監督(写真中央)と中出医師(同右)

主人公は医師。幸いにして私は健康なのであまり触れ合う機会もないのですが(笑)。そこで大阪赤十字病院国際医療救援部長の中出雅治医師(2003年、ロピディン病院に派遣)に医療指導をお願いしました。ケニアまで来てもらって。

舞台の一つとなった病院の過酷な状況を観客に感じてもらうために、セットの壁や窓を汚し、手術器具は古く、シーツにもしみを付けます。

すると中出医師は「現実にはこんなに汚くはないんですが」と言いながら大目に見てくれたり、役者がうまく医者らしく見えるようにいろいろ助言したりと、映画作りに協力してくれました。

映画で描かれているロピディン病院

でも医師として譲らないところははっきりしている。「医者はそんなことは絶対にしません」

そのバランス感覚やコミュニケーション力は、国際救援に長年携わってきた人ならではだと思います。アドバイスを受けて、主演の大沢たかおさんも本物の医者に見えてきました。

ケニアの撮影現場では、朝になると必ず何人かのスタッフが中出医師のところに並ぶようになりました。「お腹が痛いんです」とか言って。

アドバイザーとして来ているのに、みんなが頼っている。医者はどこにいても頼りにされるんだなあと思いました。本当に中出医師でよかった(笑)

全力でいのちを守る赤十字

三池監督とライオンに扮した日赤マスコットキャラクターのハートラちゃん

職業はなんであれ、人は何かにぶち当たったとき、まさに『風に立つライオン』のように、逃げない勇気を求められることがあります。

この映画は「そんなときにどうするのか」という問いを、皆さんに投げかけるのではないでしょうか。

映画でも描いた赤十字は、「中立を守ることの難しさ」を超えて、多くのいのちを守る存在。今回の撮影を通して、赤十字がどんな活動をしているのか、そのリアルな姿をあらためて知りました。

赤十字は人びとのいのちを守るために国内外で活動していますが、その活動は私たち自身のためにも必要なもの。いつか自分たちに返ってくるのだと思います。それを知ってもらうために、この映画が役に立つこともあるのではないでしょうか。

登場人物の姿や行動を通じて、観客の皆さんが赤十字という存在をリアルに、また身近に感じられるのではないかと思います。