南部アフリカ地域でHIV感染者や孤児を支援~日赤の医師らがナミビアを視察

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日本からナミビアへは香港と南アフリカ経由で約20時間かかります

国連合同エイズ計画(UNAIDS)の2012年の報告によれば、サハラ砂漠以南のアフリカには、世界のHIV感染者の68%にあたる2290万人がおり、そのうち南部アフリカ地域には1110万人の感染者が存在するといわれます。

世界で最もHIV/AIDSの影響を受けている地域の一つです。

日本赤十字社(以下、日赤)は2010年から、南部アフリカ地域での感染症対策を強化するため、特に支援ニーズが高いナミビアやレソト、スワジランド、マラウイの4カ国で、国際赤十字・赤新月社連盟を通じた事業を実施しています。

日赤はこの事業の定期的な進捗確認を行っており、今回は国際保健の専門家である、日赤和歌山医療センターの大津医師と本社国際部の上田職員がナミビアを訪問しました。

高いHIV感染率

ナミビアは日本の2倍以上の面積を持ち、人口226万人。人口密度は1平方キロメートルあたり2人の広大な国です。日本ではナミブ砂漠が有名です。かつてはドイツの植民地とされ、国民には白人系も多く見られます。南部アフリカ地域ではボツワナ、南アフリカに次いで高い経済力を持ち、教育レベルも比較的高い国です。

国内のHIV感染率は14%程度ですが、日赤が支援するナミビア西部のザンベジ地域ではなんと33.7%()!国内で最も感染率が高い地域です。アンゴラ、ザンビア、ジンバブエ、ボツワナと国境を接しており、人の往来が激しいなどの地理的な要因も影響しています。

※赤十字・赤新月社連盟南部アフリカ地域事務所の報告書による。

小学校支援~「子どもたちの笑顔が増えました」

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ムルンバ小学校の子どもたち。日本人の訪問に、笑顔であいさつ

事業ではザンベジ地域の3つの小学校のHIV感染児童やエイズ孤児、貧困世帯の子どもたちへの支援を行っています。

その一つ、ムルンバ小学校は生徒508人のうち、把握しているだけで79人がHIVに感染しており、貧困などで支援が必要と判断された子どもたちは288人に上ります。

事業では2014年、制服と文房具を提供しました。

アグネス校長は「制服のおかげで子どもたちはほかの子どもと変わらない身なりで通学でき、笑顔が増えました。日赤の支援が子どもたちの後押しとなっています」と話していました。

住居建設支援~「将来は警官か教師になりたい」

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事業で建設された住居の前で誇らしげなニャンベくん

住居建設支援を受けたのはムルンバ小学校に通っていたニャンベくん(15歳)です。母子家庭で育ちました。小学生の頃、母は低身長で痩せこけていた彼の世話をせず、生活が苦しいため、手放すことすら考えていたそうです。

心配した教師がニャンベくんと母親にHIV検査を勧めたところ、二人とも陽性であることが判明しました。

その後抗HIV薬を服用して、ニャンベくんも母親も回復。今は体重も増え、とても元気です。

自分の居場所を持ち、自信を持って生活できるように、2014年の支援対象として選定されました。同じ敷地内には親戚も居住しており、新しい大きな部屋はいとことシェアしているそうです。

現在は中学生のニャンベくん。物理が好きで、成績優秀、将来は警察官か教師になりたいと夢を語ってくれました。

「娘には看護師になってほしいです」

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家の中を見せてくれるベティさん。きれいに清掃され、カーテンで部屋を仕切る工夫も

2年前に住居建設支援を受けたベティさん(51歳)は同じ敷地内に住む、子ども11人と孫10人の面倒を見ています。

夫に先立たれ、メイズ(とうもろこし)栽培や、政府から支給されるわずかな子ども手当でなんとか生計を立てているそうです。

リセロ小学校に通っていた娘が支援対象となり、住居が建設されていた時に、自分が住む家が崩れてしまい、今は娘たちと部屋をシェアしています。

この地域の住居は、子ども部屋や台所など、目的ごとに小屋を点在させるスタイル。昔ながらのかやぶきや土壁が多く、雨風の影響から数年で壊れてしまうことも多いのです。

「この支援がなかったらホームレスになるところでした」と話すベティさん。「娘には勉強をして看護師になってほしい。今後畑を大きくし、作物を売って生活を安定させたい」と希望を話してくれました。

HIV感染者への包括的支援

2012年以来の訪問となった大津医師は「前回よりも町の雰囲気がとても明るく、活気にあふれています。HIV感染率は今も高いですが、さまざまな支援のおかげで、感染者の置かれている状況は明らかに改善しています」と事業地の変化を喜びます。

新規感染者数は減少傾向にあり、南部アフリカ地域でも、継続的な服薬で、感染しても非感染者と同じような生活ができるようになったHIV/AIDS。これまでの予防、治療に特化した支援から、生計向上や貧困削減といった包括的なアプローチへと、支援形態も変わりつつあります。日赤は南部アフリカ地域の赤十字社と協力し、今後も支援を継続します。

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