住民に確かな手応え~ネパール・コミュニティー防災事業成果報告

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「今までより安心して暮らせますか?」との問いに笑顔で
答えるウダヤプール郡の住民ら

空気の澄み切った冬は、美しいヒマラヤの山々が一層際立つ自然豊かな国、ネパール。全土に山脈が連なり、雄大な河川が流れます。

しかし、豊かな自然ゆえに、ネパールは世界で最も災害にぜい弱な国の一つです。

今年の8月にも大雨に見舞われ、洪水と土砂崩れのため、約450人が亡くなり(行方不明者も含む)、約3万7000世帯が被災しました。

また首都のカトマンズ市では地震の発生が危惧されており、ひとたび大地震が起きれば死者が10万人に上ると試算されています。

そのようなネパールで日本赤十字社(以下、日赤)は2012年から、「住民主体で地域の防災力向上を目指す事業」を実施してきました。事業開始から2年が経ち、住民の生活に大きな変化が現れています。

災害に負けないコミュニティーづくり

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私たち一人ひとりにとって「災害」とは何でしょうか?災害は地震や洪水そのものを指すと考えられがちですが、正確にはこれら外力によってもたらされる被害のことを指します。

被害は個人や社会の防災力を高めることで少なくすることができます。また災害とは、自然災害だけを指すとは限りません。

日赤が実施している事業では、自然災害だけでなく、劣悪な衛生環境によって引き起こされる病気や、貧困によって最低限の生活が保障できないことなども災害リスクを生み出す外力としてとらえ、さまざまな要素からコミュニティーの防災力を高めることを目指しています。

そのため、活動内容は地域のリスクを調べ、護岸工事などの防災インフラを作ること、災害に備えて救援物資や被災した家族に配分するための資金を備蓄すること、救急法や被災者救助などの知識を習得すること、保健衛生についての知識を身につけて衛生環境を改善することなど多岐にわたります。

強まるコミュニティーのきずな

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コミュニティーの活動内容について発表する災害対策委員会のメンバー

こうした多様な活動を担うのは、各コミュニティーに設立された住民組織である災害対策員会のメンバーです。メンバーは地域の代表者で構成され、住民との話し合いのもとで、活動方針を決め、住民の活動への参加を促し、地域行政への働きかけなども行います。

グルミー郡パウワフルワリ村の災害対策員会の副会長であるクリシュナ・チャンドラ・アヤールさんは、次のように語ります。

「この事業を通して私たち住民は、防災に関する知識を身につけました。護岸工事などの物理的支援も重要ですが、私たち住民の意識が変わったことが最大の成果です」

住民が自分たちで作り上げた『住民主体』の事業であるからこそ、住民自身に強い責任感が芽生え、大きな変化を生み出しています。

私がいのちを守ります!

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救急法を実演するウマ・カナルさん(写真右)

主要活動の一つに、救急法や災害救護などの住民自身が知識と技術を習得できる研修があります。

救急法研修を受講したウダヤプール郡リンパタール村のウマ・カナールさんは、救急法を用いて人を救うことができた経験を話してくれました。

「のどに物を詰まらせた子どもがいた時、その子を助けることができました。災害が起きても住民のいのちを救いたいです」

手を洗えば病気を防げるよ!

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石けんで手を洗うグルミー郡の男の子

衛生教育も大きな成果を挙げています。教材に絵を用いて、トイレの使用や石けんでの手洗い、調理環境を衛生的に保つことなどを啓発しています。

その結果、すべてのコミュニティーで下痢にかかる人の数が減ったことが確認できたほか、食器を乾かす棚を作製したり、ごみ箱を村内に設置したりするなど、衛生に対する行動に変化が見られました。

「さっき、死んだ鶏を触ったから石けんで手を洗うんだよ」。グルミー郡で出会った男の子が笑顔で話してくれました。

いのちを守る蛇籠(じゃかご)の堤防

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災害対策委員会のリーダーである
ビシュヌさん

ネパールを流れる最大級の川の一つ、ナラヤニ川沿いのコミュニティーであるチトワン郡マンガルプール村は、毎年洪水の被害に見舞われていました。

しかし、今年は本事業の一環として、石と網で作られた蛇籠(じゃかご)(※)の堤防が村を洪水から守りました。

「今年の8月には、堤防の最上段まで水面が上昇するほどの大雨に見舞われましたが、この堤防のおかげで村に被害は出ませんでした」。

災害対策委員会のリーダーであるビシュヌ・バードゥル・シュレスタさんは、活動の成果に胸を張ります。

「以前よりずっと安心して生活できます」と、チトワン郡の女性たちも声を揃えました。

※鉄線などを用いて編んだかごに石を詰めたもの

子どもたちの安全を守る地震に強い学校

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これから新しい校舎で勉強する子どもたちと校長のケダル・プラサド・マンダールさん(写真中央)

ウダヤプール郡リンパタール村には、近隣地域から約520人の生徒が通う学校がありますが、その建物は今後起こりうる地震や土砂崩れに耐え得るものではありませんでした。

そこで住民からの強い希望により、地震に強い校舎の建設が事業の一環として始められました。

校長のケダル・プラサド・マンダールさんは、生徒たちの変化に気付いています。

「生徒たちは防災・衛生に関する啓発活動に参加しており、爪を切るようになったり、清潔な衣服を着たりするようになりました。災害から身を守る方法を、積極的に学ぶ姿も見られます」

建設された校舎は来年1月に落成予定です。

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