救急法普及事業:東ティモール第3次協定事業の終了を評価

日本赤十字社(以下、日赤)は、アジア・大洋州地域の赤十字・赤新月社に対する救急法(※)普及支援として、東ティモール赤十字社(以下、東ティモール赤)が行う救急法普及事業を2004年から継続して支援しています。

同事業第3次3カ年協定に基づく支援の最終評価の概要をお届けします。

※救急法:けがや病気の応急手当など

なぜ東ティモールで救急法?

東ティモール民主共和国は、2002年に独立して以来10年余りが過ぎました。しかし、いまだに社会基盤は十分整備されておらず、各国政府、国際NGO等からの支援が必要不可欠な状況です。

日赤は、救急法普及事業として2004年から計23人の技術指導者と事業要員を派遣し、東ティモール赤の救急法指導員の指導力と技術向上に貢献してきました。また、これとは別に、国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)に要請を受けて組織強化を中心とした支援(2014年は500万円)を行っています。

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未舗装の道路と木が伐採された山々の風景

東ティモールでは人口の約75%は山岳部に居住していますが、交通インフラが未開発なため、緊急時の医療へのアクセスは非常に限定的です。

例えば、総合病院は首都ディリの国立病院1つしかなく、郊外では救急車が到着するのに3~4時間もかかります。

また、交通量の多い都市部でも道路の整備状態は劣悪で、交通事故が多発しています。

このような状況の下、けがや病気などに対して、住民が自分たちの力で対応するために救急法のニーズは非常に高いといえます。

さらに、家庭用燃料としてのまきを得るために山岳部で木々の伐採が進む反面、植林が間に合わず、また、排水システムの整備が不十分なため、土砂崩れや洪水などの水害が頻繁に発生します。このため水の事故から命をまもるための水上安全法に関する支援の要望もあります。また、遠隔地の貧困世帯では幼児らへの救急法に関する知識(幼児安全法)向上のための支援も望まれています。

マウルト集落での意見交換会

リキサ県マウルト集落(66世帯446人)は、東ティモール赤の地域防災事業が試験的に展開されている地域で、今年6月に開催された救急法基礎講習(3日間)もこの防災事業の一貫として実施されました。このほかにも同集落では、防災事業として衛生促進活動、生活支援などが行われています。

また、日本政府の「草の根・人間の安全保障無償資金協力」による防災事業への支援により、給水施設などが建設されました。こうした背景もあり、集落の住民はとても親日的で、有意義な意見交換を行うことができました。

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リキサ県マウルト集落でのインタビュー

受講者の中には、交通事故の傷病者に応急処置を施して病院に搬送するなど、講習で学んだことをすでに実践している人もいました。

救急法の必要性について質問してみると、「住民として、お互いに助け合うのは当然。必要な時に助け合って自分たちの力で問題を解決するために、救急法の知識は非常に重要です」との答えが返ってきました。

東ティモール赤の地域に根差した事業が、芽吹き始めていると実感した瞬間でした。

今後の東ティモール

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今年8月に完成した東ティモール社本社新社屋
(日赤も建設費のうち300万円を資金援助しました)

東ティモール共和国は、2002年に独立するまで、約450年間のポルトガル統治時代、24年間のインドネシア統治時代、国連暫定統治期間と自国民によらないかじ取りを長く経験しました。

「長く続いた騒乱のために、人びとは他人を信じることができにくくなっています。そうした中で、救急法を通して、自分の家族だけではなく、知らない人を助けることも学べるので、互いを信じあえるようになるのにも役立っています」と連盟の東ティモール代表は熱く語ります。

連盟は組織推進や資金醸成等のさまざまな面で、東ティモール赤を支援しています。

東ティモール赤が財政面も含めて自立するには、少なくとも今後10年はかかると見込んでおり、救急法の普及についても日赤の継続的な支援が望まれています。

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