救急法~あなたにも救える命があります~

空港で倒れた男性に心肺蘇生を行ったブリジットさん

空港で倒れた男性に心肺蘇生を行ったブリジットさん ©英国赤十字社

「それは突然の出来事でした。『誰か医者を呼んで!』という女性の叫び声が聞こえたので駆けつけると、60代の男性が床に倒れ、頭からひどく出血していたのです」

ブリジット・ベルウッドさんがその瞬間に遭遇したのは、大勢の人で賑わうロンドンの空港でした。

「周りには150人ほどがいましたが、誰もがただその人を見つめるだけで、一人も動こうとしませんでした」

このような状況は、いつでも、どこでも、そして誰にでも起こり得ることです。あなたの目の前で人が倒れている…そのような場面に居合わせたとき、「何かしたくてもどうしたらよいのか分からなかった」そんな経験はないでしょうか?

誰も動こうとしない中で、ブリジットさんはすぐに行動に出ました。「ためらいはありませんでした」と彼女は語ります。

「ちょうど、英国赤十字社の救急法講習を受けたばかりのタイミングだったんです。男性は明らかに息をしておらず、今すべきことは心肺蘇生だと、私はすぐに悟りました。そばには怯えた様子でなす術もなく息子さんが立ちすくんでいました。私は彼に、お父さんに話しかけ続けるように伝え、同時に周りの人に救急隊を呼ぶように依頼しました」。

その後、ブリジットさんが心肺蘇生を続ける中、空港スタッフがAED(自動体外式除細動器)を持って駆けつけ、男性は一命を取りとめました。

「赤十字の講習を受けたことが、大きな自信に繋がったのだと思います。助けを求める声を聞いたとき、私の中には『何もしない』という選択肢はありませんでした。それは、赤十字が私にもたらした大きな変化といえます」

誰もが、誰かの命を救うことができる

事故現場に遭遇する可能性も

事故現場に遭遇する可能性も ©IFRC

ブリジットさんが行った「心肺蘇生」とは、突然心臓の動きが止まったり、呼吸ができない状態に陥った人に対して行う応急手当のことです。

心肺停止状態になると、体内の血液の流れや酸素の運搬が止まるため、手当の遅れは生存率の低下に直結するといえます。

日常には、思わぬところにさまざまな危険が潜んでいます。家族が突然発作に見舞われるかもしれません。事故現場でけが人に遭遇することもあるでしょう。災害時にはこのようなリスクが急増する上、混乱した状況の下、救急車は普段のようには駆けつけられません。一分一秒を争う中で求められるのは、迅速で適切な対応です。

いざというとき、周りにいる人がすぐに手当てすれば、救われる命があること。ブリジットさんの勇気ある行動は、私たちに教えてくれています。

実は、緊急時に救われる命の9割は、周囲の人の手当によるものだといわれています。行動を起こすためには、まずは正しい知識を身につける必要があります。だからこそ赤十字は、過去100年間にわたり、世界各国で救急法の普及活動を続けてきました。

現在、世界では、年間およそ1400万人が赤十字の救急法講習を受講しています。私たちは今、2020年までに、人命救助の技術を持つ人の数を2億人まで増やすことを目指しています。一人でも多くの救える命を救うために。そしてそれは、あなたにも始められる一歩です。

世界で増え続ける交通事故
~国際赤十字連盟と世界自動車連盟が協力協定を締結~

世界で年々増加する交通事故

世界で年々増加する交通事故 ©IFRC

私たちの身近にあるけがなどの危険性のうち、最大のものの一つに交通事故が挙げられます。

世界保健機構によると、交通事故は、心疾患や糖尿病、HIV・エイズなどの疾病と並び、世界の死因上位10位に入っています。

交通事故は日常生活の一部であるとともに、人びとの命や暮らしを一瞬にして破壊する「人為的災害」といえます。

近年、日本では交通事故による死傷者数は減少傾向にありますが、世界では増加の一途をたどっており、年間およそ130万人、一日に約3000人が命を落としています。

国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)は、2014年2月、国際自動車連盟(FIA)と協力協定を結びました。

連盟は過去20年間、交通安全を推進する活動に取り組んでおり、FIAと協力することで、事故後の対応や犠牲者への長期的な支援を強化することを目指します。日本国内でも、この協定を機に、日本赤十字社(以下、日赤)と日本自動車連盟(JAF)の連携強化が始まりました。

明日9月13日は、「世界救急法の日(ワールド・ファースト・エイド・デー)※」です。毎年この日には、全世界の赤十字がさまざまなイベントを開催し、事故予防のための知識や救急法の普及に努めています。日赤も、全国各地で救急に関するイベントを開催中です。いざというとき、あなたの行動により、救われる命があります。その一歩を踏み出すために、救急法を学んでみませんか。

※救急法の重要性を訴えるために、赤十字は2000年に毎年9月の第2土曜日を「世界救急法の日」と定め、世界各地で普及のためのイベントを行っています。

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