ハイチ大地震被災者支援:保健ボランティアが守る地域の健康

研修修了証書を掲げるボランティア。2011年9月から2014年6月の間に、ボランティアによる家庭訪問は6万4069回、住民集会は1万5115回行われました

研修修了証書を掲げるボランティア。2011年9月から2014年6月の間に、ボランティアによる家庭訪問は6万4069回、住民集会は1万5115回行われました

2010年1月12日にマグニチュード7.0の大地震に襲われたハイチ共和国。

この大地震によって約21万7000人の命が失われ、2014年1月の時点でもなお14万6000人が271カ所の避難民キャンプで生活しています。

発災後、仮設診療や巡回診療を展開した日本赤十字社は、2010年7月から保健と給水・衛生に関する事業に着手しました。住民のいのちと健康を守るための事業「CBHFA(Community Based Health and First Aid)」です。

4年以上経過した現在も、震源地に近いレオガン市の3万9903人(1万67世帯)を対象に続けられています。

活動の中心は、保健ボランティアの育成です。赤十字について学んだ後、「疾病対策」「母子保健」「救急法」「感染症」「緊急時の保健/給水・衛生への対応」「地域での保健・衛生促進」などを研修で学びます。4年間で581人が登録され、一人ひとりが近隣の10~15世帯の専属保健ボランティアとして、戸別訪問や住民集会などの活動を展開。研修で習った健康についての情報を、分かりやすく広めています。

ボランティアを通じて住民自ら健康問題に関心を持って健康を維持できるようにすることが、この事業の目標です。

CBHFAがスタートして4年。赤十字が育成したボランティアによる保健知識や技術の普及、そして問題解決に向けた自発的で創造的な活動の展開により、人びとの意識に変化が生まれはじめています。

ボランティアは健康のキーパーソン

マラリアなどを防ぐための蚊帳の使用率はボランティアの指導の結果、平均82.3%に

マラリアなどを防ぐための蚊帳の使用率はボランティアの指導の結果、平均82.3%に

ネプリという集落では地域活動の際、4人のHIV感染が明らかになりました。

HIV陽性者に対する根強い偏見を懸念したボランティアは、地域の人びとがHIV/エイズに関する正しい情報に基づき感染予防を行うとともに、HIV陽性者を差別しないように、HIVキャンペーンや住民集会を実施しました。

彼らが社会から疎外されずに適切な治療を受けられるようにすることが大切です。

メリアという集落では、早期発見を促すボランティアの熱心な取り組みが実を結び、14人がHIV検査を受けました。ボランティアの1人は「検査を受けた人たちのフォローを続けていきます」と意欲を示します。

カーニバルが繰り広げられる季節は、飲酒に関連した無防備な性行為や過激な行動が増加します。そこで、薬物中毒、HIVなどの性感染症、望まない妊娠を防ぐ重要性、そして、応急処置に関する勉強会を事前に開催しました。

また、今回初めて、救護所をカーニバルの中心部に開設。夜7時から早朝5時まで、けんかやオートバイの事故などでけがをした人に手当てを施したり、医療施設へ搬送しました。対応したケースは10件程でしたが、ボランティアに対する地域からの信頼度を上げる活動となりました。

子どもたちにも衛生教育を。紙芝居を作って、子どもたちが健康管理や衛生の知識を普及

子どもたちにも衛生教育を。紙芝居を作って、子どもたちが健康管理や衛生の知識を普及

また、2014年4月ごろからは、中米・カリブ諸国でチクングニア熱という蚊を媒体とする感染症が流行。

ハイチでも多くの人が感染しましたが、ボランティアの素早い対応で、感染経路、症状、治療方法、予防方法についての情報を住民に周知することに成功。“ボランティアは健康のキーパーソン”という認識が根付きつつあります。

ボランティアから得た情報を家族や友人に伝えていく傾向もみられ、波及効果が期待されています。「以前は病気を怖いと思っていましたが、今は心構えもでき、清潔に保つ方法を教わったので、あまり不安に感じなくなりました」と住民の一人は語ります。

衛生環境改善の先頭に立つボランティア

ハイチ社会にとってごみによる環境悪化は深刻な問題です。いたるところに散乱するごみ。人びとが当たり前のようにごみをポイ捨てするからです。ボランティアだけでは太刀打ちできません。

そこで、集落のリーダーを巻き込んで住民参加を呼びかけたり、女性グループと協力して地域清掃を行っています。またマラリアやデング熱を媒介する蚊の発生を予防するための清掃活動もボランティアが率先して企画しています。

汚物処理も以前は大きな問題で、活動地域のほとんどの家庭にトイレがないために、集落のいたるところで汚物が見られました。今回の事業でトイレを3065棟設置。元々トイレを使う習慣がなかったため、衛生教育に大変な時間と労力が必要でしたが、今では以前のような汚物は見られなくなりました。

求められる根気強い対応

川で洗濯中の住民に安全な水について話しをするボランティア

川で洗濯中の住民に安全な水について話しをするボランティア

ハイチでは震災後の2010年秋から全土にコレラ感染が広がり、これまでに数千人が亡くなる深刻な事態となっています。ボランティアによる活動の成果で、活動地域からコレラの流行は一旦なくなっています。

また、安全な水の使用を促す宣伝活動の結果、住民の約92%から「水処理を実施する」との回答(2013年中間調査)を得ることができています。

しかし依然として川の水をそのまま飲料水にしている人や、「コレラはもうなくなりました。だから川の水には問題がありません」と発言する人も。

そうした時は、ボランティアが集まって今後の対応を話し合い、戦略を立てます。疾病予防についての情報を知ってもらい、適切な衛生行動をとってもらうために、ボランティアの根気強い活動が欠かせません。

赤十字は保健・衛生の研修の機会を提供する中で、ハイチ人の熱心な姿勢や対応能力の向上に励まされてきました。2014年12月のCBHFA事業終了に向けて、対象者の知識と行動の変化、そして、この事業によるハイチ社会への貢献を把握するため、最終調査を本年9月から10月にかけて実施する予定です。

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