ケニアで「愛ホップ」~日赤の支援で実を結ぶ地域保健事業

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ガルバチューラ県の事業地までは、首都ナイロビから車で9時間の道のり

日本赤十字社(以下、日赤)はケニア赤十字社と協力して、2007年から病気予防や保健医療施設の機能強化を目的にした、地域保健強化事業「IHOP:Integrated Health Outreach Project(別称「愛ホップ」)」に取り組んでいます。

事業地は2月でも40度近い気温になる、ケニア北東部のガルバチューラ県。このたび、国際部の上田職員が現地での活動進捗行状況を調査しました。最新の様子をお伝えします。

川底を掘って水をやっと確保!

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少ない水でも飼育しやすく、高額(1頭10~15万円)で売買されるラクダは大切な財産

ガルバチューラ県は乾燥、もしくは半乾燥地帯に位置し、2月は乾季の真っ最中。特にセリチョー地区は水不足が深刻で、干上がった川底を数メートルも掘って、やっと水を確保できるという状態です。

住民が1日1ドル(約103円)未満で暮らす中、水くみ業者が川底を掘って販売する水は、通常20リットル2円。乾季には10倍の20円に跳ね上がります。

住民の多くはラクダ、牛、ヤギ、ロバなど、家畜の飼育、売買で生計を立てており、牧草を求めて転々とする遊牧生活を送っています。

住民の生活に生かされるボランティアによる講習

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講習で母乳育児、衛生、下痢予防などについて熱心に話す看護師の男性

ガルバチューラ県モドガシェ村で行われたIHOPの健康教育では、保健省の研修を受けた赤十字ボランティアが健康の促進と病気の予防などについて、住民に講習を行っています。

この村では講師に村の診療所の看護師を迎えたり、視覚教材を使ったり、また参加者と対話形式で進めたりと、住民が楽しく健康についての大切な知識を身に付けられるように、工夫を凝らしています。

講習に参加したある男性は「母乳の栄養が重要なことを知って、家に帰ってから妻に話しました。出産を終えたばかりの妻が栄養を取れているかも、気にかけています」と、講習内容を日常生活に生かしている様子を語ります。

今回の調査では、以下の点を確認しました。

  1. ボランティアが担う健康教育では、より専門的知識を持つ看護師などの協力が必要
  2. 参加者が講習に集中できるような時間配分を行う
  3. 参加者のニーズに合ったテーマを選択する

ボランティアによって講習の質が変わらないようにするための訓練や指導も必要で、今後これらを改善していく予定です。

月1回の巡回診療が村人に安心感を

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処方箋を確認する薬剤師(手前)

IHOPでは、近隣に医療施設のない7村を対象にした巡回診療を毎月実施しています。

普段は県立病院で働く医療スタッフやボランティアの栄養士、記録係などが泊りがけで村々を回り、住民の診察やワクチン接種、薬剤指導などを行います。

最寄りの医療施設まで50キロメートルと、医療サービスへのアクセスが最も悪いエスコット村(168世帯)での巡回診療では、5歳以下の子ども27人を含む101人が受診しました。

ある女性は「巡回診療は毎月行われていて、チームがやって来る日を村中が知っています。子どもへのワクチン接種の大切さを教わって、すぐに受けさせました」と語ります。

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日赤がケニアに派遣している五十嵐真希要員と談笑するエスコット村の女性(左)
「私は出産時に貧血症状があったのですが、IHOP事業の車で県立病院に搬送されて、この子を無事に出産しました!」

ケニアでは保健や教育の制度が十分に行き渡っておらず、ワクチンに対する誤解や栄養についての知識が不足しているのが現実です。

このため、診察や予防接種だけでなく、栄養指導や衛生についての啓発活動も、巡回診療の大切な役割になっています。

最近、エスコット村に住民が長年切望していた診療所が、政府によって建設されました。

診療所があれば、病気になった時に遠く離れた病院へ行くことも、月一回の巡回診療を待つ必要もありません。

ところが村を訪れてみると、資機材や人員が保健省から配置されておらず、診療所は稼動していません。住民は1日も早く診療所が開くことを、地元の行政機関に依頼しています。

未来を担う子どもたちのいのちを支える「愛ホップ」

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巡回診療のスタッフから話を聞く上田職員(左)と佐野要員

昨年11月からIHOP事業担当としてケニアで活動する佐野友妃子要員は、今回の調査を終えてこう語ります。

「公的な医療保健サービスが届かない地域への赤十字の支援は、村人の健康維持だけでなく、未来のケニアを担う子どもたちのいのちにもつながっています」

IHOPの活動はケニアの人びとの健康意識の向上に、確実に貢献しています。しかし、この国の自立発展のためには、日赤の支援による活動をケニア保健省に引き継いでいくことが重要です。

今後、行政との連携をさらに強化できるように、日赤もサポートしていきます。