災害時の国際支援の受け入れに「基本方針」を

国内で大規模な災害が発生した際に、海外からの支援を有効活用し、また国際的な基準を踏まえてより効果的な被災者支援を行うにはどうすればよいか。

このような観点から改善策をまとめた「提言」が3月7日、東京・渋谷の日赤十字看護大学で開催されたパブリックセミナーで発表されました。

日本赤十字国際人道研究センター 東浦洋センター長

この提言は、政府・民間の国際人道支援や災害対策に携わる実務者有志でつくる「東日本大震災と国際人道支援研究会」が、東日本大震災から3年を前にまとめたものです。

セミナーで提言を発表した同研究会の東浦洋座長は、「東日本大震災では100カ国以上から救助活動や物資などの支援が寄せられましたが、受け入れのための具体的な基準や、被災自治体などとの調整の枠組みが事前に十分整理されていなかったために混乱しました」と指摘。

こうした経験を踏まえて、国際支援の受け入れに関する「基本方針」を災害が起きる前から政府が明確にすることを提起しました。

同研究会のメンバーで元外務省緊急・人道支援課長の一橋大学河原節子教授は、「阪神・淡路大震災の経験から受け入れ体制の改善はあったので、過去の経験は生きました。しかし今回の経験から、さらなる詳細を定める必要があることが分かりました」と話しました。具体的には、国の総合災害対応機関が一元的に意思決定を行い、支援の受け入れに責任を持つ体制を整備することを求めています。

東浦座長は「次の災害に備えるという意味でも、日本政府として基本方針を明確化し、法律面での整備や支援受け入れの手順書の作成などを進めていく必要があります」と強調しました。

阪神・淡路大震災時に国連アジア・パシフィックオフィサーを務めた経験を持つ、水資源機構の西川智理事は、パネリストとして参加し「被災地のニーズに合ったものであることが重要。しかし、発災直後に正確なニーズを即座に把握することは難しいので、市町村で災害が発生した際に受け入れ可能な物品リスト(ポジティブリスト)を、事前に作成することも大切です」と話しました。

国際的な基準を踏まえた日本の支援基準を

ダンボールで仕切られただけでプライバシーのない避難所生活や、悪臭を放つ仮設トイレなど、東日本大震災では被災者の尊厳が損なわれかねない多くの状況がありました。

パネリストの一人であるジャパンプラットフォームの長有紀枝理事は、当時を振り返り「段差があるために障がいのある方が避難所に入れないなどの問題を、新聞でも取り上げていました。また女性用下着を男性の自治体職員が配布するといった、性別や障がいに対する配慮の欠如といった課題は、途上国だけの問題ではありません」と話しました。

その他にも配給される食糧の内容や提供方法、プライバシー確保や安全面での懸念などが指摘されています。

そうした認識の上で「提言」は、「国際的に確立している支援基準(※)を踏まえた、日本としての統一的な災害対応の最低基準の策定」についても提起。地域防災計画にこの最低基準を普及・適用していくために、地方向けガイドラインを作成していくことなどを求めています。

※主に途上国を対象にした緊急人道支援の経験から策定されたもの。国際赤十字も関わってつくられた「スフィア・スタンダード」は、「被災者の援助を受ける権利」をうたうとともに、避難所での給水やトイレの設置基準、子どもや女性、高齢者など弱者への配慮などを盛り込んでいます。

支援全体の総合調整や人材育成、NGOなどとの連携体制の整備も急務

「提言」は、支援活動に携わるNGO・NPOなどの相互の連携や調整の必要性、災害対応や被災者支援に関わる人材の確保と育成についても述べています。

東日本大震災で明らかになった課題については、「支援団体全体の活動を把握・調整し、情報共有する機能がない」「災害対応・被災者支援の専門家の所在が一元的に管理されていない」「専門家が育ちにくい人事制度」などを列挙。

その上で、国による調整の枠組みの設計やNGO・NPOの役割の明確化、人材育成機能の一元化と全国統一されたカリキュラムの策定などを提起しました。

東浦座長は「国内外の枠組みを超え、国内災害対応に携わる人材と国際的に活動する人材の交流を促進し、相互の経験から学ぶ仕組みを構築する必要がある」としています。

国連人道問題調整事務所(OCHA)神戸事務所の渡部正樹所長は「今回の提言を踏まえて、日本政府、赤十字、民間団体関係者などとの連携をさらに深めていきたい」としています。また「来年には第3回国連防災世界会議が仙台で予定されており、東日本大震災の教訓を国際社会と共有していくこともとても重要だと考えています」と話しました。

提言書は以下を参照ください。

「東日本大震災と国際人道支援研究会」提言書