救急法普及支援事業:東ティモール・カンボジア

日本赤十字社は、もしもの時に身近な人のいのちと健康を守れるように、アジア・大洋州地域で救急法の普及を行っています。

紛争やぜい弱な社会基盤のため、公共医療サービスが十分に整備されていない国では、人びとが病気や事故で命を落とすことが少なくありません。

今回は、東ティモールとカンボジアに救急法の指導員等を派遣しました。その様子をご紹介します。

東ティモール:独立以降増加した交通事故

21世紀に独立した国、東ティモール共和国。独立から12年目を迎える同国は、有機栽培したコーヒーの輸出と天然資源により徐々に経済成長を遂げ、道路交通量が爆発的に増えました。その一方で、交通インフラの整備が追い付かず、交通事故が絶えません。

事故が起きてから救急隊が到着するまで都心部で30~40分、郊外では3~4時間もの時間がかかることから、一般市民の手でいのちを守ることのできる救急法の普及が重要な課題となっています。

日赤はこうした背景から、独立間もない2004年から東ティモール赤十字社の救急法普及活動を支援してきました。財政的な支援と並行して、日赤の救急法指導員を現地に派遣して技術面での支援も展開しています。

2014年2月中旬には3人の指導員を派遣し、地元救急法指導員への技術支援研修を開催しました。

地元の指導員たちの真剣な思いに触れた3日間

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研修には東ティモール国内のすべての州から、職員とボランティア合わせて20人が集まり、日赤指導員の話に真剣に耳を傾けました。

3日間にわたる研修では、三角巾やマネキンを使った救命手当・応急手当の技術的な講義から、同社が自分たちの力で人材を育成するためのノウハウの伝授が行われました。

また、交通事故の多い東ティモールならではの、実際の車やバイクを用いた実技演習も行われました。

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参加者の中で最年少のマリアノさん(27歳)は、「日本の指導員が見せてくれた包帯法は洗練されていて、まさに職人技。この3日間の研修で学んだことを、一つでも多く自分たちが行う救急法普及の活動に役立てたい」。

休み時間を削って、日赤の指導員たちに質問を投げかける姿が印象的でした。

マリアノさんは、国内のNGOや民間企業に対して有料で救急法講習会を実施する担当者でもあり、講習を通じて安定的に活動資金を確保することを目指しています。

今回の研修を通して彼が学んだこと、気づいたことは、東ティモール赤十字社の自立を促し、ひいては救急法の知識を必要とする一般市民に対して安定したプログラムを提供するための礎になります。

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カンボジア:活動の実りが実感された中間評価

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同じ時期にカンボジアにも2人の職員を派遣しました。

日赤は2008年以来、カンボジア赤十字社に対しても救急法の普及支援を続けてきました。

今回の派遣では事業の中間評価が行われ、救急法事業担当者や救急法講習会を実施する赤十字ボランティア、講習会に参加した住民との意見交換の場が設けられました。

参加したボランティアからは、「救急法を通じて住民やコミュニティに貢献できてうれしい」と活動を担うことへの誇りが語られました。また住民からも、「日常生活で発生する怪我や事故に役立つ知識と技術を習得できて、大変助かっている。これからも定期的に講習を実施してほしい」と活動を評価する声が聞かれました。

カンボジアでも先に紹介した有料講習会を、現地のNGOや工場の関係者に対して実施しています。2012年にはその収入から、事業担当者と救急法インストラクターの計2人の人件費をまかなえるようになり、継続的に講習を行うことができるようになりました。これは、カンボジア赤十字社が、自立して活動に取り組む第一歩と言えるでしょう。

今回派遣した指導員たちは、「発展する国の中で重要な役割を担う指導員の育成に携われて、有意義だった」「やる気に満ち溢れている現地の指導員らが、これまでの支援を通して得た知識や技術を、引き続き地域住民のために活用できるようにサポートしていきたい」と語り、日赤の支援が両国の人びとに根づいてきたことを実感して帰国しました。

日本赤十字社は今後も、海外の赤十字・赤新月社を通じて救急法の普及を支援していきます。

いのちと健康を守る方法を伝える ~日本赤十字社の救急法等の講習について~

日本赤十字社は、「苦しんでいる人を救いたいという思いを結集し、いかなる状況下でも、人間のいのちと健康、尊厳を守る」という使命にもとづき、「救急法」「水上安全法」「雪上安全法」「幼児安全法」および「健康生活支援講習」の5種類の講習を行っています。

これらの講習を通して、とっさの事故や災害時に市民一人ひとりがいのちと健康を守る担い手となれるように、必要な技術と知識を普及しています。