ハイチ大地震被災者支援:「世界エイズデー」

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住民と話をしながら、健康に関する悩みを聞いて保健についての情報を提供します

2010年1月に大地震に見舞われたハイチ共和国。死者21万7300人、負傷者30万600人にも上る大災害から、まもなく4年が経過しようとしています。

日本赤十字社(以下、日赤)は緊急医療チームを派遣して地震でけがをした人や体調の優れない人を診療し、同年7月からはハイチ赤十字社(以下、ハイチ赤)と国際赤十字・赤新月社連盟と協力して、地域住民が健やかに過ごせるように保健事業を展開。

健康に対する不安を取り除き、住民一人ひとりが、母子保健、感染症予防、疾病対策など健康に関わる知識を身につけて、健康改善に取り組んでいます。

HIV(ヒト免疫不全ウィルス)の感染予防もその一つです。

12月1日の「世界エイズデー」に合わせて、ハイチでも4日間のHIV/AIDS啓発キャンペーンを開催しました。今年のキャンペーンテーマは、“HIV/AIDSに対する差別や偏見の撲滅”です。

ハイチのHIV事情と意識

国連児童基金(UNICEF)によると、成人のHIV感染率が1.8%と世界的でも上位に位置するハイチ。日赤による支援事業の中間調査では、99.8%の人がAIDSという言葉を知っている一方で、誤った認識を持っていることも明らかになりました。

約7割の人が、「妊娠、出産、授乳の際にHIVに感染するリスクがある(母子感染)」、「感染していない特定のパートナーとの性交渉に限定することで、感染のリスクを減らせる」ことを理解しています。しかし、蚊によるHIV感染(37%)や魔術や霊的なものによる感染(13.9%)を信じている人もまだ多くいます。

また、適切な薬の服用によってAIDSの発症を遅らせることができると知っている人は、成人の約50%にも達していません(UNAIDS/PNLS, 2013)。

誤った知識に加えて、正確な情報が行き届いていないために差別や偏見が存在するのもハイチの現状です。

先述の調査によると、HIVに感染している人からは野菜を買わないと答えた人が72.6%、HIVに感染した女性教師が教鞭をとり続けることに反対と答えた人が63.2%に上りました。また、家族がHIVに感染した場合には、家で看病はするが他の住民には隠すという傾向が強く、HIV/AIDSに対して寛容な態度で接すると答えた人はわずか12~23%に過ぎませんでした。

そして、多くの人びとが「HIV検査は受けたくありません。もしも自分が感染していると分かったら怖いから」と口をそろえて言います。そこには、差別を受けたくないという想いがうかがえます。HIV陽性者にとって、感染の事実を公表しながら差別なく社会経済に参加することは非常に難しいのです。

「アバ スティグマタイディション!アバ ディスクリミナション!(偏見、差別をしない!)」

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スローガンを掲げる日赤の看護師と住民とともにHIV/AIDSについて質問を投げかける赤十字スタッフ

街頭宣伝車の大きなスピーカーから「HIV/AIDSへの偏見、差別をやめよう」というテーマソングを流し、赤十字スタッフがメッセージをマイクで伝えます。

ドライバーやアシスタントも、メロディにのせてメッセージを軽妙に歌います。

2時間ほどかけて一つの地域を隅まで回り、手作りのチラシを配って一人ひとりにメッセージを説明しました。

この大音量のテーマソングとメッセージは、普段は集会などに参加しない人びとの耳にも届き、街頭宣伝車に近寄ってくる人までいたほどです。

人びとが集まったら小さな集会を開きます。地域住民からは、「HIV陽性者と一緒のベンチに座ったらうつるんでしょ?」「食事は一緒にしたくない。近くで一緒に歩きたくない。うつるから」「エイズの人は1人で生活すればいい。1人で生活してくれれば感染が広がらないで済む」などの偏見が聞こえてきました。

誤った情報からさらに偏見や差別が助長され、「HIV陽性者は危険人物。見分けがつくように頭にシールを貼ればいいじゃないか!」と言う住民さえいました。

感染経路を知って正しい予防方法を学び、HIVへの理解を

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メッセージの書かれた手作りのチラシ(左)と赤十字が作成したパンフレット(右)

このキャンペーンをとおして赤十字スタッフは、懸命にHIV/AIDSについての正しい知識を伝えようとしています。

「一緒に食事もできるし、カードゲームもできます。まずは自分が感染しないこと、そして人にも感染させないこと、そのために検査を受けましょう。ハイチでは無料で検査や医療サービスが受けられます。感染した際には治療も受けられます」

赤十字スタッフが配ったチラシを手にした住民は、足を止めてじっくりと読んでいました。農作業中の男性も「じゃあ、食事は一緒にしても大丈夫なんだね」とスタッフの話に耳を傾けました。

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農作業の手を止めてチラシを読み、赤十字スタッフに質問をする男性たち

赤十字スタッフは継続的な活動を約束し、「今後も集会を開くので、この地域のボランティアに話を聞いてください」と伝えました。

HIV/AIDSへの差別や偏見に対する意識や態度を変えるためには、このキャンペーンだけでは不十分です。

日赤は今後もハイチ赤十字社や国際赤十字・赤新月社連盟と協力して、保健事業をとおしてHIV/AIDSに関する正しい情報を広め、感染の予防とHIV陽性者の支援に取り組んでいきます。