ハイチ大地震被災者支援:母子保健活動で子どもをサポート

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赤ちゃんを沐浴させているお母さんをボランティアが訪問

2010年にハイチ共和国を襲った大地震では、約21万7300人が命を落とし、負傷者は30万600人に上りました。

日本赤十字社は発災直後から医療チームを派遣し、半年間にわたって傷病者の治療活動を展開。その後も、水と衛生環境の整備や保健の向上に取り組んできました。

いのちと健康を守るための活動は現在も続けられています。

母乳による子育てを!

日赤が震源地に近い被災地のレオガンで保健活動を開始してからすでに3年。重点的に取り組んでいるのは栄養と母乳、新生児ケア、予防接種などの母子保健です。

世界の最貧国の一つといわれるハイチでは、乳幼児の栄養失調を招きかねない子育ての習慣が根強く残っており、改善が課題となっています。それは、母親が生後6カ月に満たない乳児にも母乳ではなく離乳食を与えてしまう習慣です。中には生後1週間にも満たない新生児にまで離乳食を与える母親もいるほどです。

国連児童基金(UNICEF)によると、ハイチでは6カ月未満の乳児が母乳だけで育てられている割合はわずか41%。胃が十分に成長しておらず、歯も全く生えていない状態での離乳食は、嘔吐や下痢を引き起し、脱水症状を招く危険もあります。そこまで至らない場合であっても、離乳食からは必要な栄養が十分に取れないので、栄養失調になる可能性が高くなります。

保健事業で養成したボランティアが集まって、意見交換会を実施した時のこと。あるボランティアが「自分たちの地域は貧しくて、赤ちゃんに食事を買うことができず、栄養失調になっている」と訴えたことがあります。しかし、ハイチでは母乳を与えることができないほど、母親が栄養失調に陥るわけではありません。別のボランティアからは「お母さんがしっかり栄養を取って、母乳を赤ちゃんに与えることが大事」という意見が出されました。

この時の意見交換会では、離乳食から母乳への切り換えを進めていくために、母親に母乳の栄養価を理解してもらえるような「母乳推奨キャンペーン」や啓発活動を地道に続けていこうという方針が、ボランティアの間で確認されました。

新生児ケアや予防接種率の向上も課題

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保健省からの予防接種キャンペーン

ハイチでは低体重出生率が25%と非常に高く、低出生体重児のケアが課題になっています。また、新生児黄疸やさい帯のケアなど、新生児ケア全般に関する情報も一人ひとりの母親に行き届いていません。

さらに、乳幼児の予防接種率を上げる取り組みも重要なテーマになっています。

例えば、三種混合ワクチン(ジフテリア、破傷風、百日咳)の1回目の接種率は83%ですが、3回すべてでは59%に減少。麻疹の予防接種は1回で済むにもかかわらず接種率は59%です。

自宅出産の場合はとりわけ出生時の接種率が低く、その後も受けないままになっている乳幼児が目立ちます。

ハイチ保健省も予防接種キャンペーンを通じて、接種率の向上に努めています。赤十字も保健省に協力して赤十字ボランティアを動員。「予防接種キャンペーンには子どもを連れて行きましょう!」と地域住民を対象にした啓発活動を行っています。

しかし、キャンペーンでは時間通りに人員が集まらなかったり、日に日にボランティアが減っていくなどの問題もあります。ワクチンの接種率を上げるのは容易ではなく、地道な啓発活動を継続していくことが求められています。

やけどにヤギの糞!

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救急法講習で骨折した下腕の固定方法を学ぶ

傷病者の応急手当(救急法)の普及も、日赤の保健事業が焦点を当てている課題の一つです。

保健に関する意識と知識を調査した際、次の質問をボランティアに投げかけたことがあります。

「火傷の手当として、どのような対処法が適していますか?

①冷やす

②トマトソースを塗る

③ガソリンを塗る

④歯磨き粉を塗る

⑤ヤギの糞を砕いて塗る」

驚いたことに、「冷やす」と答えたボランティアは一人もなく、ほとんどがほか4つの回答を選びました。こうした調査結果を踏まえて、保健事業では2014年12月までにボランティアや対象地域の人びとが基本的な保健の知識を得て、適切な応急手当が行えるように取り組みを進めています。