ウガンダ母子保健事業 現地レポート

日本赤十字社はウガンダ赤十字社(以下、ウガンダ赤)と協力し、2010年1月より、安全な出産ができる環境づくりを目的に「母子保健事業」をウガンダ北部で実施しています。この度、本事業を担当する国際部上田職員が現地モニタリングを行いましたので、現場の様子をお伝えします。

2013年版ママバッグ

ママバッグの内容

ママバッグの内容

この事業では4回の産前健診を受けた妊婦がヘルスセンターで出産する際、出産に必要な物品を詰めた『ママバッグ』を配布しています。

先日、2013年版の新しいママバッグが完成し、5000セットが現地に届けられました。

セット内容にはタオル、シーツ、ビニールシート、滅菌手袋、コットン、結紮糸(けっさつし)(へその緒を結ぶ紐)、石けん、眼軟膏、かみそりが含まれています。

ママバッグを受け取った女性の声

ナンシーさん(右)と第1子

ナンシーさん(右)と第1子

ナンシーさん(20歳)は2010年の事業開始直後に出産し、最初の支援対象者となりました。

「産前健診を受診すればバッグをもらえることは、妊娠中、定期的に訪問してくれた保健ボランティアから聞いて知っていました。安全に出産したかったので、きちんと受診しました。健診には夫が付き添ってくれました」

自宅からヘルスセンターまでは約6キロメートル。徒歩で2時間ほどかかります。公共交通機関はなく、陣痛に苦しみながらヘルスセンターまで歩いたそうです。

「ママバッグをもらった時はうれしかったです。バッグがなかったら自分ですべて揃えなければならず、本当に助かりました」

ナンシーさんに話を聞く上田職員。「ハット」とよばれる北部では伝統的な家屋の脇で。

『ハット』とよばれる北部では伝統的な家屋の脇で、ナンシーさんに話を聞く上田職員

現在第2子を妊娠しているナンシーさん。この事業をきっかけに、母体の健康を守るため出産間隔をあけることを保健ボランティアから学び、実践しました。

「子どもは4人ほしいと思っていますが、夫と話し合い、間隔を3年ずつあけるつもりです」

女性の安全な妊娠、出産、家族計画を継続的に支援してきた事業の活動が着実に実を結んでいました。

保健ボランティアが支える活動

「私たちはコミュニティ保健の監視役」と話すボランティアたち

「私たちはコミュニティ保健の監視役」と話すボランティアたち

この事業は各村で活動する保健ボランティアによって支えられています。

今年度は、事業対象地域のアムル県、キトゥグム県で85人が任命されました。

多くが以前から地域保健のために活動しており、住民からの信頼も厚い人たちです。

彼らはウガンダ赤が開催する研修でより広い保健知識を身につけ、ヘルスセンターでの健診や出産、男性の付き添い、家族計画が重要であることを、村で定期的に実施する対話集会や戸別訪問を通じて周知しています。

妻の健診に付き添う男性。「安全に出産してほしいと思って一緒に来ました。」

妻の健診に付き添う男性。「安全に出産してほしいと思って一緒に来ました」

この活動のおかげで2012年の報告では女性の健診や出産に付き添う男性が45%増え、男性の意識や行動に変化が見られるようになりました。

保健局とも連携し、ワクチン接種のお知らせや、村で感染症の流行や病人を発見した場合の報告役も担います。

今回、多くの保健ボランティアと面談し、皆「私たちはコミュニティー保健の監視役です。コミュニティーとヘルスセンターをつなぐ役割を担っているのです」と力強く話してくれました。

家族計画の難しさ

2012年にママバッグを受け取ったアリスさん(35歳)。現在第8子を妊娠中で、このインタビューを通じて夫と家族計画について初めて意見を交わした。

2012年にママバッグを受け取ったアリスさん(35歳)。現在第8子を妊娠中で、このインタビューを通じて夫と家族計画について初めて意見を交わしました

この事業では安全なお産だけでなく、ボランティアを活用した出産後の家族計画もサポートしています。

現地では一般的に『女性は可能な限り出産し続けるもの』『子どもの数は多いほど良い』と信じられており、ナンシーさんのように、夫と話し合って計画的に妊娠することはまだまだ難しい状況です。

『避妊は夫への忠誠心がないこと』と見なされるため、妻が避妊していることを知ると、暴力をふるう夫もいます。

そのため、パートナーに知られずに避妊できるホルモン注射を受ける女性が大半です。

アムル県オトウェ地区のヘルスセンターの統計によると、家族計画の相談に訪れた9割以上の女性が避妊注射を選択していました。効果的な方法ですが、長期間の接種は女性の体に負担がかかります。

女性が健康を保ち、安全な妊娠、出産をするためにはカップルでの話し合いや男性の協力が不可欠です。男性が女性の産前健診や出産に付き添うようになった行動変容を、今後どのように家族計画への理解と参加につなげていけるか、保健ボランティアと協働しながら検討する必要があると考えています。

この事業は2015年12月まで継続する予定です。