平和記念式典に寄せて

今年の8月6日と9日は、68年目の広島平和記念日、長崎原爆の日です。人道支援団体である赤十字にとっても、これらの日は特別な意味を持っています。

「なぜ、日本赤十字社が?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。

実はこの一年は日本赤十字社(以下、日赤)にとって、そして国際赤十字にとって、核兵器の問題を考えるうえで大きな前進があった年でした。

その皮切りとなったのは、昨年8月9日に行われた、長崎市長の平和宣言での赤十字採択への言及でした。ここで取り上げられたのは、2011年に赤十字の国際会議で採択した「核兵器廃絶への歩み」という決議です。日赤はこの決議の共同提案社30社の一つです。

この決議は、核兵器の使用が国際人道法の定める理念とは両立しないこと、そして核兵器が使用された場合、人間のいのちや健康などに与える結果に十分に対応できる能力が、赤十字を含めて世界のどこにも存在しないこと、を挙げています。そして、この2つの理由から、国際法をどのように解釈しても、核兵器は二度と使用されるべきでないことを訴えて、その実現に向けて行動していく決意を明らかにしました。

こうした赤十字の動きに応じて、オーストリア政府などが主導したのが、昨年5月のNPT(核兵器不拡散条約)再検討会議準備委員会で16カ国が賛同した「核兵器の人道的側面に関する共同声明」でした。そこでは、まさに赤十字が主張した「核兵器がもたらす人道的な惨禍に人類は対応することができるのか」が、テーマに掲げられています。

同様の共同声明が、昨年10月の国連総会第一委員会で再度提案されたときは、賛同国が34カ国に増えました。また、今年3月には、このテーマに限定した初めての政府間会議がノルウェーで開催されました。この会議には日赤を含む国際赤十字も特別に招待され、一つでも多くの国がこの会議に参加するように、赤十字のネットワークを通じて呼びかけました。日本政府もこの会議には代表を送っています。

そして今年5月に再度開催されたNPT再検討会議準備委員会では、共同声明の賛同国はさらに80カ国にまで広がりました。今年9月の国連総会では、核兵器のテーマを議論する特別な作業部会が設置されることも決まっており、また、来年2月をめどに、前述したノルウェー会議のフォローアップ会議もメキシコで開催される予定です。

核兵器廃絶に向けた赤十字の動き

赤十字も、こうした流れを進めるために取り組んできました。

国際赤十字の関係者、そして特にこの問題に関心の高い世界24カ国の赤十字・赤新月社は、今年5月に広島に集まり、平和記念資料館を訪ねたり被ばく者の方の体験を伺って、核兵器廃絶に向けた赤十字の動きの適切さを再確認しました。

そして、今後の具体的な活動として、次の3点を含む行動計画を議論しました。

  1. 核兵器についての赤十字の立場をホームページなどに自国の言語で表明して、関連資料を掲載すること
  2. さまざまな媒体を使って、若者や一般市民に対して啓発活動を行うこと
  3. 活動の経験、資料、教材を赤十字のイントラネットを通じて共有すること

この結果は、今年11月にシドニーで開催される赤十字の国際会議で、再度決議として採択される予定です。

「核兵器廃絶への歩み」は、核兵器の戦略的な役割を低くすることを通じた軍縮・不拡散の徹底を軸にするものから、使用そのものの非合法化を目指すものまで、効果や実現性の観点からさまざまな考え方がありますが、そのゴールは一つです。

赤十字は、核兵器の人道的影響を直視して、訴えるという点から、引き続き「核兵器廃絶への歩み」に貢献していきます。