ベトナム災害対策事業 ~予防に勝る防災は無し

日本赤十字社(以下、日赤)は、アジア・大洋州地域で防災活動に重点を置いた支援を展開しています。

1997年に開始したベトナム災害対策事業は、昨年で活動開始から15年を迎え、2015年まで引き続き同事業を支援することを決定しています。

ベトナム災害対策事業の15年の成果と、現地の声を皆さまにお届けします。

『緑の壁』を築いた15年

ベトナムには、『緑の壁』と呼ばれ、地元の人びとに大切に守られているものがあります。淡水と海水が混在する汽水域一面に広がる緑豊かなマングローブ林のことです。

毎年、6~8回の台風に見舞われ、強風・高波による被害が著しいベトナム北部では、これらの被害から住民の居住地域を守る壁として、防潮効果のあるマングローブ林が重要な役割を担っています。

2013年現在、成長し、「緑の壁」となったマングローブ林は、高いもので4mを超す

ベトナムにはもともと多くのマングローブが植わっていましたが、戦争や輸出用エビの養殖池拡大などのさまざまな理由から、1980年代後半までにその面積は半減してしまいました。

『緑の壁』を再び築き人びとの命と財産を守るために、日赤は1997年から2012年までの15年間で、ベトナム赤十字社を通じて同国の沿岸部8省で、これまで1万77ヘクタール(東京ドーム2155個に相当する面積)に及ぶ土地にマングローブ/防風林を植林してきました。これまでの支援額は6億2041万円に上ります。

また、2011年からは新たに、内陸部の2省も事業地に加え、土砂崩れの危険性が高い地域での植林活動も実施しています。

ハイフォン省バングラ村の女性

マングローブを植林したハイフォン省バングラ村の女性は赤十字の事業について、笑顔で語ります。

「わたしは子育てのかたわら、毎日マングローブ林で貝やカニ・エビを捕っています。1日10キロほど取れた収穫物の泥をていねいに取って市場に持っていくことで、1日当たり200~450円の現金収入を得ることができています。

作業は大変だけれども、自分の住んでいる村のすぐ近くで安定して収入を得ることができるマングローブ林が広がっていることをうれしく思います」

マングローブ林が防災だけでなく地元住民の生計にも役立っており、マングローブ植林活動の広がりが垣間見れます。

『稲むらの火』を教訓に

災害による被害を軽減するためには植林活動だけでは、十分ではありません。地域の住民そして次世代を担う子どもたちが、防災の大切さを知って初めて植林活動を実施した効果が発揮されます。

わたしたちにその教訓を教えてくれる物語が日本にはあります。1854年の安政南海地震・津波に際して、現在の和歌山県広川町で起きた故事をもとにした『稲むらの火』という物語です。

「村の高台に住む五兵衛は、地震の揺れのあと、津波がやがて来るという知識があったため、津波の存在に気づいていない村人たちを高台に呼び寄せ避難させようと、自分の田んぼの稲の束(稲むら)に火をつけた。五兵衛が付けた火を火事と勘違いした村人たちは、消火のために高台に集まり、間一髪津波の被害を逃れることができた。村人は、五兵衛の知識と機転によって津波から守られた」という内容が示すように、災害から命を守るためには、正しい知識といざという時の行動力が重要です。

住民が主体的に身近な災害について考えるために、日頃からの防災教育は欠かすことができない活動なのです。

このような教訓に基づき、日赤は植林活動と併せてベトナムの小・中学校の教師を対象とした研修を実施。

小・中学生が防災への知識を身につけ、災害時に適切な行動を取ることができるよう、支援を続けています。

また、植林後に住民が自らの手で森林を守り育てていくことができるように、防災教育と絡めて森林の保全方法を広めることにも現在は力点を置いています。

『予防に勝る防災は無し』といわれるように、住民自身が災害を予防する意識を持ち、自分たちの住む地域を率先して守れることを目標に、日赤は赤十字の強みである草の根レベルのネットワークを生かして、2015年まで引き続きベトナムのマングローブと森林の植林・保全そして防災教育の支援を実施していきます。