チリ大地震復興支援:春の到来した現場から

チリ赤のハビエル(左)、土屋駐在員(中)、パブロ(右)

チリ赤のハビエル(左)、土屋駐在員(中)、パブロ(右)

2010年2月に発生したチリ大地震(マグニチュード8.8)は、沿岸部に住む漁師の生活に甚大な被害をもたらしました。

日本赤十字社(以下、日赤)とチリ赤十字社(以下、チリ赤)は、地震被災者のための復興事業を開始し、第1期事業として厳しい生活を続ける漁師にボートとエンジンを支援しました。

2011年12月からは第2期事業が進行中。漁師関連団体が企画・立案したプロジェクトを実現する取り組みです。

南半球に位置するチリは、3度目の厳しい冬を乗り越え、桜の春を迎えています。事業がますます活気づいている様子と、これまでの経過について現地で活動する土屋和吉駐在員からの報告です。

寄せられた78の小さな芽

評価委員会にはチリ赤十字社の幹部や漁業の専門家が参加

評価委員会にはチリ赤の幹部や漁業の専門家が参加

第2期事業で目指すのは、沿岸部の経済復興と継続的な発展です。

具体的な支援の内容は受益者となる、漁師やその家族が構成する漁業関連のグループから募集しています。2012年5月までに78案が提出されました。

このうち、目的から外れているものなどを除外して54案が残りましたが、予算の制約もあり、そのすべてを実現するのは困難です。

そこで、チリ赤内に「評価委員会」を組織して、漁民の生計再建につながるのか、漁村の発展に寄与するのか、など、一つひとつ細かに審査し、25のプロジェクトに絞り込みました。

審査結果を伝えるべく、チリ赤のスタッフと応募者の元を訪問したのは9月のこと。漁村での活動には信頼関係が欠かせません。そこでこれまで築き上げてきた関係が損なわれることがないよう、結果の良し悪しにかかわらず、通知は細心の注意を払いながら行いました。

「願いがかなう!」採用に喜びの涙

アデリナ・アグスティナさんと

アデリナ・アグスティナさんと

「本当にうれしい!」。プロジェクト案の採用を知ったアデリナ・アグスティナさん(46歳)は喜びを爆発させました。

「グループが一体となって応募した甲斐がありました。この知らせをメンバー全員に一刻も早く知らせたいの。キディコ(グループが働く漁村)に帰ったら、緊急ミーティングを開くわ!」

キディコ海岸には、海産物や地元の食材を使った料理を提供する小さな販売所が数軒あります。

女性だけで構成されたアデリナさんのグループは、より良いサービスを自分たちの力で提供し、たくさんのお客さんに来てもらいたいと、清潔でかわいらしい販売所の建設案を申請していました。

審査結果を伝える会議には、小さな子どもを抱いたパトリシア・カラエナスさん(38歳)も参加。不安そうな表情は採用結果を聞いて一変しました。

「ここ10年、何度も何度も政府の漁村支援プロジェクトに応募してきたの。そのたびに、『自分たちには大きすぎる計画』といって審査してもらえませんでした。でも、やっと私たちの夢がかなう時がきました。赤十字の支援に心から感謝します」と涙をこぼしました。

「不採用」でも終わりじゃない

漁村にて審査結果を通知。緊張の瞬間です。

漁村で審査結果を通知。緊張の瞬間です

採用されたプロジェクトは、応募されたうちの30%に過ぎません。

残りの70%は事業の内容や今後の予算執行状況などを勘案し、さらに支援が可能かどうかの見極めを行います。しかし、最終的には不採用という判断を下すものも出てきます。

それでも今回の試みは、住民グループが日ごろ心の中で温めていた思いや眠っていたアイデアを掘り起こし、それらを書類で提出してもらうことで、グループの組織力強化にもつながりました。

たとえ不採用になったとしても、日の目を見たアイデアと力を増したグループは、地域の復興に向けた第一歩をまさに踏み出しています。採用された25のプロジェクトに対しては今後、詳細な事業計画書など必要書類を整えるため、現場で助言や指導を行っていく予定です。

日赤はこれからもチリ赤とともに、沿岸部にたくさんの笑顔の花を咲かせ続けられるよう、生計再建事業に携わっていきます。