ハイチ大地震復興支援:保健ボランティアが地域の健康増進に

ハイチ赤の保健スタッフと山之内看護師(写真後列、左から2番目)

「住民に保健衛生を理解してもらうのは簡単ではないけれど、正しい知識や技術はたしかに根付きつつあります」と語るのはハイチ赤十字社(以下、ハイチ赤)のスタッフの一人。

日本赤十字社(以下、日赤)が取り組む復興支援事業を支えるパートナーです。

2010年1月に大地震に見舞われたハイチ。日赤は同年7月から、震源地に近いレオガンで住民への保健衛生知識の普及や給水設備の設置など復興支援事業をハイチ赤とともに展開しています。

2012年1月から派遣されている山之内千絵看護師が、これまでの到達点や現地スタッフの声などを報告してくれました。

被災17地域で命を守る取り組み

赤十字の保健ボランティア研修

病院やクリニックまで片道1、2時間かかるのが当たり前のハイチでは、治療費はもとより交通費を捻出できないために、マラリアなど予防・治療すれば助かる病気で命が失われています。

また、両親が正しい保健知識を持っていないことで、乳児が栄養失調や脱水などの危険にさらされることも。

そのため、日赤は草の根レベルから住民の健康を守る仕組みを作ろうと、被災17地域で疾病予防に関する啓発活動を行ったり救急法を活用したりすることができる保健ボランティアなどを育成しています。

彼らは自宅周辺約15世帯の保健衛生教育を受け持ち、字が読めない人にも分かりやすいように絵を使って、下痢やマラリアの感染経路と予防策、正しい乳児ケアなどを広めています。

感染拡大阻止がボランティアの意識変えた

家庭訪問で保健と衛生の情報を伝えるミローさん

デランデという地域で今年3月にコレラが発生したときのことです。

ボランティアらは感染拡大を防ごうと、ハイチ赤のスタッフとともに、住民に手洗いの励行や排泄物の処理方法などを呼びかけました。

その結果、コレラは拡大することなく終息。初めて成果を実感できる活動となりました。

今では近隣で感染症が報告されると、自発的にキャンペーンなどを計画し実行するようになっています。

ボランティアのミローさんは「私たちの活動を心待ちにしてくれる人たちもいます。そんな地域のみんなが健康でいられるよう、もっともっといろんな知識を学び、広めていきたいです」と熱意を見せています。

なくてはならないパートナー・ハイチ赤スタッフ

グループワークでアドバイスするフロリデさん

事業を進めていくうえで欠かせないのが、ハイチ赤の7人のスタッフです。

その一人、フロリデさんは2010年3月から日赤の救援活動で看護師として働き始め、2年以上も活動を共にしています。

フロリデさんは「事業を通して、住民は正しい知識や技術を学びつつあります」と手ごたえを感じながらも、啓発活動については「なかなか受け入れてもらえないことも」と苦労を語ります。

それでも地道な活動で困難を乗り越えたときには、自分の成長を実感できるのだとか。

「大変なこともありますが、私はこの仕事を楽しいと思っているので続けることができます。事業を支えてくださっている日本のみなさんに感謝しています」と笑顔を見せてくれました。

ハイチの地域保健活動のエピソードはこちら(PDF:4.6MB)

自分たちの命を自分たちだけで

蚊帳(かや)の使用方法を確認するボランティア

成果の一方で、今後取り組むべき課題も明らかに。それは、外国からの支援に頼らないでも活動を完結できるようにすることです。

発災後、世界中の団体から多くの物品が寄せられたためか、日用品が自分たちで入手できるようになった現在でも、住民から掃除用具や石けん、浄水剤などを無償で求める声が後を絶ちません。

しかし、海外からの支援は永久ではありません。物的支援への依存は、人びとの生活習慣をよりよく変えていこうとする保健事業にも悪影響で、例えば「石けんがないから」という理由でせっかく根付いた手洗いなどの習慣が絶えてしまう懸念があります。

食料を購入するのと同じように、自分たちの健康を守るものは自分たちで購入する習慣を身につけてもらわなくてはなりません。

また、現在、赤十字が保健省などと連携を取っていますが、今後はその役割も少しずつ地域へ移行していく予定です。

保健知識の普及はトイレの建築などと比べて、成果が目に見えにくい支援ですが、ハイチ赤のスタッフとともに焦らずゆっくりと、住民に健康増進を働きかけていきます。