ネパール・コミュニティー防災事業

ネパールの地図

日本赤十字社(以下、日赤)は、アジア・大洋州地域で防災活動に重点を置いた支援を展開しています。

2012年8月から、新たにネパール連邦民主共和国でコミュニティー防災事業を実施することになり、職員が事業の開始に向けて現地に出発しました。

ネパールの事業地の様子をお伝えするとともに、今後実施するコミュニティ防災事業の内容をご紹介します。

自然豊かなネパール

カトマンズ市内から望むヒマラヤ山脈

ヒマラヤ山脈、世界最高峰の山エベレスト、お釈迦さまの生誕地ルンビニ。これらはすべて、中国(チベット自治区)とインドに挟まれた小さな国、ネパール連邦民主共和国にあります。

日本の小笠原諸島や奄美大島とほぼ同じ緯度に位置し、北海道2つ分ほどの大きさのこの国は、ヒマラヤ山脈のイメージから険しい山岳地帯ばかりが想像されがちですが、実際は南部には平野が広がり、多様な自然景観が詰まっています。

たぐいまれな自然景観と文化遺産が旅行者を魅了するネパールですが、経済面では、①開発の遅れ、②高い人口増加率、③内陸国であることからインドからの物資輸送への依存度が高いことなどから、多くの貧困層を抱える南西アジアで一人あたりの所得水準が最も低い低開発国といわれています。

また、自然災害も日常的に発生しており、これらの災害が国の開発を立ち遅らせるもう一つの要因と考えられています。

現地で聞いた住民の苦悩

世界銀行の報告では、「世界でも洪水リスクの高い国」上位30位に位置づけられている

ネパールは、毎年モンスーン時期に洪水、地滑り、土砂崩れといった自然災害に見舞われており、また近い将来大規模な地震の発生が予測されています。

この災害多発国に、この度「ネパール・コミュニティ防災事業」を新たに実施することになりました。

日赤は今年7月上旬、事業地の一つである南部平野地帯に位置するチトワン郡を訪問し、現地の状況を確認するとともに、今後の活動内容などについてネパール赤十字社(以下、ネパール赤)の職員などと協議しました。

災害の深刻さを訴える南部チトワン郡の住民

現地を訪れたのは、ちょうどモンスーンの時期で、訪れる先々で洪水や地滑りへの苦悩を耳にしました。

「毎年洪水の被害に悩まされていて、被害にあうたびに生活を一から立て直さなくてはいけません。これでは、いつまでたっても貧しい生活から抜け出せません。少しでも被害が軽減できるように何とかしたい」と切実に訴える住民の声を通して、ネパールの災害の多さとその被害の大きさが改めて浮き彫りになりました。

同時に、具体的な活動に移すための知見の不足や、日々の生活に困窮している最貧層に防災の重要性が認識されにくいという課題も明確になりました。

住民自身が考え行動することの大切さ

災害弱者といわれる女性に防災教育を実施する様子

山の起伏が激しく川も多いネパールでは、災害が起きても支援の手が届きにくいのが現状です。

救助が来るまで、その地域に住む住民自身が自らの力で対処できるようになること、また被害を最小限に食い止められることが「ネパール・コミュニティー防災事業」のゴールです。

そのために3年間の事業を通して、住民が集まって自分たちの地域のリスクについて話し合う場を設けることや、住民自身でハザードマップを作成すること、避難訓練や救急法の講習会の開催、減災のための簡易技術(たとえば、河川の水流制御や護岸などに用いられる「蛇籠(じゃかご)」の作り方など)の普及などを実施していきます。

事業は、今回訪れた南部平野のチトワン郡、西部山岳地帯のグルミー郡、昨年地震に見舞われた東部ウダヤプール郡の各郡2市町村、計6市町村で実施します。対処する災害は地域によってさまざまです。

チトワン郡だけでも、洪水・地滑りといった自然災害から、伝染病・交通事故・野生動物による被害・火事といった日常生活を脅かすさまざまなリスクが住民から聞こえてきました。日赤は、地域特有の災害やリスクにそれぞれ対応し、被害の軽減に取り組むようネパール赤とともに住民に働きかけていきます。

現地に派遣された職員の事業への思い…

ネパール赤十字社のスタッフと藤巻職員(中央)

事業の実施に向けて、8月13日から派遣された藤巻職員は、「数日前に赴任したばかりでまだ通りの名前一つ覚えていませんが、ネパールで皆さんに歓迎され挨拶を交わすうちに二つのことを強く感じています。

一つはこれまで日赤が30年間ネパールで実施してきたさまざまな事業と支援に対する、ネパールの人びとからの深い感謝の気持ち。

もう一つは、コミュニティー防災事業の実施と、日赤とのさらなる協力関係を築くことへの強い期待です。

コミュニティー防災事業を通してネパール赤と連携し、日本の皆さんのあたたかい思いを災害に苦しむネパールの人びとの支援に繋げていけるようにがんばります。私自身、大きな期待とやりがいを感じているところです」と語ってくれました。

災害多発国ネパールでの「ネパール・コミュニティー防災事業」の進捗を今後随時お知らせします。