子どもたちの力が地域を変える:ハイチでの衛生教育

石けんを使った手洗いを教える藤田看護師

石けんを使った手洗いを教える藤田看護師

2010年1月12日にマグニチュード7.0の大地震に見舞われたハイチ共和国。

以前から学校での水と衛生の問題が指摘されていましたが、震災により校舎が使えなくなるなどして、児童の健康への影響が深刻な問題となっています。

2003年に行われた国勢調査では、「77%以上の学校で安全な飲み水の確保ができていない」「60%の学校が適切なトイレを保有していない」と報告されており、2010年に行われた調査では、「72%の学校でトイレが正しく使用されていない」「83%の学校でトイレ後の手洗いができていない」との結果が出ています。

このことからトイレなどの不足に加えて、児童の衛生知識・行動の低さが明らかになっています。

日本赤十字社は、ハイチ赤十字社のスタッフとともに、震源地に近いレオガン市で、保健と給水・衛生環境を改善する支援活動を実施しています。

衛生事業では、地域の衛生活動を担う赤十字ボランティアを育成する一方で、子どもたちが健康と衛生問題について考え、正しい衛生習慣が定着することを目標として、小学校での衛生知識の普及活動にも積極的に取り組んでいます。

今回は、2011年8月から現地で活動している藤田容子看護師が、子どもたちの様子をご報告します。

小学校での衛生教育の内容

人形劇で下痢の予防策について学ぶ低学年生

人形劇で下痢の予防策について学ぶ低学年生

小学校での衛生教育は、2011年11月から、レオガン市の農村部に位置する3つの小学校で、6歳から12歳の児童500人を対象に行っています。

内容は以下についてです。

①石けんを使った手洗い

②トイレの使い方と管理

③ゴミの処理

④コレラ/下痢の予防と安全な水の利用

⑤マラリアの予防策

⑥身の回りの衛生習慣(爪切り/歯磨き/洗髪

年齢による理解度の差も考慮して教育の方法を工夫しています。たとえば、低学年のクラスでは人形劇や替え歌を使って、楽しく学べるようにし、高学年のクラスではグループワークを取り入れ、不衛生と健康との関連について話し合います。

グループワークに参加したキンバリー・フラジル君(10歳)は、彼の決意を詩に託してくれました。

「ハイチ・ハイチ・ハイチ、あなたはハイチがとても美しいという。

だけど、ハイチの何を美しいと言っているの?

道にはゴミがあふれている。

あなたが捨てた小さなゴミ、誰かが捨てた小さなゴミ。

小さなゴミが大きくなって環境を汚染する。

そしてあなたの健康を脅かす。

もしあなたが健康でいたいなら、『衛生的な行動』について考え実践しよう。

ゴミを道に捨てない、トイレを使う、石けんで手を洗う、食事の後に歯を磨く、きちんと髪を洗う…。

病気があなたの体の中に入り込もうと扉をノックしても、進入を防ぐことができるように」

子どもたちの衛生知識・態度・行動に変化

赤十字が学校に整備したトイレを使用する少女

赤十字が学校に整備したトイレを使用する少女

小学校で約7カ月間にわたり衛生教育を続けた結果、児童の衛生知識が深まり、一人ひとりの態度や行動にも変化が見え始めました。

2012年6月初旬に実施したモニタリングでは、78%の生徒が「学校のトイレを使用する」と答えており、以前は多かった校庭や川での排せつが1%に低下しています。

また、手洗いについては、83%の生徒が「トイレの後毎回手洗いする」と答え、「石けんを使って手を洗う」割合も90%以上でした。

さらに多くの児童がゴミ箱をきちんと使うようになり(94%)、校庭をきれいに清掃するようになりました。

一方で課題も残っています。衛生チームと一緒に活動にかかわってきた教師は、「安全な水の利用についても、児童の知識は確実に向上しました。しかし、学校の周辺には給水設備がないため、雨水を溜めて手洗い用の水を確保しています。安全な飲み水を確保するには、20分離れた山の上までくみに行かなくてはなりません」と訴え、ハード・ソフトの両面からの長期的な支援の必要性が明らかになりました。

子どもたちの変化は地域に波及

みんなで一緒に村をきれいにしよう!地域の清掃活動に参加する子どもたち

みんなで一緒に村をきれいにしよう!地域の清掃活動に参加する子どもたち

子どもたちが身につけた衛生の知識や取り組みは、彼らの家族や周囲の人々にも波及しています。

一例として、最近は、清掃活動などに参加する子どもたちが増えており、それに伴って、親や兄弟、友人、教師も大勢参加するようになりました。

人びとが活発に衛生活動に取り組むようになれば、衛生活動に携わっている赤十字ボランティアのモチベーションも向上し、さらに積極的な地域貢献につながるなど相乗効果をもたらします。

ボランティアの一人は、「短期間でレオガンの衛生環境を良くすることは難しい。でも子どもから大人まで、一人ひとりの行動が変われば、地域全体の環境も少しずつ良くなると信じています」と話します。

衛生環境を改善するためには、ハイチの人びとが自分たちで衛生問題を認識して改善することが大切であり、赤十字は将来を担う子どもたちを中心に、その取り組みを支援していきます。