住民自らが考える地域防災:インドネシアICBRR事業

日本赤十字社(以下、日赤)は、アジア・大洋州地域で防災活動に重点を置いた支援を展開していくことを方針の一つとしており、災害多発国であるインドネシア共和国での防災事業の実施に向けて現在動き始めています。

今回は、インドネシアの災害の現状をお伝えするとともに、今後実施する予定の地域防災事業についてもご紹介します。

名画から知るインドネシアの災害

インドネシアの地図

皆さんもよくご存じのノルウェーの画家ムンクが描いた『叫び』。「この作品がインドネシアの災害と関係がある」と聞くと意外な感じがするのではないでしょうか。

実は、この作品の印象的な空の赤さは「大噴火した火山が運んだ粉じんを描いたため」とする論文が数年前にテキサス大学で発表されました。

この火山こそが、1883年に大噴火を起こしたインドネシアのクラカタウ山と考えられ、大噴火により火山灰が成層圏を覆い、地球規模の環境変動をもたらしたといわれています。

ムンクが絵を描いたノルウェーでも朝夕の空が数年間にわたって赤く染まったそうです。

インドネシアはこの様な大規模な被害をもたらした災害に幾度も見舞われてきました。

活火山は全国に129カ所もあり、そのうち70カ所は噴火すれば甚大な被害をもたらすと危惧されています。また地震も頻発しており、2004年のスマトラ島沖地震では津波の影響も大いにあって、死者・行方不明者22万人、被災者は200万人にも上りました。

さらに洪水も多く、人口の集中している都市部では大きく経済的な被害が出ています。2007年に首都ジャカルタで発生した洪水では、避難者は19万人にも上り、9億ドルもの経済損失が生じたといわれています。

これらの数字からも分かるように、インドネシアは災害多発国であり、災害対策が十分ではないことから、『災害による死亡率が最も高い国上位35』の第12位に位置づけられ、世界銀行の報告によると人口の約40%が災害リスクの高い地域に居住しているとされています。

住民自らが考え、行動する防災活動

住民が自分たちの住む地域の危険な場所について議論し、ハザードマップを作る

上記のような災害が発生した時、真っ先に対応するのはその地域に住む住民であり、被災者を救助する最初の支援者も住民自身です。

インドネシア赤十字社(以下、インドネシア赤)は彼ら住民を対象として、コミュニティーに根ざした平時の防災に重点を置くことを5カ年戦略(2010~2014年)の最優先課題としており、「地域防災(Integrated Community Based Risk Reduction;ICBRR)」という手法を積極的に取り入れています。

ICBRRとは、災害に対するぜい弱性を軽減し、災害に対処できる能力を強化することを目的として、地域の住民に働きかける活動です。

具体的には、住民が集まって自分たちの住む地域にはどんなリスクがあるかを話し合う場を設けることや、住民自身が地域を歩き回り災害の際に危険な場所を探し、自分たちの手でハザードマップを作成すること、避難訓練の実施などがあります。また、住民に対してICBRR事業を実施する担い手となる防災ボランティアの養成も行います。(以下の写真参照)

これはいわば「住民への研修」事業であり、さまざまなリスクを住民自身が考え、主体的に取り組むことで、高いモチベーションを維持することが期待されています。
草の根レベルのネットワークを持つ赤十字だからこそできる活動です。

日赤の取り組み

今年1月の洪水でも被災している事業候補地。頻発する洪水への対応が急がれる

日赤はインドネシア赤の要請を受けて、ICBRRを支援するため、現在調整中です。

先日職員を現地に派遣し、今後の支援の枠組みをインドネシア赤と確認するとともに、現地で活動するインドネシア人スタッフの採用やICBRR事業を展開する予定地を訪問してきました。

「自分たちの住むこの地域のことは、自分たちが一番よく知っていて、誰よりも愛着を持っています。住民はICBRR事業の実施に向けてやる気が十分にあり、赤十字と一緒に活動できるのを、今か今かと心待ちにしていています」と事業候補地であるバンテン州パンデングラン県の助役さんは熱心に語ってくれました。

インドネシアでは、災害発生直後の緊急救援には多くの関心が集まりますが、日赤はICBRR事業の実施を通して、平時からの「災害に強い地域づくり」を支援していきます。