ハイチ大地震被災者支援:各給水所に水委員会を設置

水委員会結成に向けて、その必要性について話し合う地域会議

水委員会結成に向けて、その必要性について話し合う地域会議

2010年1月12日にマグニチュード7.0の大地震に見舞われたハイチ共和国では、住宅や学校などの再建と並んで、劣悪な衛生環境を改善し、テントなどで暮らす被災者の健康を守ることが課題となっています。

そこで日本赤十字社は、震源地に近いレオガン市で、安全な水を確保し、衛生環境を整備する支援活動を実施しています。

今回は、事業が開始された2010年7月から1年10カ月間にわたり、ハイチ赤十字社(以下、ハイチ赤)などとともに給水/衛生事業に携わってきた林まゆみ駐在員が現地の様子をご報告します。

給水所をみんなで大切に、末永く使ってもらうために…

給水/衛生事業では、既存の井戸などの給水設備を長期的に清潔に保つために、清掃、ハンドポンプの修理、必要があれば、新たに井戸を掘ってハンドポンプを設置するなどの活動を行っています。

しかし、これだけの活動ではいずれ故障が起きるなどして持続的に使うことが困難になる場合があります。

そこで、給水設備を使う人びとの中から水委員会を設け、ハンドポンプの修理が必要な時は、地域住民だけで給水所を管理できるよう働きかけています。

ハイチ政府の水道衛生省も、このようなシステム作りを重視しており、水委員会の設置を全国各地で促しています。

水委員会は4人で構成され、住民による選挙で決めることを水道衛生省が義務付けています。水委員会が設置されると、赤十字が水委員会のメンバーを対象に、ポンプの管理に関する技術的な研修と、住民たちが自らの手で長期的に給水設備を維持するために必要な水道料金の集金などについての研修を行っています。

水道料金を集めるまでの道のり

水道料金について研修中のメンバー

水道料金について研修中のメンバー

ハイチでは水道が普及していないため、地震前から川での水くみが一般的でした。

レオガン市でも、住民は今まで水道料金を支払った経験がありません。

そのため、赤十字スタッフが住民に、水委員会を設置する目的や水道料金集金システムの必要性などを説明しても、「設置の目的などは理解できますが、実際、皆が集金に賛成するかどうか分かりません。集金システムを導入するのは難しいと思います」「ハイチの人びとは、水は地下から沸いて出てくるので、水は無料だと思っています」といった否定的な声が多く上がりました。

また、地震により世界中から援助が入った弊害として、住民が無償でサービスを得ることに慣れてしまったことも懸念されました。

ハンドポンプの修理方法を習う水委員会のメンバー

ハンドポンプの修理方法を習う水委員会のメンバー

そこで、2012年3月から、水委員会のメンバーが水道料金の集金と管理について学ぶ赤十字主催の半日研修が始まりました。

研修に参加したメンバーには、「こうした研修会を導入してくれてありがとう」「学んだことを無駄にしないよう、地域へ戻って地域住民集会を開いてみます」など、研修前とは変わって積極的な姿勢がみられました。

研修後、メンバーはそれぞれの地域で住民と集まる場を設け、なぜ集金システムが重要なのかなど自分たちが研修で学んだことを共有。「幾らを集金できるか」や「いつから集金システムをスタートできるか」などの話し合いが行われています。

水道料金は地域によって異なりますが、日本円にして1世帯あたり月額約40~200円に設定。早速4月下旬から集金活動が始まっています。

一緒に働く現地スタッフの事業への思い

ハイチ赤十字社のスタッフと林駐在員(右から2番目)

ハイチ赤のスタッフと林駐在員(写真右から2番目)

この活動に従事しているハイチ赤スタッフのリカルドさんとレジナルドさん。

「ハイチ人として、この事業にかかわっていることを誇りに思います。給水所を地域の人たちだけで管理できるようになるという長期的な展望を目指すだけでなく、自分たちの活動を通して地域の人たちが実際に成長している過程を共有できて非常にうれしいです」と語り、大震災から2年以上を経た今もハイチでの支援を続ける日赤と日本の人びとへの感謝の気持ちを話してくれました。

この活動は始まったばかり。集金システムが習慣化され地域に根付くようになるまでには時間がかかることでしょう。赤十字が設置した給水設備が地域の住民たちの手で長期的に管理されるように、今後も支援を続けていきます。