赤十字国際委員会クレヘンビュール事業総局長来日講演 Health care in danger –It’s a matter of life and death

赤十字国際委員会(以下、ICRC)のピエール・クレヘンビュール事業総局長の講演会が2月13日、日本赤十字社本社(東京都港区)で開催され、「Health care in danger」キャンペーンの必要性や今後の進め方が紹介されました。

Health care in dangerとは?

数千人の命を救う1人の医師の命が狙われる。2008年、イラクの保健省は、2003年以降628人の医師等が亡くなったと推定しました。さらには医師だけでなく、命を救う病院や救急車も攻撃されることは、そこで救われるはずだった患者の死をも意味します。

『Health care in danger』とは、紛争地やその他の暴力行為がまん延する状況下で、標的にされ攻撃を受けている『医療活動』を尊重し保護しようという赤十字キャンペーン。2011年11月に開催された赤十字・赤新月国際会議で、今後4年間にわたり国際赤十字として本キャンペーンに取り組んでいくことがICRCから提起されました。

現場では何が起きているのでしょうか

クレヘンビュールICRC事業総局長の講演は、「私たちがこうやって講演会に出ている間も、どこかの地域で病院が砲撃され、妊婦が検問所で留められ、外科医が武装勢力の者を治療したために、その敵対勢力から狙われています」という言葉から始まりました。

「医療に対する暴力(攻撃)は最も深刻な問題ですが、現実には人道問題として認識されていません」と、クレヘンビュール事業総局長は強く訴えます。

医療に対する暴力は、武装グループによる病院の占拠や爆発物などの武器の持ち込み、医療スタッフの殺害といった直接的なものから、医療機材や医薬品の強奪、患者を救急搬送中の車両を検閲所でいたずらに留め置くという行為までさまざまな形で繰り広げられています。

検閲所で止められてしまった妊婦が死産するという痛ましいケースや、医療スタッフに対する脅迫・妨害・攻撃のため、患者への必要なケアに専念できないなど、医療に対する暴力は、結果として何百万人もの日々の生活と健康に重大な影響を及ぼしています。

まずは知ること

医療に対する暴力が日々発生しているにもかかわらず、現実にはほとんど報道されていません。

『Health care in danger』では、まず、世論の喚起につながるようにデータを収集・分析し、正確な情報に基づいた知識の普及を進めていきます。

ICRCは、医療活動に対する暴力について、16カ国で32カ月間にわたり調査を実施し、655ケースがあった旨の報告書を2011年7月に発行しました。このような調査活動は、国際人道法の普及啓発と並行して行われています。

目指すのは安全で何の差別もない医療の提供

2011年から世界的に展開する『Health care in danger』キャンペーンが最終的に目指していることは、どんな状況下でも負傷者や患者に対し、可能と考えられるあらゆる医療が、差別なく安全に提供される社会です。

そのため赤十字は、世論に訴えていくとともに、紛争当事者にも医療活動の尊重と保護を働きかけていきます。

プロフィール

ピエール・クレヘンビュール (ICRC事業総局長)

1966年 スイス生まれ。ジュネーブ大学社会経済科学学部卒、国際学研究所、国際関係学位取得。

1991年にICRCに加わり、エルサルバドル(91~92年)、ペルー・アヤクーチョ(92~93年)で活動後、アフガニスタン・ジャララバード副代表部首席代表(93~94年)、アフガニスタン・カブール代表部次席代表(94~95年)を務める。

1995~97年にかけては、内戦直後のボスニア・ヘルツェゴビナに赴任し、97年にはサラエボ代表部次席代表を務める。その後、ジュネーブ本部にて、バルカン対策本部長(98~00年)、ICRC総裁の特別補佐官(00~02年)を歴任し、2002年より現職。家族は妻と子ども3人。