大洋州防災支援事業 地域が抱える高い災害リスク

パラオやフィジーなど『南の島の楽園』といったイメージが強い大洋州。実はサイクロン、地震、火山噴火など自然災害の多発地域です。

11~3月の雨季には、豪雨、長雨による洪水や地滑りの危機にさらされます。地球温暖化などの気候変動が原因とされる、海面上昇や干ばつなどの被害にも近年は悩まされるようになりました。

こうした自然災害リスクに加え、人口増加による災害弱者の拡大も問題になっています。

経済的な理由により離島から都市部への移住者が増え、人口が集中した結果、災害リスクの高い地域に居住せざるを得なくなっているためです。

そのような大洋州で、国際赤十字は防災支援事業に取り組んでいます。

日本赤十字社(以下、日赤)は2010年2月から2年間にわたり、防災支援担当として吉田祐子駐在員をフィジーに派遣。今回帰国した吉田駐在員が、現地の様子をお伝えします。

島しょ国赤十字11社の災害対応を強化

コンテナ型救護倉庫

私が勤務していた在フィジー国際赤十字大洋州地域事務所は、11島しょ国の赤十字社に対する防災や地域保健活動支援、組織能力強化支援、赤十字間パートナーシップ強化などを行っています。

コンテナ内の救援物資

その中で私が携わったのは、防災プログラム運営・管理の補佐業務です。

具体的には、災害対策としてのコンテナ型救護倉庫支援、効率よい物資運搬のためのロジスティクス支援、そして、災害時に地域内で迅速な災害対応を可能とする地域災害対応チームの育成でした。

コンテナ型救護倉庫は、日赤が1980年代から支援している事業の一つです。各社が保有するコンテナ内に救援物資を備蓄し、非常時に被災者に配付、外部から支援が届くまでの間、被災者を支えます。

『大洋州の流儀』を尊重した働きかけ

大洋州の災害はアジアと比較すると小規模ですが、島しょ国の赤十字社にとってみれば、その都度、大きな苦難になります。

個々の赤十字社の規模が小さいうえに、1カ国が何百もの離島を抱える環境から、交通網や通信手段等のインフラ基盤が弱く、災害対応に影響をもたらしています。

国際赤十字は一方、災害対応・対策への取り組みについて長い歴史とノウハウを有しており、グローバルな標準に基づいて各国赤十字社を支援します。しかし、グローバルな標準を大洋州の新興の赤十字社がそのままお手本にすると、消化不良を起こしかねません。

そのため、両者の間に位置する地域事務所は、赤十字社のグローバル標準を堅持しつつ、島しょ国の赤十字社が受け入れやすいように、コミュニケーションを重ねながら調整しています。

専門用語はもちろん、政策や戦略に関する言葉が理解されるように伝達することは決して容易ではありませんでした。『大洋州の流儀(Pacific way)』にかなうような研修計画や会議運営ができるように努力を重ねてきましたが、11の赤十字社と物理的な距離が大きい中で、良好なコミュニケーションを確保するのは、常に大きなチャレンジでした。

各社のスタッフやボランティアの熱意が刺激に

フィジー西部で2012年1月に発生した洪水の被災者に届ける救援物資を準備 ©フィジー赤十字社

被災者救援とは違い、各社の業務効率を高めて災害時の対応能力を強化するための支援は、現場との距離も遠く、成果を直接感じる機会は決して多くありません。

しかし、研修やコンテナ型救護倉庫支援事業で接する各社スタッフ、ボランティアから「被災者を救いたい」という意欲が伝わってきます。

同じ目的の下で地域事務所のチームも熱く協議を重ねる時、「赤十字の理念によって繋がっているのだ」と感じることができました。現場の熱意が伝わるその一瞬、一瞬が赤十字運動の一員として働く醍醐味だと思います。