ボランティアがつくり上げたウガンダの母子保健事業

ウガンダ北部では20年以上続いた紛争が終息し、平穏な暮らしを取り戻しつつあります。しかし、インフラは十分に整っておらず、住民は環境的にも経済的にも厳しい状況で暮らしています。

同地域では約7割の妊婦が自宅で出産。不衛生な環境による感染や出血で命を落とす危険にさらされており、ウガンダ赤十字社(以下、ウガンダ赤)は、2010年1月から北部地域の妊産婦が安全に出産・子育てできることを目指した3カ年の母子保健事業を開始し、2年が経過しました。

日本赤十字社はその事業運営を支援しており、事業開始時より織方 愛駐在員(日本赤十字社医療センター 看護師)をウガンダに派遣しました。今月、2年間の任期を終えて帰国した織方駐在員が、これまでの事業成果や感じたことについて報告します。

事業による活動で見えてきた変化

出産の際に支援を受けた女性と話す織方駐在員

事業開始のころと今の状況を比べると、主に3つの成果が現れています。地元の人たちの母性保護への行動が変化しつつあります。

  1. 母子保健の知識を持った80人のボランティアが育ち、妊産婦や地域住民に母性保護を広める活動が根付きつつあります。
  2. ママバッグ(出産に必要な物品一式)6000個を配付し、安全な出産のために保健センターを訪れる妊婦とそれに付き添う夫が増えてきました。
  3. 事業が地域住民や行政に認知され、また歓迎されています。

妊産婦への家庭訪問を行うボランティア

事業の活動を支えているのは、地元出身のボランティアです。彼らは母子保健の基礎を学ぶ4日間の研修を受けて活動しています。

ボランティアの活動内容は、家庭訪問による母子の健康管理指導、住民と母性保護の大切さについて語り合う対話集会の開催、保健センター職員との情報交換や出産に関する協議など、多岐にわたります。

事業開始当初、ボランティアの中には読み書きができず報告書が書けない人や住民とのコミュニケーションがうまく取れない人、活発に活動する人とそうでない人がおり、各々の活動内容にばらつきがありました。

また、ボランティア同士での連携がないなどの問題が生じていました。

読み書きができなくても、村での対話集会で母子保健や妊産婦に対する男性の協力の必要性を上手に説明して住民の関心を引き付ける人がいます。一方、読み書きができても恥ずかしがり屋でコミュニケーションが苦手な人もいます。

私はウガンダ赤の事業担当者に「月に1回はボランティアを集めた会議を開催した方が良い」と提案しました。問題についてボランティア同士で話し合うようになった結果、不得意な人に得意な人が協力するといった変化が見られるようになり、少しずつ問題が改善してきています。

住民の間では、多くの妊婦が妊婦健診の大切さを知り、保健センターで受診をするようになるという変化がありました。保健センターでの出産数も増えてきています。

また、男性の行動にも変化が見え始めています。男性優位の社会で、これまで妊産婦を手助けする男性が少なかったのですが、妻に付き添って保健センターへやってくる夫も出てきました。

ウガンダでの2年間で感じたこと

妊婦と語るボランティア

ウガンダにはコミュニケーションを何よりも大切にする人が多く、人にはいつも明るくていねいに接しています。

そんな国民性からか、知人に会うと天気、家族、日常生活についての話が長引き、遅刻したり仕事が遅れることがあります。

そのため、ウガンダで業務を開始した当初は、こうした文化の違いに戸惑いも感じました。頭では、日本のやり方や考え方を押し付けてはいけないとわかっていても、文化の違いが原因で事業担当者とぶつかることも多々ありました。

2年間の経験を通じて、事業担当者やボランティアたちの一見無駄に思われる会話のやり取りが、住民たちの信頼を得ることにつながり、活動が順調に進んでいることを理解しました。

私は遅刻や仕事の遅れをマイナスなことと捉えがちでしたが、ウガンダの人たちの時間への無頓着さはむしろ長所でもあり、母子保健事業ではそれをうまく活用していると思います。

今後も、こうしたウガンダの人たちならではのやり方で事業を発展させ、同地域の母子保健の状況が改善していくことを願っています。