教育こそが最高のプレゼント~南スーダン医療支援報告会~

南スーダンでの活動を報告する小川さん©ICRC

南スーダンでの活動を報告する小川看護師 ©ICRC

20年以上続いた内戦の末、今年7月にスーダン共和国から独立した「南スーダン共和国」。

誕生したての同国で、赤十字国際委員会(以下、ICRC)は「紛争犠牲者支援事業」を展開しています。

その一員として日本赤十字社(以下、日赤)が派遣している小川里美看護師がこのほど一時帰国。12月13日、日赤本社(東京都港区)で南スーダンの医療事情などについて報告しました。

7月9日に独立を果たした南スーダンでは、今もなお大量の難民が発生し国境付近での武力衝突により緊張状態が続いています。

8月下旬には同国東部の町ナジール周辺で、約400人が死亡する大規模な武力衝突が発生。ICRC緊急外科チームは派遣要請を受け、小川看護師もその一員として負傷者救護にあたりました。「犠牲者の大半は女性と子ども。弱者が守られていません」と小川看護師は憤ります。

荒廃した医療システムへの支援も重要な任務です。小川看護師が主に活動するのは、南北スーダンの国境付近マラカルにあるマラカル教育病院。ここで外傷患者の治療や看護師教育、衛生管理指導などに携わっています。

読み書きができない看護師たち

小川さんらによる衛生指導の以前は、壁や手術ベッドには血液が付着しており、前の患者の血液がついたまま次の手術が行われることも©ICRC

小川看護師らによる衛生指導の以前は、壁や手術ベッドに血液が付着。前の患者の血液がついたまま次の手術が行われたことも ©ICRC

内戦は医療に深刻なつめ跡を残していました。

「地域の基幹病院なのに人材不足や設備不足が深刻。緊急手術に対応できず、メスなど医療機材の滅菌、消毒もされていません。看護師のほとんどは読み書き、計算ができないので、カルテが読めず、薬の量も計れません。注射も見よう見まねでやっていました」

多くの市民が教育を受ける機会を奪われていた内戦時、負傷兵や市民の救護のために看護師の確保が急がれました。

その結果、最低限の教育も受けていない人たちの看護学校入学が許可されるケースが続出。読み書きができない看護師が生まれてしまったのです。

「誤った治療や看護による事故は少なくありません。1歳になる幼児は、病院で看護師から受けた注射が原因で手が壊疽。本当に残念なことですが、切断することになるでしょう」と小川看護師は現地の医療レベルの実情を語ります。

絵を使って看護指導

マラカル教育病院の看護師たちと小川さん©ICRC

マラカル教育病院の看護師たちと小川看護師 ©ICRC

ICRCはマラカル教育病院のレベル向上を図る5カ年計画を、来年1月からスタートします。

外国人医療スタッフをこれまでの4人から7人に増強。

「この国の病院に今必要なことは、高度な医療より適切な看護。看護のレベルアップで大勢のいのちや苦しみを救うことができます」と看護師教育にも力を入れていきます。

マラカル教育病院©ICRC

マラカル教育病院 ©ICRC

「文字が読めない看護師のために、ときには絵を描いて説明しながら指導しました」と昨年からの活動を振り返りながら、小川看護師は期待を込めてこう続けます。

「南スーダンの首都ジュバの病院でICRCは、13年間支援を続けました。すぐには成果が見えてきませんでしたが、後で報告を聞くと私たちの教えたことが根づいていました。ここマラカル教育病院の看護師たちは読み書きはできませんが、『いい看護をしたい』という思いは日本と変わりません。物やお金ではなく、教育こそが最高のプレゼントなのです」

小川看護師は来年1月に再びスーダンに帰任する予定です。