厳しい寒さを迎えるモンゴルの生活支援

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積み重ねられた家畜の遺骸とゾド(雪害)を生き延びた家畜(オブス県) ©IFRC

横綱・白鵬関、大関・日馬富士関など相撲界では親しみ深いモンゴル。

大草原と青空、『ゲル』と呼ばれるフェルトと木で作られたテントに住む遊牧民族など、豊かな自然を思わせる国ですが、一方で人びとは厳しい自然に直面した生活を送っています。

モンゴルの冬は厳しく、冬季は気温がマイナス30度、ところによりマイナス40度にもなり、『ゾド』と呼ばれる雪害に見舞われます。

寒さで家畜を失った人びとは都市部に流入するものの、職を得られないまま苦しい生活を余儀なくされています。モンゴル赤十字社(以下、モンゴル赤)は、こうした生活困窮者や、独居老人、障がいのある人たちへの社会福祉サービスを行っています。

こうしたなか、モンゴル支援のため、エイチ・アンド・エム ヘネス・アンド・マウリッツ・ジャパン株式会社(以下、H&M、東京都渋谷区)から約17万点に上る衣類が、赤十字を通じて今年7月に送られました。同社にはこれまでも、社会貢献の一環として自社製品を通じて日本赤十字社(以下、日赤)にご協力をいただき、東日本大震災の際にも被災者の方がたのために衣類を届けています。

人口の半分が首都に集中、進む貧困格差

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首都ウランバートルのゲルエリア

モンゴルは日本の約4倍の国土を有し人口は約280万人、その30%が牛や羊、ヤギ、馬を飼育して生活する遊牧民です。

近年は鉱物資源開発(石炭、銅、蛍石、石油)が進み、2010年のインフレ率は14.29%で、現在も上昇を続けています。

一方、草原ではマイナス30~40度にもなる厳しい寒さのため、昨冬は17県198郡で6万8146頭の家畜が死亡しました。

生活の糧である家畜を失った遊牧民が仕事を求めて都市部に移動した結果、現在人口の50%が首都ウランバートルに集中しています。

流入した人びとは都市を取り囲んでゲルや家を建てて住み始め、『ゲルエリア』と呼ばれる貧民区が広がっています。鉱物関連の工場が建てられて経済発展していく一方、都市部に流入した遊牧民は職を得られず、貧困生活を送っています。

貧困にあえぐ人たちに寄り添う

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モンゴル赤による食糧などの支援 ©MRCS

「寒い季節には暖かい服が、夏には夏用の服が必要です。物価は上がる一方で、貧しい人たちの生活はますます苦しくなります」と話す、モンゴル赤のムグントゥヤさん。

いまだに社会サービスが十分に機能しないモンゴルでモンゴル赤は、行政サービスと現実とのギャップを埋める大きな役割を果たしています。

ゲルエリアに住む生活困窮者や高齢者、独居老人、障がい者、母子家庭などへの生活支援を行っているのです。

各地の赤十字ソーシャルケアセンターを拠点に、保健衛生指導、行政の生活保護申請の介助、職業訓練などを行っています。センターに来られない高齢者や障がい者の家庭を訪問し、健康指導や掃除・洗濯、水くみを行い、暖房のための薪なども準備します。

生活の糧を失い失望した人たちが一人で家にこもらないように、時には交流会を開き、精神的なサポートも行います。また、衣類や食糧の支援も行っています。

こうした活動を支えているのが、地域のボランティアたちです。保健指導や社会福祉、介護、救急法など、さまざまなトレーニングを受けています。また、赤十字のユースメンバーたちも一緒に家庭を訪問し、水道がないゲルエリアの給水所まで水をくみに行き、掃除を手伝います。

H&Mからの衣類を配布

H&Mから寄贈された衣類は、モンゴル赤によりウランバートルから各地の支部へ送られ、その地域の生活困窮者や災害などの被災者の元に届けられています。

「生活支援の一環として衣類を配付しています。フィンランドやデンマークなどからも衣類をいただいていますが、今回H&Mからいただいた衣類は、新品で非常に品質が良いこと、そして一部を販売してその収益を国内の輸送費や社会支援活動に充てることをご了解いただいたことから、大変ありがたいと思っています」とモンゴル赤総務部長のミャダグマさんは感謝の言葉を述べました。

子どものために夫と離れて

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バヤルマさんと次男

「たくさん家畜を飼っている家に下働きに行くべきだけれど、子どもたちを学校に通わせるためにここに住んでいます。この子たちには、無学な自分たちのようになってほしくないから、学校だけは行かせたい…」

H&Mから寄贈された衣類を受け取ったバヤルマさんは、9歳と5歳の男の子の母親です。

中国・ロシアに国境を接するモンゴル最東部ドルノド県の中心都市チョイバルサンの外れに、ゲルを建てて住んでいます。

結婚後は実家から分けてもらった家畜をもとに独立し、遊牧で暮らしていましたが、ゾドですべての家畜を失いました。夫は職を求めてウランバートルに行って3年になりますが、まだ仕事が見つけられず、家族を呼び寄せることができません。「あの時までは幸せでした。家畜を失ってすべてが変わってしまった…」。バヤルマさんは疲れた表情で話します。

バヤルマさんは職業支援でミシンを提供されたので、訓練を受けて服を作り、生活の糧にしようとしています。

幼稚園の子どもたちへ

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幼稚園での衣類配布

チョイバルサン幼稚園には95人の園児が通っています。費用は国家負担で、親が働いている場合は夜まで保育してくれます。

この幼稚園にも生活困窮者の子どもが通園しており、25人に衣類が配られました。

子どもたちは幼稚園が用意した民族衣装に身を包み、歌と踊りを元気に披露してくれました。

マイナス30度の中を走って通学

チョイバルサンの第1小・中等学校には、草原を移動しながら生活する遊牧民の子どもたちのために寮があり、70人が生活しています。政府から寮の建設、食費の支援はありますが、寝具、衣類、学用品は保護者の負担となるため、生活困窮者の子どもたちには赤十字からの学用品や衣類支援が大きな助けになっています。

8畳程の部屋に二段ベッドが3台置かれ、6人の子どもが生活しています。いくつかのベッドは床板に薄い布が一枚敷かれているだけです。「寒くなると布団のない子どもは、持っている子どもの布団に入れてもらって眠ります。コートやブーツのない子どもは、寮から150メートルほどの距離にある学校に走って通います。マイナス30度の雪の中をです。そのため、どうぞこれからも子どもたちに支援をお願いします」と、校長先生は訴えます。

モンゴルは今年もまた、厳しい冬を迎えます。