ケニア病院手術室建設:明日のいのちを救うために

日本赤十字社(以下、日赤)はケニア赤十字社(以下、ケニア赤)と協力し、2007年末からケニア共和国ガルバチューラ県で、5歳未満児の疾病と死亡率の減少を図ることを目的に、保健医療事業に取り組んできました。

今年で4年目を迎え、来年2012年の最終年度に向けて、地域に根付く保健医療サービスの向上を目指しています。

事業地であるガルバチューラ県は、約3万5000人が定住や半定住、遊牧生活を送る乾燥地帯。貧困層が約6割を占め、干ばつが相次ぐ厳しい自然環境の地域です。現在も雨季にもかかわらず、過去60年で最悪の干ばつに見舞われています。

このような環境では最もぜい弱な5歳未満の子どもたちや妊婦たちが打撃を受けやすく、ケニア全体でも、妊産婦死亡率(出生10万件に対し410人死亡)と5歳未満児の死亡率(出生1000件に対し120人死亡)(UNICEF:2007)が高い状況。より生活環境が過酷な地域であるガルバチューラ県ではさらにその値が悪いことが推測され、支援が必要とされています。

いのちをあきらめざるを得ない過酷な環境

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乾燥地に暮らす子どもたち。医療施設のないこの村では巡回診療が行われています

本事業で研修を受けた地元の地域保健師と赤十字ボランティアが、地域住民への保健・衛生教育、保健省との巡回診療を行っています。

その活動を通じて、これまで伝統的慣習により医療施設で分娩してこなかった妊婦たちの間で、医療施設での出産希望や、産前定期健診率が確実に増加しています。

しかしガルバチューラ県では、地域住民の間で適切な医療サービスへの要望の高まりにもかかわらず、対応できる医療施設がなく、電気、通信手段、搬送手段の確保が困難で、加えて医療スタッフや医療機材も不足する状況でした。

そのため、妊婦の容態が悪化した際に適切な産科救急ケアが行われず、母子共にいのちを落とすケースが多く報告されました。

現在は対応可能な医療施設から200キロメートル離れており、また公共交通機関のない悪路の中の搬送は負担が大きいため、ほとんどの患者が自宅に留まることを選択せざるを得ません。これは、多くの場合「いのち」をあきらめるということを意味します。

いのちの受け皿となるガルバチューラ県立病院手術室建設

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手術室建設を切望したネルソン医師

ガルバチューラ県保健局長のネルソン医師から2009年11月、ケニア赤に対して手術室の建設を切望する一通の手紙が届きました。

彼は手紙の中で、この地域での手術室の必要性、手術室がなかったために救えなかった母子への思い、搬送先の医療施設での不適切な対応のため母子共にいのちを失ったことに対する悔しさを訴えていました。

<>ガルバチューラ県立病院に手術室が整備されることで、ガルバチューラ県のみならず隣接する地域の搬送先にもなり、今まであきらめていたいのちを救う受け皿になるとの説明でした。

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建設状況の確認をするケニア赤、保健省、建設省の関係者

この手紙により、手術室の建設がこの地域の救命率を向上させる鍵であると考えたケニア赤は、日本赤十字社と協議の上、当初の計画にはない建設という柔軟な判断を行いました。

しかしその判断に至るには、建設資金の確保などの課題があり、綿密な検討が必要でした。

数カ月にわたる協議の末、政府機関傘下の地方開発基金(CDF:Constituency Development Fund)と共同出資のもとで、保健省の協力を受け、建設を行うことを決定しました。

ガルバチューラ県はへき地にあるため、資材の輸送から困難が伴う建設事業ではありましたが、2010年9月には基礎工事を開始。2011年8月を完成予定として、現在建設の最終段階に至っています。手術室の完成により、これまで対応が困難だった合併症を伴った出産や基本的な手術などの対応が可能となります。

ガルバチューラ県立病院の手術室が、これまであきらめていた「いのち」を助ける受け皿となって機能する日が一日も早く来ることが期待されています。

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病院本棟に直結し、手術室2室を整備

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建設中の手術室内部の様子