パキスタン:大規模な洪水発生から1年

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パキスタン建国史上最悪の被害をもたらした洪水発生から1年が経過しました。

被災した2000万人のうち、いまだに1200万人が安定した生計を確保する術がなく、その多くが簡易住居で暮しています。

また、パンジャブ州やシンド州などパキスタンの穀倉地帯に大きな被害をもたらしたことから食糧が不足し、食糧価格が急騰しています。そのため、栄養不良が深刻な問題となっており、5歳以下の子どもの22%が極度の栄養失調状態にあります。

赤十字はこれまで、食糧や生活物資の配付や保健医療、給水・衛生面での緊急支援を行っており、現在は中長期的な復興支援の観点から被災者コミュニティーに根差した支援を行っています。

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パキスタン赤新月社のボランティアから食糧パックを受け取る男の子。赤十字はこれまでに米、小麦、レンズ豆、バター、紅茶などが入った食糧パックを260万人分支援してきました ©IFRC

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赤十字が設置した手押しポンプで楽しそうに手洗い指導を受ける女の子たち ©IFRC

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2人の子どもと簡易住居の外で料理をするファティマさん(左)

赤十字は被災者とのコミュニケーションを重視し、衛生状態を改善するための教育や研修は地域の女性や子どもと一緒に取り組んでいます。

また、住宅や生計の再建支援は現金給付制度を用いて、被災者一人ひとりの意思や希望を反映させるよう心がけています。

住宅支援を受けたファティマさんは「新しい家を使い勝手よく工夫したいわ」と強い日差しが降り注ぐ中、泥で作った釜の傍らで語ります。

彼女は数年前にご主人を亡くし、女手一つで4人の子どもを育ててきました。「壁を泥で覆う作業が終わったら、角にベッドを置いて、反対側には衣装入れや生活道具を置こうと考えているの」と新しい家が少しずつ完成するのが待ちきれない様子です。

今まで周囲の人の助けなしには生活できなかったファティマさん。洪水前のような子どもたちと水入らずの生活が戻るまで、もう少しです。

コミュニティーとともに歩む復興

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ファティマさんの新しい家。高めの土台に適切な技術指導に基づき建てられます ©IFRC/Usman Ghani

赤十字の住宅支援事業はパンジャブ州、シンド州の1万1500世帯を対象に実施され、7万5000ルピー(約7万円)の資金を提供して、受益者自身で家を建てる方法で行われます。

赤十字は資金のほかにも、災害に強い資機材に関する助言や建設の技術指導を支援しています。

資金は3回に分けて支給され、2回目と3回目の支給は建設状況が一定のレベルを満たしているかどうかを赤十字スタッフが確認した上で行われます。

日本赤十字社はこの住宅支援事業に7,500万円の資金を拠出しています。

自立した生活を取り戻すための支援

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小規模ビジネスプランを申請し、雑貨屋を経営

住宅支援と並行して進んでいるのが生活再建支援です。インダス川沿いに暮すのは災害前から日々の生活に苦しい経済的に貧しい人びとでしたが、それでも農業でどうにか生計を維持していました。

昨年の洪水は彼らから家や資産、生活の糧すべてを奪い、食糧価格の高騰という二重の苦しみを与えています。

日々の食べ物に苦しむ被災者に食糧などの援助物資を配付することも必要ですが、被災者が本当に求めているのは収入を得るための手段です。

赤十字はこれまでに、農業を営む61万7000人に対して種子や肥料を配付してきました。その内8万人は生産高を上げるための農業技術指導も受け、次の収穫期を心待ちにしています。

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赤十字の支援でロバと台車を購入し、運送業を実施 ©IFRC/Usman Ghani

農業以外で生計を立てたい人のために、小規模ビジネスを始めるための資金提供も始まっています。

ビジネスプランを申請し、基準を満たした受益者に対して2万ルピー(約1万8,000円)が支給されます。

プランの内容は仕立屋や運送業、惣菜屋、食料品店、工芸品店などさまざまで、これまでに41案が採用されました。今後さらに5,000世帯を対象に支援を行います。

モンスーンの到来を前に

着々と復興支援が進む傍ら、懸念されるのが次のモンスーンの到来です。パキスタンでは通常、6月から9月の間の総雨量が年間降雨量の65%に達し、7月からモンスーンシーズンが始まるといわれています。

政府の気象予報によると今年は例年より少ない降雨量と予測されますが、パンジャブ州とカイバル・パクトゥンクワ州は例外とされています。すでに今年に入ってからシンド州で鉄砲水の発生やカイバル・パクトゥンクワ州の川の水位が上がっていることが報告されています。シンド州の多くの壊れた堤防は政府により修復作業が進められていますが、すべての作業が終わるまでにはさらに時間を要することから、今年も200万人から500万人が影響を受けるといわれています。

パキスタン赤新月社は昨年の教訓を生かし、同じような被害を出さないために災害対策にも力を入れてきました。人びと対して、どのように地域の危険性を判断するのか、どのように防災計画を策定するのか、そのノウハウを伝えています。また村レベルに組織された委員会と連携し、災害の早期警報が可能となるように努めています。