人材の確保と育成がカギ ~インドネシアと東ティモール、2国の事業成果を報告~

HIV/エイズ関連トレーニング講師と代田香苗駐在員(左)

HIV/エイズ関連トレーニング講師と代田香苗駐在員(左)

日本赤十字社(以下、日赤)の駐在員として2008年8月から、インドネシアのHIV/エイズ対策事業と隣国東ティモールの救急法普及支援事業に携わってきた代田香苗要員がこのほど帰国。

日赤本社で1月28日、2年半にわたる取り組みの成果と今後の課題を報告しました。

HIV/エイズ対策は長期戦 適切な人材確保も

活動を担う人材育成/ピアエデュケータートレーニング

活動を担う人材育成/ピアエデュケータートレーニング

インドネシアHIV/エイズ対策事業を行う北スマトラ州は、異性間性行為や薬物注射器の回し打ちなどにより、HIV陽性者・エイズ患者の数が1994年から2010年7月の累計で2,441人に上っています。

事業のスタートは2005年。感染拡大の防止にとどまらず、周囲からの差別に苦しむHIV陽性者の苦痛軽減などを目的に、プログラムを展開してきました。

具体的な取り組みとしては、HIV/エイズの正しい知識と予防策を普及できる人材の育成や陽性者の自助活動を促進してきました。

代田さんはインドネシア赤十字社北スマトラ州支部HIVエイズ事業課で、事業全体の管理を担当。事業実施経験の浅いスタッフがほとんどだったことから、人材のスキルアップには特に力を入れました。

「着任したばかりの2008年ごろは、知識普及の中核を担うはずのコアトレーナーやそれに続くファシリテーターが自信なさげに伝達活動をしていました。それが何年かの指導で、コンドームを使った予防啓発までできるように。受講者との関係作りがしっかりできていることを示しています」。

HIV/エイズ、性感染症、コンドームに関する情報提供

HIV/エイズ、性感染症、コンドームに関する情報提供

一方で、知識普及は進めてきたものの、依然としてコンドームの使用は少なく、住民の行動変容には結びついていないと代田要員は報告。

2010年末、日赤が本事業を終えるにあたり、最終評価を依頼した第三者機関からは、「HIV陽性者やエイズ患者数は上昇しており、事業が必ずしも効果的だったとはいえない」という厳しい指摘がなされました。

「行動変容するには長期戦。10年は見なくてはいけない」という代田要員。住民へのアプローチの仕方も重要と説きます。

「目的や効果を理解していないスタッフが多くいて、人通りのない場所でキャンペーンを行ったり、コミュニティーの特質を捉えていないステッカーを作ったりすることがありました。今後はリーダーシップを発揮できる人材を確保し、住民のニーズにあった活動を行っていかなくてはいけない」と提言しています。

信じて任せることで信頼関係築いた

東ティモールの指導員に救急法を指導する岡山赤十字病院の武久係長

東ティモールの指導員に救急法を指導する岡山赤十字病院の武久係長

インドネシアの事業と同じく、東ティモールの救急法普及支援事業も2004年にスタートしました。

日赤が持つ救急法のノウハウを東ティモール赤十字社(以下、東ティモール赤)に提供し、専門的な保健衛生部門を立ち上げ、住民に健康と安全を守るための基礎知識を広げていきます。

救急法キットを確認し、在庫記録の仕方を学ぶ県支部保健スタッフ

救急法キットを確認し、在庫記録の仕方を学ぶ県支部保健スタッフ

代田要員はインドネシアのHIV/エイズ対策事業と並行してむ、活動計画や予算の策定、モニタリングなど事業全般にかかわりました。

インドネシアのメダンに駐在しているため、訪問できるのは2カ月に1度の割合で、通常はメールや電話でのコミュニケーションのみ。

「でもその頻度が逆に、現地スタッフに“私たちに活動を委ねてくれているんだ”と受け止められ、信頼関係を築くことにつながりました」と代田要員は報告します。

2年半という期間を代田要員一人が代わることなく担当し続けたことも、信頼を増した要因の一つ。「日赤と一緒の事業は安心して取り組める」という認識が広がってきたといいます。

明日の救急法ボランティアたちに三角巾を使った救急法を教えている指導員(手前)

明日の救急法ボランティアたちに三角巾を使った救急法を教えている指導員(手前)

東ティモール赤は2002年の国家独立と同時に誕生した若い組織。現地スタッフや救急法ボランティアは高い向上心とモチベーションを持ち、どんな知識でも貪欲に吸収しようとしています。

「医療へのアクセスや教育が十分でないため、地域住民から東ティモール赤への期待が後押ししています」と代田要員は言います。

2008年7月から始まった第2次3カ年救急法普及支援事業では、「現地で求められる知識を救急法ボランティアの人たちが正しく伝えられるようにしていかなければなりません」と語っています。