フィリピン保健医療支援事業の報告 6年間の成果を視察

フィリピン赤十字社との打合せ。右から、国際部の大屋係長、斎藤課長、日赤九州国際看護大学の関教授、フィリピン赤十字社のフランシスコ部長

フィリピン赤との打合せ。右から、国際部の大屋係長、斎藤課長、日赤九州国際看護大学の関教授、フィリピン赤のフランシスコ部長

日本赤十字社(以下、日赤)がフィリピン赤十字社(以下、フィリピン赤)と協力して、2005年1月から始めた同国キリノ州への保健医療支援事業は、2010年12月末で「第2次3カ年計画」が終了しました。

2011年4月からは「第3次3カ年計画」が予定されています。

日赤は第2次3カ年計画終了を前にした2010年12月5日、事業成果を確認するため調査員を現地に派遣。国際部開発協力課斎藤之弥課長、企画課大屋貴光研修係長、日赤九州国際看護大学の関育子教授が渡航し、11日まで視察しました。

調査に訪れたのはキリノ州アグリパイ郡。これまでの6年間の支援実施期間のうち、「第2次3カ年計画」にあたる3年間は同郡が対象地です。アグリパイ郡のなかでも、感染症の発症率が高く、へき地にあることで保健医療サービスへのアクセスが困難な村落を9つ選定し、保健衛生知識をもった地元ボランティアの育成や給水施設の設置などを行ってきました。

呼びかけで3疾病が低減、医療アクセス向上も

健康教育教材のプレテストを実施。左は神戸赤十字病院の森智恵子駐在員

健康教育教材のプレテストを実施。左は神戸赤十字病院の森智恵子駐在員

地域保健ボランティアの育成には、日赤から派遣された看護師が半年ごとに2人ずつ、アグリパイ郡で累計12人が携わってきました。

育成された保健ボランティアは81人。保健ボランティアはコミュニティで公衆衛生のメッセージを発信し、住民に疾病予防を呼びかけます。

効果がはっきり現れたのは2009年。現地で深刻な4大症例(急性呼吸器感染症、皮膚疾患、高血圧、尿路感染症)のうち急性呼吸器感染症以外の3疾病の発症が低減したという報告が出されました。

「日赤の看護師が育成した現地ボランティアが、住民に衛生指導などを行えるようになるのが、事業が目指している理想の形。そのボランティアの活躍で、実際に発症率が低減したことは一つの大きな成果と考えられます」と大屋係長は言います。

深井戸式の給水システム建設現場。左は徳島赤十字病院の鈴江知子駐在員

深井戸式の給水システム建設現場。左は徳島赤十字病院の鈴江知子駐在員

環境整備の面では、保健センター(2カ所)、貯水タンク(4カ所)、井戸(17カ所)、トイレ設置のための資材(200世帯分)を整備。

建設や設置は地元の行政を通じて、住民の意向を反映したうえで行いました。住民からは「村に保健センターができたことで、医療へのアクセスがよくなりました。一定の医療器具もそろい、健康に不安を持った人が安心して相談できる場所になっています」と喜びの声。

「今後、郡や村、ボランティアが協力し合って、大切に利用していきたい」と語っています。

建設された保健センターと給水施設は地元の行政に移管され、今後の安定的な運用と保守が合意されています。

「キリノ・モデル」を各地へ

今回のキリノ州での事業は、「ボランティア教育と衛生環境の整備、ソフトとハード、両面からの支援が成功したケース」(大屋係長)。フィリピン赤では「キリノ・モデル」と銘打ち、今後、アブラ州やマウンテン州、イザベラ州など保健の取り組みが弱い地域での展開を日赤の協力を得て進めていきたいと検討しています。