パキスタン洪水から半年:被災地の今

崩れた住宅にいあっも暮らし続ける被災者

崩れた住宅に今も暮し続ける被災者(シンド州) ©IFRC/Penny Sims

国民の10人に1人に当たる2,000万人が被災し、パキスタン建国史上最悪といわれる洪水の発生から6カ月が経過しました。

170万戸の住宅が被災し、いまだに400万人が安全に暮せない状況にあります。被災地の一つ、南部のシンド州にはまだ完全に水が引いていない地域があります。

救援活動は懸命に行われていますが、国土の5分の1が被災地という規模の大きさに加え、南部ではいまだ浸水している地域があり、北部では山岳地が多く道路が土砂で埋まっているなど、アクセスの悪さが活動の妨げになっています。

パキスタン北西部では最低気温マイナス15度になることもある。冬用シェルター資材の配付は急務

パキスタン北西部では最低気温マイナス15度になることもあります。冬用シェルター資材の配付が急務 ©IFRC/Olivier Matthys

洪水発生から半年が経った今でも、被災者の状況は依然として厳しいままですが、越冬のためのシェルター資材の配付や給水・衛生、医療サービスの提供、物資配付が急ピッチで行われています。

また、パキスタンの主要産業である農業分野で生計を立て直すための支援も始まっています。

現地で継続する保健医療サービス

新生児の健康状態をチェックする井ノ口助産師(福岡赤十字病院)

新生児の健康状態をチェックする井ノ口助産師(福岡赤十字病院)

衛生的な水へのアクセスは限られ、また400カ所以上の医療施設が被災したことから、衛生環境の悪化に伴う感染症の拡大が懸念されていました。

日本赤十字社(以下、日赤)は国際赤十字の調整の下、パキスタン赤新月社(以下、パキスタン赤)が被災地で展開している基礎的な保健医療活動を支援するため、2010年8月20日から12月3日までの間に延べ12人のスタッフを派遣。

シンド州を拠点に、ダドゥの病院や避難所での巡回診療を行いました。

被災地では特に呼吸器感染症、皮膚感染症、下痢、マラリアなどの患者が多く、脱水症状の患者に対しては経口補水塩を服用させ、症状の改善に努めました。また、妊産婦と子どもの健康を守る母子保健活動にも力を入れました。

12月からはパキスタン赤が活動の主体となり、現在も必要な保健医療サービスを提供しています。

次の収穫シーズンに向けて

野菜を育てる農夫。収穫が待ち遠しい

野菜を育てる農夫。収穫が待ち遠しい ©IFRC

パキスタンの主な産業は農業です。国民のおよそ8割が農業で生計を立てていますが、そのうち半分が被災しました。

また、農地も冠水して、収穫が見込めないうえに農具を失った農民も多くいます。

赤十字は2010年12月上旬からシンド州の1万4000人に対し、トマトやほうれん草、豆、カブなど冬野菜の種子を配付。早ければ今年2月半ばには収穫できる見通しです。

すぐに収穫の見込める野菜のほかにも、パキスタンで『Kharif(ハリフ)』と呼ばれる米やトウモロコシを秋に収穫する準備も着々と進んでいます。

専門機関の助言と農民からの聞き取り調査を行いながら、ニーズが高く、かつ収穫高の見込める品種の選定をしています。今後、肥料や道具と合わせて3万9000世帯を支援していきます。

救援から復興に向けて

災害の発生から今日まで、赤十字は225万人分の食糧と、140万人分の生活用品などの救援物資を配付し、20万人に保健医療サービスを提供し、60万人に給水・衛生支援を実施してきました。

日赤もこれらの活動を支えるため、国際赤十字に対して4000万円相当の救援物資(防水シート、毛布、キッチンセット)と1000万円の資金援助を行ってきました。

国際赤十字は昨年11月、今後2年間で13万世帯を支援する110億円規模の復興計画を発表しました。緊急救援から復興に移行しつつある現在、最も必要とされているのは安全に暮せる住環境の整備です。

赤十字はすでに寒さの厳しいパキスタン北西部の被災者600世帯に冬用シェルター資材を配付しており、2012年8月までに被災地全域で計7万5000世帯に対するシェルター支援を計画しています。

現在も避難状態にある被災者が、一日も早く自らの力で再建した住宅で暮せるよう、日赤はパキスタン赤や国際赤十字と連携しつつ復興計画を支援していきます。