輸血によるHIV感染事例を受けて~日本赤十字社からのお願い

エイズの原因となるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染していた献血者の血液が輸血され、60歳代の男性がHIVに感染したことを、日本赤十字社は本年11月26日、厚生労働省の血液事業部会運営委員会で報告いたしました。

日本赤十字社では今回の事態を重く受け止め、引き続き検査体制の強化など更なる安全性の向上に取り組んでまいります。患者さんのいのちを守る「責任ある献血」をお願いいたします。

なぜ二重の検査をすり抜けてしまったのか?

日本赤十字社では、献血された血液について「血清学的検査」と「核酸増幅検査(NAT)」の2種類の検査でHIVをチェックしています。(日赤の検査体制へのリンクはこちら)血清学的検査では「抗体検査」として、ウイルス感染者の体内にできる抗体の有無を調べます。ところが、HIVの抗体が体内にできるのは個人差があるものの感染からおよそ8週間後。つまり、感染してからその期間内は血清学的検査ではHIVを検出できないのです。このような検査で抗体や病原体を検出できない空白期間のことを「ウインドウ期(ウインドウ・ピリオド)」と言います。

このウインドウ期を短縮するために導入されたのが核酸増幅検査(NAT)です。ウイルスの核酸の一部を約1億倍に増幅することで、ウイルスを直接検出する検査です。しかし、このような高精度の検査を実施してもおよそ6週間程度はウイルス量がごく微量であるため、現在の技術では検出することができません。今回の献血者の場合、血液中のウイルスがごく微量であったため、2つの検査でも感染を発見することができませんでした。

こうしたことから、献血時の問診ではより確実に輸血感染を防ぐため、HIVに感染しているリスクのある方からは、そのリスク行為後6カ月間は献血をお断りしています。(問診票へのリンクはこちら

検査強化を図っても100%の検査はありえません

核酸増幅検査(NAT)はこれまでにも2回にわたって検査精度を高めています。平成11年の導入時には500人分の献血血液をまとめて検査していましたが、一度に調べる検体数が少ないほど精度が高まることから、まとめる量を翌年には50人分に、平成16年からは20人分に変更しております。

日本赤十字社では、来年度に新しいNAT機器を全国の検査施設に導入し、何人かの血液をまとめて検査するのではなく、献血者1人分の血液ごとに調べる「個別NAT」を実施する準備を進めています。このことによりウイルスの検出率は従来の20倍以上に高くなる計算になりますが、それであっても感染初期段階の血液からHIVを100%検出することはできません。実際、献血時に保管された今回の献血者の血液を個別NATで調べ直しましたが、ウイルスが微量であったためHIVを検出できたのは3回のうち1回に過ぎませんでした。そのため、献血にご協力いただく皆さまの「責任ある献血」の意識が重要なのです。

エイズ検査(HIV検査)目的の献血は絶対に止めてください

日本赤十字社では、感染リスクのある方からの献血を防ぐため、献血前には 「お願い!」というリーフレットを確認していただき、献血時には 23項目の質問事項からなる問診票に回答していただいています。質問項目にはかなりプライバシーに踏み込んだものもありますが、「責任ある献血」のために適切な回答をお願いし、回答によってはエイズ検査目的の献血をご遠慮いただいております。さらに、問診票に正確な回答ができなかった場合のため、 献血後に匿名での電話連絡を受け付ける仕組みもあります。

このような対策をとっておりますが、問診に正しく回答していただけない場合は患者さんに重大な結果を及ぼしてしまうことがあります。

献血制度は国民の皆さまの善意で成り立っています。エイズ検査目的での献血は絶対にお止めください。

献血は、患者さんのいのちを守る「愛の贈りもの」です

日本では輸血用血液製剤の多くが悪性新生物(がん)や白血病の治療に使われています。輸血を受ける方は1日に約3000人。年間約100万人のいのちが救われている計算です。この輸血医療を支えているのが皆さまからの善意で成り立っている献血です。残念ながら血液はまだ人工的につくることができず、長期間の保存もできません。そのため、輸血に必要な血液を十分に確保しておくためには、絶えず誰かの献血が必要となります。

「エイズ検査目的での献血」は、善意で成り立つ献血の信頼性を脅かすもので、あってはならない行為です。輸血を受ける患者さんをはじめ、そのご家族や多くの方々に深い悲しみと深刻な状況をもたらす可能性があるのです。

献血は、患者さんのいのちを守るボランティアであるとともに、患者さんの健康に直結することを皆さまにご理解いただき、引き続き「責任ある献血」にご協力くださいますようお願い申しあげます。

ご参考 ※外部リンク

HIV 検査・相談マップ

エイズ予防情報ネット

平成24年版「血液事業報告」厚生労働省医薬食品局血液対策課作成