平成30年 第92回代議員会 6月22日

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ご多用のところ代議員会にご出席をいただき、誠にありがとうございます。本日は、平成29年度の決算などについてご審議いただくこととしておりますが、その前に一言ご挨拶を申し上げます。

名誉総裁皇后陛下におかれては、平成という30年の長きにわたり、日本赤十字社の社業に対して、いつも励ましのお言葉、ご支援、お導きを賜りました。皇后陛下の赤十字行事への行啓は、先月の大会がおそらく最後となります。皇后陛下は、ご退場の際、まっすぐ舞台の前方に歩み寄られ、会場の参列者に向かって深く頭を下げられました。会場は総立ちとなり、拍手喝采の中、思わぬことに、陛下は、皇太子妃殿下のお手を携えられ、微笑まれながら、妃殿下をご紹介なさるようなお振る舞いを示され、会場内には感動が広がりました。

この記念すべき赤十字大会において、私は「平成」という時代を振り返ってみました。

平成は、1989年1月8日に幕が開き、その秋から冬にかけてベルリンの壁が崩壊し、第二次大戦後の冷戦が前触れなしに終焉を迎えましたが、それまでは、東西間を遮る「鉄のカーテン」や激しいイデオロギーの対立があった時代です。

その後、人と情報が国境を越えて自由に行き来するようになると、人々は大きな可能性を夢に描き、また国際社会は団結して、世界の平和と繁栄、環境保護と開発の調和、といった人類に共通する課題に向き合い、認識を共有するようになります。今は、一国だけでは解決できないような問題に対して、関係する国々が、互いに協力して取り組む道が真剣に模索されるようになりました。

その間の日本は、低迷する経済や、深刻な少子高齢化を迎えるなど、多くの困難や課題はあったものの、総じて安定したものだったといえると思います。日本赤十字社では、医療、血液、福祉、看護職の養成など各事業の充実や改革に、一定の成果をあげることができたと考えております。その間に、阪神淡路大震災、東日本大震災をはじめ、数々の災害がありましたが、全国の日赤支部施設のスタッフ、そしてボランティアも結束して、総力を発揮することが出来ました。

世界の赤十字・赤新月社は、この30年の間に148社から191社に飛躍的に増え、東日本大震災の際には、90カ国もの赤十字・赤新月社から約600億円の支援が日赤に寄せられました。その際、私は日本赤十字社の社長であると同時に、国際赤十字・赤新月社連盟の会長として、各社の連帯の精神を大変誇らしく思ったものです。その国際赤十字の枠組みの中で、日本赤十字社は30年以上にわたり、各種委員会の委員、理事、副会長職、そして会長職を出し、ほとんど途切れることなく、ICRCを含めた国際赤十字全般のガバナンスに参画してまいりました。

しかし今回、日本赤十字社は、理事社に立候補しませんでした。これは、次の理事社選挙が行われる2021年までの4年間は、日赤はいわば「閣外」の立場で、救援現場などでの活動を通じて連盟本部や各社と関わっていくことを意味します。

来年2019年は、国際赤十字・赤新月社連盟創設100周年にあたります。赤十字が誕生してから50年くらいの間は、赤十字国際委員会を中心に、戦時活動をもっぱらとしていましたが、ちょうど今から100年前に第一次世界大戦が終結すると、各国赤十字社は新たに災害救援、医療、福祉等の幅広い平時の活動を展開するようになりました。その頃、各社の平時活動を広めるため、連盟を創設した5社のひとつが、日本赤十字社です。時代を超えて、国内外で培った豊富な経験と実績を積み重ね、今日に至っております。

そして世界は今、気候変動に伴う災害、紛争や政治の混乱、経済の格差、国際的な人口移動など、激しい変化のただ中にあります。またインターネットやソーシャルネット時代の到来により、私たちは漫然とした不確実さを感じています。しかし、このような状況の中であればこそ、赤十字には果たすべき役割があり、さらなる飛躍の機会があると私は考えます。これまでやってきたことに対して、「これで良いのか」と自問自答することが重要であり、この代議員会こそが、国民の皆様や赤十字の支援者の皆様から、赤十字への期待と評価が示される場であります。今後共、皆様からのご意見やご指導を、何卒お願い申し上げます。

最後に、春の叙勲に際して、旭日大綬章の栄に浴すことができました。私は赤十字の創始者アンリー・デュナンの誕生日である5月8日に生まれ、これを運命と定めて日本赤十字社に入社し、赤十字一筋に、半世紀以上を捧げてまいりました。その間、国内外に優れた先輩や後輩、赤十字の良き仲間たちに恵まれ、多くの困難を乗り越えることが出来ました。このたびの叙勲は、赤十字の活動に日夜携わるすべての皆さんを代表していただいたものと考え、今後とも皆様と共に赤十字の使命を果たすべく、歩んでいくことをお誓いし、ご挨拶とさせていただきます。
                              
                               日本赤十字社 社長 近衞忠煇