平成28年5月 世界人道サミット~グランドバーゲンの議論

 523日、24日の2日間トルコのイスタンブールで国連世界人道サミットが開催され、近衞社長は国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)の会長として連盟加盟社72社と共に出席、本会議、円卓会議にて発言しました。

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 今回のサミットでは、紛争予防・解決のための政治的なリーダーシップなど5つの主要議題が話し合われましたが、今まで余り耳にすることがなかった「グランドバーゲン(「重要な取引」、「包括的譲歩」等と訳されている)」の議論が注目を浴びました。人道ニーズに的確に対処するため、資金を出す支援国と援助団体双方に、より効率的な支援を促すものです。
(写真右 トルコ赤新月社キニク社長)

 国連によると、人道援助に必要な資金は過去15年間で12倍に増大、現在必要とされる金額400億ドルに対し150億ドルが不足しているとのこと。開く一方の資金のギャップを縮小するには、個人や民間、イスラム圏の支援を開拓し、支援国に対しては使途条件のない資金の拡大を提案。資金の拠出・支出の公表に当たっては共通の単一システムを構築することにより透明性を高め、また支援を必要とする人や地域により多くの資源が流れるよう、彼らを中心に据える政策への変換を提唱しています。

 近衞社長はこれまでも機会あるごとに報告書の共通化に言及しており「日赤としても日本政府に共同歩調の働きかけをしたい。今できることはすぐに取り組みたい」と話しています。

 連盟、赤十字国際委員会はこの「重要取引」を歓迎し、以下の意見をまとめました。

1. コストの効率化と重複投資を避けることについては、赤十字・赤新月運動内の協調に止まらず、国境なき医師団や世界食糧機構等他機関へも対象を広げており、これからもこの投資の効率化を進めて行くこと。

2. 支援を受ける側に光を当てた支援については、例えば、ブルンジでは連盟や姉妹社の協力の下、国内の98%のコミュニティに30万人余のブルンジ赤十字社のボランティア育成ができた例があり、今後とも各社の組織強化に力を入れること。

3, 現金支給プログラムについては、すでにソマリアやナイジェリア、フィリピンにて制約条件のない現金プログラムを実施し成功を収めており、今後も現金プログラムを推進していくことの確認。

 しかし、国連が提唱する「ひとつのシステム」に同化することには懐疑的です。特に国連との共同アセスメントは赤十字・赤新月としての信頼や自由度が脅かされると否定的です。赤十字・赤新月は国内外で特別な地位にあり、また基本原則に則った草の根の活動を行っていることから、現存するネットワークを生かすことが最適と考えているからです。また資金の公表を単一のシステムで行うことにも実現に時間がかかることやその影響が未知数であると態度を留保しています。

 近衞社長はグランドバーゲンの議論を振り返り「連盟の課題は、イスラム圏や新興諸国の社からの資金を取り込み、彼らと既存の支援社がOne Voice(ひとつの声)として行動できるようになることだ」と話しています。

 連盟の資金調達の現状に目を向けると、2015年に発表した緊急アピールの合計金額は169,451,688スイスフラン(約190億円)。その平均充足率はアフリカ地域36%、アメリカ地域76%、アジア地域67%、欧州・中央アジア地域94%と地域差があり、特にセネガル、ガンビア、モーリタニアの食料危機救援アピールの充足率は4%~7%と際立って低い水準です。日赤の方針は、上限1,000万円の範囲内ですべてのアピールに対し3.3%を拠出するというもので、支援の薄い姉妹社から感謝されています。

近衞社長のスピーチビデオ

http://webtv.un.org/search/tadateru-konoe-ifrc-world-humanitarian-summit-istanbul-2016-member-states-and-stakeholders-announcements/4907497842001?term=Konoe