平成27年10月 赤十字基本7原則制定50周年、再びウィーンの地で

世界の赤十字・赤新月社が10月7、8日、再びウィーンに集いました。92社、84カ国の政府代表が参加した1965年の赤十字国際会議とは対照的に、今回の式典は国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)理事会に合わせて開かれ、オーストリア赤十字社による手作り感のあるものでした。グループ討論の場では、「もし8つ目の赤十字基本7原則(以下、赤十字7原則。)があるならば」という問い掛けに、参加者は「透明性」「創造性」などのそれぞれが思う8番目を熱く語り、小さな会場が赤十字愛で包まれました。

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1965年10月8日 赤十字7原則を採択する代表者

式典での近衞忠煇連盟会長(日本赤十字社社長)のスピーチは、自分の赤十字人生と重ね合わせたものでした。日本赤十字社に入社した翌年に赤十字7原則が採択され、赤十字活動への大きなモチベーションになったこと、冷戦時代には赤十字7原則の解釈や適用が陣営によって少なからず相違があったこと、「中立の座標軸」の取り方は今日ますます難しくなっていることなど、この50年を振り返りました。そして、過去に、イデオロギーや宗教、人権意識、経済の発展などのいずれも平和をもたらさなかった中で、「人道だけはほとんど唯一普遍的な価値として生き残っている」と強調しました。

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10月8日 マウラーICRC総裁(写真左)と談笑する近衞会長

近衞会長に続いて壇上に立ったペーター・マウラー赤十字国際委員会(以下、ICRC)総裁は、「私はTadateru(忠煇)ほど赤十字人生は長くないが」と前置きしながら、「『公平』『中立』『独立』は『人道』を実現するための手段で、『奉仕』『単一(一国一社)』『世界性』は赤十字の使命を遂行するための制度である」と述べ、「基本原則は守るか破るかという問題ではなく、われわれの行動を導くものである」と、普遍的な価値が「人道」であることについて近衞会長に同調しました。同時に、「特別な状況下でわれわれが使命を達することができないということがないよう、解釈は絶えず見直さなければならない」と発言しました。

国連の潘基文(パンギムン)事務総長は、今年3月に近衞会長に面会した際、「赤十字から生まれた人道、公平、中立、独立の原則は、国連をはじめとする他の人道援助機関への活動の基礎を提供した」と述べました。赤十字が影響力を持ち、「人道」や「中立」をうたう団体が増えていることは喜ばしいことですが、赤十字は彼らとどう違うのでしょうか。

その問いに対し、「われわれが何者かは赤十字7原則が教えてくれる。それをより忠実に守ることが他の団体との差別化を図る道である」と近衞会長は答えます。赤十字7原則は1965年に突如湧いてきたものではなく、その100年も前から「人道」を実践し、議論を重ねた結果であると強調。「これからも常に新しい困難があるだろうが、このウィーンの地で50年前同様、赤十字7原則を守るという誓いを新たにしよう」という言葉でスピーチを終えました。

※正式名称は「国際赤十字・赤新月運動の基本原則」。人道・公平・中立・独立・奉仕・単一・世界性。