平成27年6月 鳥取赤十字病院百周年記念式典挨拶

鳥取赤十字病院がこのたび創立百周年を迎えられ、本日このように盛大な記念式典を挙行されますことは誠に感慨深く、心からお祝いを申し上げます。

ご臨席の皆さまには、鳥取赤十字病院の運営を含め、日頃から赤十字事業に対し格別のご理解とご協力をいただいており、厚く御礼を申し上げます。

また、日夜赤十字の使命を果たすべく、医療の第一線で尽力されている職員の皆さんに、この機会に改めて敬意を表したいと思います。

日本赤十字社の前身である博愛社は、1877年に発生した西南戦争の負傷者を、「敵味方の区別なく」救護することを目的に設立されました。

そして1889年には、救護の担い手となる看護婦養成を開始しましたが、鳥取支部は全国に先駆けてその4年後に、本格的な看護婦養成に取り掛かりました。鳥取赤十字病院は、ちょうど100年前の1915年、県立鳥取病院を譲り受けて、日本赤十字社の14番目の病院として誕生し、その際看護専門学校も併設しました。

時は第一次大戦の最中であり、日本赤十字社は負傷した各国の兵士を救護すべく、国内外で活躍しました。イギリス、フランス、ロシアの三国には救護班が相次いで派遣されましたが、ロシアの現在のサンクトペテルブルクに派遣された19人の救護班の中に、鳥取支部の生沢たつのさんがおられました。その班の活動は476日に及び、治療人数は4万3531人という記録が残っています。彼女たちは後にロシア帝国から勲章を受章、また日本政府から賜金を下賜されております。大戦の3年後、ロシア革命の混乱時に東部シベリアに派遣された救護班にも、鳥取支部から3人が参加しています。

1937年の日中戦争から第二次世界大戦にかけて、日本赤十字社は戦時救護に深くかかわり、鳥取支部からも422人が国内外での救護活動に派遣されました。原爆投下直後の広島にも救護班が向かいました。こうした一連の活動の中から、20名の殉職者が出たことを決して忘れることはできません。満州で終戦を迎えた救護員の中には、帰国できず残留を余儀なくされた方が48人おられました。そのうち、鳥取支部から派遣された2名は、終戦8年後の1958年に、ようやく帰還することができました。

日中戦争以降、あちこちの戦地で活躍され、後に鳥取赤十字病院看護部長となられた山崎秀子さんは、1961年、そのご功績によって、第18回フローレンス・ナイチンゲール記章を受章されました。困難な時期に苦楽を分かち合った多くの関係者にとっても、大きな励みとなったことは言うまでもありません。

日本赤十字社は、早い時期から各地の災害救護でも活躍してまいりました。1888年に磐梯山が噴火した際、日本赤十字社はその2年前に設立された最初の病院から、初めて救護班を被災地に派遣しました。鳥取支部では1918年の鳥取水害を皮切りに、但馬震災、鳥取大震災、鳥取大火、豪雪といった県下での大きな災害はもとより、関東大震災、伊勢湾台風、阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災など、県外の大災害の際にも救護班を派遣しております。東日本大震災では、鳥取赤十字病院からのべ62人の医師・看護師などを派遣し、最大の被災地の一つであった宮城県石巻市を中心に、被災者の医療や心のケアにあたったことは記憶に新しいところであります。

当院は、海外にも1980年にタイに流入したカンボジア難民救済のために医師を3ヶ月派遣したほか、1996年には、カンボジアの首都プノンペンの病院の再生を支援するために助産師を派遣して、日本赤十字社の国際救援活動の一翼を担いました。この百年の間には、このように実に多くの戦争と災害、戦時の苦しく困難な期間、戦後の長く経営の厳しい時代がありました。それらを乗り越えて、当院を今日の姿にまで発展させてこられた先人の事績を振り返る時、そのご労苦を偲ばずにはいられません。

当院は当初、内科、外科を標榜するわずか53床で開設しましたが、その後、地域の期待と要望に応え、診療科の増設、施設整備を繰り返し行ってまいりました。そして現在は、急性期医療を中心として、18診療科、438病床を有し、一年間の患者延数は入院外来合わせて約26万人となっております。特に、消化器疾患における内視鏡件数は県内最多で、手術件数もトップクラスである他、救急医療、がん治療に力を注いでおります。また、機能面では、災害拠点病院、地域医療支援病院、臨床研修病院などの指定を受けており、特に災害救護に力を入れてきたことが、地域住民の皆さまの信頼を高めてきたものと認識しております。

当院は、2004年からすでに三度にわたり、財団法人 日本病院機能評価機構より、医療に求められる高い基準を満たしている病院として認定されておりますが、より機能的な病院を目指して、2018年の竣工に向けて、新病棟の新築を進めております。

当院の創立百周年の節目に、院長はじめ職員各位が、赤十字病院としての誇りを新たにし、「いかなる状況下でも、人間の生命と健康と尊厳を守る」とする赤十字の原点に立ち返り、一層地域の皆さまの期待と信頼に応えられるよう精進されることを期待しております。

結びに、これまで当院をさまざまな形でご支援くださいました地域の皆様、鳥取県および県下市町村、鳥取大学、地元医師会をはじめ関係各位に対し、改めて深く感謝の意を表するとともに、今後とも一層のお力添えを賜りますようお願い申し上げ、私の挨拶といたします。

日本赤十字社 社長 近衞忠煇